【提言】劣化列島日本/希望と勇気③ソニー復活から学ぶ『輝かしい未来』〜日本の製造業再起動に向けて(85)

劣化列島日本をテーマにしたシリーズの第3回目は、「ソニーの復活」を取り上げる。まず、数十年前のソニー全盛時代を振り返りたい。

20世紀後半、ソニーの世界的活躍は我々日本人にとっての大きな誇りであった。世界中のあらゆる空港免税店では、ソニーの製品が一等地に並び、テレビやウォークマンなどソニー製エレクトロニクス製品に、世界中から羨望の目があてられていた。 当時、筆者も米国出張の際に最新のウォークマンを持参し、米国の友人に自慢したことが懐かしい。友人からは、『ウォークマンとは変な英語だが、製品は凄いな!』と羨ましがられたことを覚えている。

確かにウォークマンなる英語は存在せず、『英語圏での商品名には馴染(なじ)まない』との声も現地からは出ていたらしいが、当時のソニー幹部は『世界中でウォークマンに名称統一』の決定を行った。結果としてウォークマンなる言葉は、辞典に載る正式英語となった。 エレクトロニクス大国として世界を席巻し、『Japan as №1』とまで言われた日本も、ソニーの凋落とともに「失われた30年」に突入し、今日に至っている。 失われた30年は、1992年のバブル崩壊から始まっているが、バブル崩壊から10年が過ぎた2003年(約20年前)に、ソニーショックと呼ばれた大事件が勃発する。

米国や韓国・中国との戦いに敗れたソニーが突然、1000億円に及ぶ業績の下方修正を発表し、株式市場は大パニックに陥った。株価はストップ安の大暴落となり、日本の失われた30年を決定づける象徴的な事件であった。以降、ソニー神話は崩壊し、メディア各社はソニー消滅論をこぞって報道。 メディア各社のソニー叩きは壮絶を極め、あらゆるメディアが自虐的にソニーの劣化を取り上げ、ソニーの復活を信じるメディアは皆無であった。

ソニーが最悪の業績であった12年に平井一夫氏が社長に就任した。平井氏にはプレステの業績回復などの実績があるものの、メディア各社の反応は驚くほど否定的であった。当時の記事を読むと、平井氏はソニーの本流であるエレクトロニクスから外れた傍流(ぼうりゅう)であり、傍流ではソニーの復活は不可能と断じ、ソニー消滅すら予測する始末であった。 筆者も平井社長就任には大いなる関心を持ち、ソニーの動向には注意を払っていた。

プレステの生みの親で、平井氏の前任の久夛良木(くたらぎ)健SCE (ソニー・コンピュータエンタテインメント) 前社長が、私の大学の先輩であったことも平井氏に興味を持つ一因であった。 平井氏の社長就任はソニーの歴史そして日本の歴史に刻まれた「大復活」の源である。以降ソニーは業績を回復し、21年のソニー経営実績は、営業利益1兆円超の史上最高の利益を上げている。ソニー復活の事実であり、未踏の世界に踏み出す大発展の兆候である。

ソニー復活物語は、劣化列島日本で花開いた「希望と勇気」と言っても過言ではない。本稿では、不死身のように復活を成し遂げたソニーを取り上げ、我々日本人の誇りを取り戻す「希望と勇気」を検証したい。ソニー復活の要因は、かつてソニー消滅すら予測したメディアが、(手の平を返し)賛美の報道をしているので、そのへんは割愛する。

私の個人的な視点で恐縮だが、私の趣味の一つはカメラである。何十年に渡り、ライカ、キヤノンなど高価なカメラとレンズに膨大な費用を投入してきた。私の撮影技術は全くの素人レベルであるが、カメラ購入の「沼」に嵌(は)まった典型である。現在はライカ、キヤノン、ニコンを卒業し、ソニー製のカメラ・レンズの沼に嵌(は)まっている。カメラ業界では無名だったソニーの挑戦は素晴らしい。ソニーから新製品が出る度に、高額な費用を投入し購入を続けているが、その最大の理由はソニーの秘められた技術力による(他社を凌ぐ)新機能への感動であり、ソニーの (カメラ業界への) 意欲的な挑戦への感動である。

私が偉大な経営者である平井氏を評価することなどできないが、誤解を恐れず私見を述べさせて頂くと、ソニー復活は日本のものづくり遺伝子に回帰した革命であり、お客様の「感動」を旗印に、グローバル主義から脱皮した日本の誇りである。もっと強い言葉を使えば、「欧米からの思想的奴隷解放」でもある。足元でなく未来を見る。傍流であるからできた平井氏の革命。学ぶことが多く、真に勇気づけられる「事実の物語」である。ソニーの復活こそ日本復活のお手本であり、日本の「希望と勇気」がここにある。

劣化列島日本が侵された病は、「グローバル」という欧米発のウィルスであることは明白であり、この病の特効薬は「日本遺伝子への回帰」であることを「ソニーの復活」が物語っている。

◆高木俊郎(たかぎ・としお)

株式会社アルファTKG社長。1953年長野市生まれ。2014年3月までアマダ専務取締役。

電気通信大学時代からアジアを中心に海外を訪問して見聞を広め、77年にアマダ入社後も海外販売本部長や欧米の海外子会社の社長を務めながら、グローバルな観点から日本および世界の製造業を見てきた。

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