儲かるメーカー改善の急所101項【急所42】仕事の教え方・教わり方 作業を教えるな、仕事を教えよ。

50年前のことです。私は日本有数の豪華ホテルの厨房で皿洗いのアルバイトをしていました。皿洗いといっても、大きな台車で運ばれてくる大量の使用済みのお皿を大きな自動皿洗い機の投入コンベア上に並べて置くことと、洗浄されて出てきたお皿を取って別の台車に並べて置くだけの仕事です。

初日にその職場の先輩(と思った)から、仕事のやり方を教わったのですが、実に簡単な内容でした。「乱暴に置いて皿を割らないように気を付けること」「もし何かあったら、そこにいる社員の人に聞くこと」くらいであったのです。確かに単純作業に見えました。ですからそんなに教えることもなかったのでしょう。私もそのくらいのことは教わらなくてもできるくらいに思って質問もしませんでした。

ところが、実際に仕事が始まると、とんでもなく大変でした。台車が来るスピードがとてつもなく速いのです。のんびりコンベアにお皿を置いていたらあっという間に台車が溜まってしまう!そして後工程の人から「はやくしろ!」と怒鳴られます。しかし慌てて急いで置くと皿をぶつけてしまい大きな音が出てまたにらまれる。私は初日で疲れ果ててしまいました。しかし当時、私にはどうしてもチャレンジしたい目標があり、そのための資金作りだったのでやめるわけにはいかないので続けましたが、とてもつらい毎日でした。

ひと月のアルバイト契約があと1週間で終わろうというとき、その職場の偉い人(と思った)が、みんなを集めてスピーチをしました。当時は日中国交回復の時で、これからの一週間はとても忙しくなるけれど、日本にとって大切なことをやるのだからみんな頑張ってほしいとのことでした。お話が終わり仕事に戻ったのですが、その方は相変わらずモタモタ動いている私のところに来て「アルバイトさん、手伝ってくれてありがとうね」と言った後に、「この仕事のコツだけどね…」と言って私のモタモタを一気に解消する方法を教えてくれました。加えて、もし少しでも汚れが残ったままのお皿がお客さまのところに行くとどうなるか、そしてきれいなお皿をいつも供給できるとどうなるか、などを短い時間でしたがしっかり教えてくださり、最後に「頑張ってくださいね!」と私の肩をポーンと叩いて去って行きました。

それからの1週間は大パーティが続いたのでしょう、仕事はとてつもなく忙しかったのですが、私はやる気が出て、いろいろ工夫をするようになり見違えるように仕事ができるようになりました。最初にあの偉い人から仕事を教わっていたらこのアルバイトはもっとずっと楽しかったのに残念だったな…、と思いました。当然ですよね。

最初の雑な教え方が作業を教えること、次の丁寧な教え方が仕事を教えることだと思いますが、いかがでしょうか。(この項は次回に続きます)

■著者プロフィール

柿内幸夫
1951年東京生まれ。(株)柿内幸夫技術士事務所 所長としてモノづくりの改善を通じて、世界中で実践している。日本経団連の研修講師も務める。
経済産業省先進技術マイスター(平成29年度)、柿内幸夫技術士事務所 所長 改善コンサルタント、工学博士 技術士(経営工学)、多摩大学ビジネススクール客員教授、慶應義塾大学大学院ビジネススクール(KBS)特別招聘教授(2011~2016)、静岡大学客員教授
著書「カイゼン4.0 – スタンフォード発 企業にイノベーションを起こす」、「儲かるメーカー 改善の急所<101項>」、「ちょこっと改善が企業を変える:大きな変革を実現する42のヒント」など
一般社団法人日本カイゼンプロジェクト
 改善の実行を通じて日本をさらに良くすることを目指し、2019年6月に設立。企業間ビジネスのマッチングから問題・課題へのソリューションの提供、新たな技術や素材への情報提供、それらの基礎となる企業間のワイワイガヤガヤなど勉強会、セミナー・ワークショップ、工場見学会、公開カイゼン指導会などを行っている。
■詳細・入会はこちら https://www.kaizenproject.jp/
■儲かるメーカー改善の急所101項

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