令和の販売員心得 黒川想介 (51)

営業は企業の経済活動の最前線にいる。第一次大戦を舞台にした小説に「西部戦線異常なし」という名著がある。ドイツ軍対英仏連合軍の戦場小説である。題名からは平穏な戦場であるかのようなイメージを受ける。

しかし内容は膠着した塹壕戦で、くる日もくる日も長大に伸びた塹壕の中で気が滅入る様な戦いが続いた。そして主人公の兵士が戦死したその日の軍司令部報告書には西部戦線異常なし。特に報告すべき件なしと記されていたというところで終わっている。最前線にいる営業では販売促進や情報交換や月末売上会議が行われる。その席で何かしらの報告と販売員に促す場面が見られるが大きなテーマを抱えてない大半の販売員は特にトピックスはありませんという報告をする。

やる気のない営業活動をしているわけではないだろうし、毎日精一杯やっていると思っているはずだが、西部戦線異常なし、特に報告すべき件なしという状況の感じがする。昭和の盛りの営業戦線は明日にむかって前進していた。営業会議で販売員は特に報告することはありませんという発表はなかった。各自は主体的活動の目標を持っていたから、その目標に対しての反省を踏まえて、次月の行動内容を簡単に発表できたからだ。営業には攻めの営業と守りの営業がある。昭和の盛りの営業は毎日が攻めの営業という感覚を持っていた。そこで現在の機器部品販売員に「君達の攻めている営業とはどんな営業活動なのか」と聞いてみた。 

①新商品や戦略的な商品をPRして売込む②競合商品を使っていることを発見して切り換え営業を行う③ネットからの問合せに出向いて受注を決める④取扱いメーカーからの紹介客に出向いて件名を決める。などの回答であった。①②は担当する顧客に対して、③④は新しい見込客に対する活動である。

販売員が自らの動きで1円でも多くの受注をするのは彼にとって攻めの営業となる。しかしこの様な活動は西部戦線のような塹壕戦になっている感じがする。長大に伸びている塹壕の中を行ったり来たり動き回る。時折顔を出して銃を撃つ。撃ってきたら撃ち返す。たまたま敵に当たるが戦況に影響なし。機器販売員が①の活動で売込んでも顧客は聞き置く程度である。②の活動では競合使用を発見しても実績、方針、リスク回避などの理由で切り替えは困難だ。③④の新見込客はネットやメーカー経由で引き合いがあっても実際にそれらの商品を購入した後に取引が継続されることはほとんどない。だから会議の席上で成果発表できずに特にトピックスなしと言うことになる。しかし、成果はなくとも本来の攻めに営業をやっていれば会議の席上で発表するネタはある。

大方の販売店は長大に伸びている塹壕の中で販売員を動き回らせていることを認識することだ。そして特に報告なしと言わせないために攻めの営業が必要なのだ。それなら塹壕から出て攻めさせる武器を持たせなくてはと安易に考えてしまうが、中小の販売店にとってその様な商品があるなら既に扱っているはずだ。現在の営業活動が商談テーマ中心の動きなのだから、活動の実態は攻めではなく守りの営業であることに気づくことだ。

守りの営業は大事である。しかしこれを50%とし、本来の攻めの営業を50%とすればいい。攻める営業をするためには売上数字目標以外に具体的に行動する数字目標が要る。例えば顧客には製造現場をはじめ様々な現場がある。3か月で100の現場を訪問せよ、とかICT技術で生産性に貢献している現場を10例発見せよ等である。攻めていればおもしろい情報や武器は見つかるものだ。

NTTデータGSL

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