【制御盤DX】制御盤・盤内機器の新しい保護のカタチ 電子式サーキットブレーカーの有効活用で装置稼働率を上げる

自動化の歴史は、人からメカ、そしてエレへという制御の電化の歴史に他なりません。電気制御はメカ制御に比べてより速く精密にコントロールでき、作業品質や安全性の向上を可能にします。すでに電気制御は多くの領域で一般化していますが、それでもすべて電気制御になっているかといえば、そんなことはありません。

例えば、過負荷や短絡から制御盤を保護するサーキットブレーカーはそのひとつ。昔からバイメタルやソレノイド等を使った機械式が主流で、電気制御式はなかなか浸透してきませんでした。しかし近年、生産性向上やスマート化に向けて制御盤や盤内の各機器の保護の重要性が高まるにつれ、サーキットブレーカーも電気制御の電子式サーキットブレーカーに注目が集まっています。

後編:特別インタビュー「世界ではどう電子式サーキットブレーカーを活用しているのか?」フエニックス ・コンタクト ドイツ本社 製品責任者マリオ氏

過電流から制御盤と機器を守るサーキットブレーカー

制御盤で使用されるサーキットブレーカー(遮断器)は、保護対象と対応する電流量によって大きく2つに大別されます。いわゆる電源の幹線から分岐した回路を保護し、制御盤全体を守るメインブレーカーと、その先にあるDC24Vの各機器を保護するためのブレーカーです。

メインブレーカーは数万アンペア(数十kA)まで、機器保護用のブレーカーは数百から数千アンペア(数kA)までの電流を遮断します。メインブレーカーと機器保護用ブレーカーのいずれも機械式のブレーカーが主に使われていますが、後者の機器保護用ブレーカーでは電子式サーキットブレーカーが急速に勢いを増している状況です。

メインブレーカーで広く使われる機械式サーキットブレーカー

現在、サーキットブレーカーとして多く使われているのは機械式です。機械式の種類には、熱によって変形するバイメタルを利用した熱式、ソレノイドを使った磁気式、その両方を組み合わせた熱磁気式等があります。

制御盤の電源ラインを阻害する要因は
①短絡(Short circuit)
②過負荷(Overload)
③電源故障(Failure)
④停電・瞬停(Interruption)
⑤サージ(Surge)
の5つがあり、その頭文字をとって「SOFIS」と言われます。このうちサーキットブレーカーが保護するのは、①短絡(S)と②過負荷(O)となり、その特性上、熱式は過負荷に、磁気式は短絡保護に適しているとされます。

また機械式の場合、設定値以上の電流が流れると、材料が変化して物理的に接点がオフになるため確実に遮断できるというメリットがありますが、一方で、緻密で細かな制御までは難しいという弱点もあります。またバイメタル、ソレノイドを使うため、小型化は難しく、機器保護用ではサイズも大きくなりがちです。

熱磁気式(左)と電子式(右)の構造の違い(フエニックス・コンタクト「CBシリーズ」)

盤内機器の保護用に需要が高まる電子式サーキットブレーカー

最近、需要が増えているのが電子式サーキットブレーカーです。

電子式サーキットブレーカーは、電流センサで電流量を検知し、MOSFETで電流をオンオフする構造のため、設定値を細かく設定し、機器保護に適した小さな負荷にも対応できます。機械式のなかでも中速型の熱磁式の場合、定格の数倍から10数倍の電流が流れた時に遮断するのに対し、電子式の場合、定格の2倍以内で遮断します。

例えば、フエニックス ・コンタクトのサーキットブレーカーの場合、熱磁式サーキットブレーカー「CB TM1 M1」が定格の15倍以上の電流量が流れた時、10ms以内に確実に遮断するとなっているのに対し、電子式サーキットブレーカー「CBM」は、定格の1.3倍以上の時、20ms以内に確実に遮断できます。

さらに、電子式サーキットブレーカーは短絡と突入を区別する機能を持ち、突入の場合は遮断しないため、敏感で高精度に確実な保護をしながら、装置を止め過ぎない”ちょうど良い塩梅”で機器保護が可能となっています。熱磁気式のブレーカにも高速型、瞬時型のタイプがあり同等の小さな電流での遮断は可能ですが、突入電流がある負荷では起動時にブレーカが遮断してしまう不要動作が生じる場合があります。同社では「電子式は熱磁気式より圧倒的に小さな過電流で短絡保護ができる」としています。

また、電子式サーキットブレーカーは電子機器なので小型・薄型化に優れ、制御盤内へ設置してもスペースを取らないというメリットがあります。このため制御盤内の24V機器の保護用途に最適なものとなっています。

フエニックス ・コンタクトの新製品「CAPAROC」は、モジュールシステムになっており、シングル/マルチチャンネル、薄型、電流制限あり/なしなど各モジュールを組み合わせて構成できるようになっており、より利便性を高めたものになっています。

制御盤の状態・稼働状況の見える化にも応用可能

電子式サーキットブレーカーのもう一つのメリットが、遠隔監視やメンテナンスに役立つIoT機能です。

サーキットブレーカーはその特性上、制御盤や機器に向けて流れる電流と負荷量を常にモニタリングしており、制御盤の電流センサの役割を担っているとも言えます。そのデータをネットワークに乗せれば制御盤の状態監視と見える化ができ、さらに遠隔からオンオフの操作や設定変更等も可能となります。

フエニックス ・コンタクトによると、実際にある自動車メーカーでは、車体の溶接工程に電子式サーキットブレーカーを機器の保護と見える化で活用しているとのこと。

自動車の溶接工程にはたくさんの溶接ロボットと制御盤があり、溶接工程では短絡が発生してロボットが止まることがあり得ます。しかし短絡が発生して止まってもどのロボット・制御盤が原因になっているのかが分かりにくく、毎回それを探すのに時間がかかり、ライン停止時間の増加の原因になっていました。それに対し制御盤に電子式サーキットブレーカーを取り付けたところ、短絡から保護して止まりにくくなった上、止まった時は電子式サーキットブレーカーのLEDが光って警告を発し、モニタでも停止が分かるようになりました。結果、原因究明がすぐできるようになり、停止時間を大幅に削減することができたそうです。

時代の流れは、制御盤全体の保護から盤内機器の個別保護へ

これまでのサーキットブレーカーによる保護は、制御盤を守るメインブレーカーとしての利用が主でした。直流に変換した制御電源の出力以降にサーキットプロテクタが使用される場合も確実な保護は期待出来ず、開閉を主な目的としたものでした。しかし現在、盤内機器の高性能化に加え、止まらない装置や止まらない生産ラインへの関心度の高まりに合わせ、メインブレーカーひとつで守るのではなく、盤内機器にもサーキットブレーカーを取り付けることで系統ごとに、また二重、三重で装置を保護し、かつ精密な制御を行うことで稼働率を高めようという動きが盛んになってきています。

加えてIoTやデジタルデータを活用し、制御盤の点検・保守やメンテナンス工数を削減し、人手不足対策につなげようとすることにも関心が高まっています。電子式サーキットブレーカーはそうしたニーズに合致した製品として注目を集め、需要が増加しています。

後編:特別インタビュー「世界ではどう電子式サーキットブレーカーを活用しているのか?」フエニックス ・コンタクト ドイツ本社 製品責任者マリオ氏

フエニックス・コンタクト 安心24ソリューション特設サイト https://anshin24.phoenix-contact.jp/

フエニックス・コンタクト 電子式ブレーカの解説サイト: http://www.phoenixcontact.co.jp/ecb

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