テクノドリブンで事業モデルをDXせよ【1】テクノロジービジョンを構築せよ

はじめに

コロナショックに伴いDX(デジタルトランスフォーメーション)が急加速し、これまでデジタルへの取り組みに無頓着であった企業も、デジタルなくしては業務を進められない状況になった。2年前はデジタルへの取り組みが他社との差別化や生産性の改善程度のレベルであったが、今は違う。デジタルを取り入れていないことが、企業競争における敗因と言っても過言ではない状況だ。

本連載では、日本の総合経営コンサルティングのパイオニアであるタナベ経営が、様々なデジタルテクノロジーをどのように活用し、ビジネスモデルを変革していくのか、中堅・中小企業の取り組み事例も含めて解説、そして対策の方向性などを提言させていただく。(著:タナベ経営 尖端技術研究会リーダー 森重 裕彰)

「Techno Driven(テクノドリブン)」で全てをデザインし直す

「デジタルや先端技術はあくまでも手段だ。目的になってはいけない」という言葉をよく聞く。ごもっともだ。どのような技術にしても、なんらかの課題を解決するための手段であることには間違いない。ただし、だからといって課題テーマが挙がってから手段としてのテクノロジーを考えるようではいけない。取り組みの着手スピードが遅すぎると、テクノロジーによる課題解決の広がりが狭くなる。

全企業に(デジタル)テクノロジーをもって自社のビジネスモデルをデザインし直すことに取り組んでいただきたい。それが、今の時代を生きる経営者・リーダーの“責務”ともいえるだろう。

貴社の業界にはまだまだ“不”があるのではないだろうか? 貴社固有の課題もまだまだあるだろう。先端のテクノロジーはその“業界の不”や“自社固有の課題”を解決できる可能性を多く含んでいる。「過去検討したことがある」と二の足を踏んではならない。今、最新テクノロジーの市場をもって、ゼロベースで考えてみるべきだ。

筆者は、「テクノドリブン」という課題解決の考え方を提唱している。テクノロジーを起点として業界や自社の抱える課題をどのように解決できるかを検討する技術解決思考を、今の経営者やリーダー、ビジネスパーソンは持つべきと考えている。(図1)

「テクノドリブン」で複数の課題を一気に解決せよ

「テクノドリブン」での課題解決フローにおいては、1つの技術から、複数の課題解決を実現することが可能となる。例を挙げるとユニクロを運営するファーストリテイリング社である。利用されたことがある方はわかると思うが、ここ2~3年でユニクロはセルフレジを導入し、「商品付加価値の上がらないレジ業務」の無人化に取り組んでいる。その裏側にあるのはRF-IDというチップ技術だ。

このRF-IDを用いて、他にも2つの大きな「業界の課題」を解決している。店舗の商品棚卸作業の劇的な短縮と人手を最小限にした自動倉庫だ。ユニクロは、RF-IDという技術から「セルフレジ」、「棚卸作業時間短縮」、「自動倉庫」という3つの業界の課題を解決に導いた。その結果、労務費の大幅な圧縮を実現しており、人口減少時代における強力な競争力になっていることは説明不要である。(図2)

このように、1つの技術が複数の課題解決を実現することは、「Techno Driven」での課題解決フローの特徴でもあり、1球から10ピンを倒すボーリング的な課題解決ができることを示している。課題からのアプローチも重要であるが、テクノロジーからのアプローチがイノベーションを起こす起爆剤であることが実証されている。

テクノロジービジョンマップを検討せよ

DXへの取り組みが中堅・中小企業でも必須となった今、中長期ビジョンの中にテクノロジーを軸にしたロードマップを作成することを推奨する。「テクノロジービジョンマップ(以下TVM)」を検討項目に取り入れ、チームで作成いただきたい。

TVMとは、3~5年のスパンで導入すべきテクノロジーを整理し、それを用いてどのような課題を解決するか、ビジネスモデルをどうアップデートしていくかを検討するロードマップだ。TVM策定に取り組むことで、「テクノロジーを手段にさせない」、「デジタルや先端技術から逃げない」ための、テクノロジーを軸とした検討が実現し、DXの実現を格段に早めることができる。

取り組み方としては、下記3つのステップだ。

1.デジタルテクノロジーや先端技術の課題解決要素を整理する

まずは「知」らなければ何も始まらない。多数あるテクノロジーについて、どのようなことが実現可能なのか、どの分野で使われているのか、自業界・他業界での活用事例など、現実に見て触れて知見を持っている方と話すことでそのテクノロジーを本当に知ることができる。

コンサルタントとしてお勧めするのは、プロジェクトを組んでプロジェクトメンバーに知るべきテクノロジーを役割分担し、それぞれが研究することで、チームとしての知見を深めていくことだ。取り組みのスピードが一気に上がることだろう。下記は3Dプリンタの技術解決要素を棚卸ししたフレームワークの例である。参考にしていただきたい。(図3)

2.テクノロジーで解決すべき課題を抽出する

業界や業態によって課題は様々であるが、考え方は大きく2つである。「攻め」か「守り」かである。最初に着手しやすいのは「守り」の取り組みだろう。

「守り」は、端的に述べると「人がやっていることをテクノロジーで置き換える」ことである。過去、工場のラインメンバーの作業においてロボットなどが置き換わってきており、近年では様々なテクノロジーがその可能性を大きくしている。間接業務ならばRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やAIだ。間接業務はこれまで置き換わりにくい業務ではあったものの、実はかなりの業務がルールに則って進められており、RPAやAIが代わりに行うことはそこまで難しくはない。また、近年ではAIカメラや協働ロボットが工場の品質検査の仕事を行う事例も増えている。人口減少に悩む日本において、ルーチンワークをテクノロジーが代替して行うことは、ある種決まった未来とも言えるだろう。そして、それに取り組まなければ競争力は相対的に下がっていくものと考えられる。

「社員の働き方」や「社員の幸福」を考え、「守り」の施策を複数考え出していただきたい。

「攻め」は商品価値やサービス価値を上げる、いわゆる「顧客価値」を上げる取り組みである。BtoCビジネスの事例としては、NetflixやAmazonプライム等が挙げられる。動画の視聴は今やオンラインが当たり前となっており、アナログビジネスであるレンタルビデオ事業は衰退の一途を辿っている。

また、BtoBビジネスにおいても、単純にモノを売り切るビジネスではなく、イニシャルコストを極力下げてオンラインで価値提供することで、ランニングコストとして料金を得るビジネスも増加している。

BtoC、BtoB、どちらも共通して言えるのは、「顧客の課題を解決すること」である。顧客価値の視点から、ありとあらゆる技術を用いて課題解決を構想し、アイデアをひたすら出し続けることをお勧めする。

3.テクノロジービジョンマップにまとめる

出されたアイデアを時系列に整理することで、全社の共通判断軸となるテクノロジービジョンマップが作成できる。整理する際に気を付けていただきたいのは、下記ステップである。

STEP1:取り組みたい部署から始める

STEP2:「守り」の施策へ取り組む

STEP3:「攻め」の施策へ取り組む

肝は、STEP1である。デジタル化への変化を拒む組織・人はこの時代となっても案外多い。まずはやりたい部署からやらせてみることだ。その取り組みがその他の組織に伝播し、組織風土や個人の考え方をも変革していくきっかけとなる。

そして、STEP2の「守り」の施策についても意味がある。「守り」の施策に取り組むことで、DXに取り組むための余力を生み出したり、「守り」での取り組みがそのままSTEP3の「攻め」の商品・サービスに繋がることも少なくない。

まずはテクノロジーを「知る」ことから始め、「テクノドリブン」で解決すべき課題を抽出し、最終的にはテクノロジーを用いたビジネスモデルや組織の変革までを、自社の長期ビジョンを策定するうえでご検討いただきたく思う。

タナベ経営では、「知らなかった」⇒「だから取り組みが遅れた」という状況にならないよう、隔月で様々な技術を研究する「尖端技術研究会」を開催している。日進月歩でテクノロジーが進む中、自社のアンテナのみで変化をキャッチすることは難しい。是非とも、「尖端技術研究会」に参加し取り組み内容を検討し、自社のビジネスモデルのアップデートに挑戦して頂きたい。

尖端技術研究会:https://www.tanabekeiei.co.jp/t/lab/advancedtech.html

■株式会社タナベ経営ホームページ

【著者】

タナベ経営 経営コンサルティング本部 中四国支社 副支社長 尖端技術研究会リーダー 森重 裕彰 

大手自動車メーカーの生産技術担当を経て、2012年にタナベ経営に入社。2021年より中四国支社副支社長兼尖端技術研究会リーダーを務める。「問題解決の鍵は全て現場にある」を信条に、誰もが納得できるように見える化ノウハウを駆使して、クライアントの問題解決の支援を行う。また、尖端技術研究会で培ったノウハウや知識をベースに、デジタルツールを用いた業務改善や顧客価値創造を得意とし、クライアントの理念・風土・組織に合わせたデジタルモデルを構築し、運用までをサポートするなどの成功事例を多数持つ。北九州市立大学国際環境工学部機械システム工学科卒。

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