ファクトリーDX最前線【3】製造業が抱える慢性的課題を解決する「融通が利く」ロボットとは

日本の製造業が抱える慢性的課題

今回は、ロボットによる生産現場・研究ラボ現場の自動化を推進する事例を紹介したい。

ロボットで自動化する着想の背景には、日本の製造業が抱える慢性的課題がある。

1.労働人口の減少

少子高齢化に伴い、生産量の担保や技術伝承が困難な企業が少なくない状況であり、事業を縮小せざるを得ない企業が今後も増えていくことが予想される。

2.多品種少量生産への対応

顧客ニーズの多様化が進むなか、自動化設備への大規模投資が困難であることから、自動化に踏み切りたくても踏み切れない企業が少なくない。

3.社内のロボット従事者が不足

これまでロボット導入経験がなく、導入に対する抵抗感や受入体制、ロボット運用体制がないため、漠然とした不安を感じている。

4.ロボット導入への抵抗感

ロボットは「使いにくい」「大きくて邪魔になる」「多品種少量生産への融通が利かない」というイメージがある。また、ロボットへ作業を教え込むティーチングが困難であることや、メンテナンス等に手間が掛かることが想定されるため、結果として導入に前向きになれないという声を聞く。さらに、ロボットには安全装置に加え、設置周辺には安全柵も必要で広範囲のスペースを要するため、生産スペースが限られる中小企業等からは特に、ロボット導入に対するネガティブな意見を耳にすることも少なくない。

少子化が進む日本で活躍するロボット

今後、「人の代わりに働ける」「その時々に応じてフレキシブルに働く」ロボットが必要だ。それを実現するためには、「簡単操作で使いやすい」「場所を取らない省スペース」「多品種少量生産への対応」等、融通が利くロボットが求められるのではないだろうか。たとえば、昼は人間8名で生産対応していたが、夜は人間2名とロボット6台で生産対応できたり、作業員の急な体調不良等による欠員が出たとき、ロボットのハンド交換のみで作業内容をフレキシブルに切り替えることができたとすればどれだけ便利か想像してもらいたい。そんなロボットが社内に一台あればどうだろう。このような「融通が利く」ロボットを世に生み出している一例を紹介する。

製造業の課題を解決する「融通が利く」ロボットとは

ベルトコンベアに使用されるローラー・プーリーの部品メーカーとしてトップシェアを誇る㈱JRC(大阪市)は「部品メーカーだからこそ提供できるソリューションは何か?」に向き合い、ロボットSIer事業(=アルフィス)を始動。自社工場で50%以上の自動化を実現してきた企業だからこそできる、ユーザー目線に立った提案を強みに事業を拡大させている。

アルフィスが「融通が利く」ロボットを生み出すために製造業に関わる多くの人にインタビューを行ったところ、以下の課題を抱えている企業が多いことがわかった。これらの課題を解決できるロボットができれば、多くの製造現場を手助けできると判断した。

これら課題をクリアするために生み出されたロボットが、直感操作で誰でも使えるロボットユニット「Robogie(=ロボギー)」である。多品種少量生産への対応が(ハンド交換等により)簡単にでき、ロボット操作をするために複雑な操作が不要であり、注目を集めている。

■株式会社JRC ALFIS(ロボットSI事業)

最後に

コロナショックによりDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速する日本社会において、様々なデジタルツール、自動化ツールが多数登場しているが、使い勝手のよいものを見極め試してみることが重要だ。単に「人間の作業を自動化するだけ」ではもったいない。自動化で自社工場の課題、顧客の課題、社会的課題を解決する、ビジネスを変える、そんな自動化を推し進めていきたいところである。

■株式会社タナベ経営ホームページ

【著者】

タナベ経営 ファンクションコンサルティング大阪本部 部長 山内 優和

医療機器メーカー、食品メーカーで品質保証・企画業務に従事しながら現場作業を多数経験。工場現場で得たノウハウを生かすべく2007年タナベ経営に入社。企業再生・再建支援や中期ビジョン策定、現場の生産性カイカク・業務改善・社員の教育・フォローを行うなど多方面を手掛け企業のビジョン実現・収益改革に貢献。

タナベ経営 ファンクションコンサルティング大阪本部 部長代理 小谷 俊徳

非鉄金属メーカーで生産管理に従事し、その後、食品メーカーで工場長、品質保証の責任者を経験。国内外の協力工場の品質・生産管理指導や海外工場立ち上げ時の技術指導も行う。タナベ経営に入社後、現場で培った経験をもとに、生産現場のほか調達から物流まで幅広い分野で、業績改善を軸にコンサルティングを行っている。創意工夫をモットーとする現場主義コンサルタント。

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