【産業用ロボットを巡る 光と影(32)】なぜ不可能と言われてきた「ロボットの世界でデジタル化(DX)」を成功できたか?

生産効率アップできなければDXとはいえない!

-ものづくりのDXで生産効率アップ

過去の記事で筆者が述べてきたように、当社は創業当時から多くの顧客の『ものづくりのデジタル化 (DX)』を成功させ、『他社では真似できないレベル』で生産効率アップを実現させてきた。

そこで最近、多くの方々から筆者に「多くの企業は口ではDXと言いながら、実際はイマイチの結果に終わっている。なぜ、富士ロボットは生産効率アップを実現できたのか?まとめてもらえませんか?」との要望があったため、以下に述べる。

なお、この記事で述べる『ものづくりのDX』とは、単に紙ベースの資料をデータ化することではない。なぜなら、データ化だけでは管理の利便性が少し上がるだけである。『真のものづくりのDX』とは、ロボットとデジタルを融合させ、生産効率アップ・省人化・パッケージ化で専門職への依存リスクと高齢化のリスクを無くすことである。

-DXの成功とは

さて、まず先に述べておきたいことは、『DXの成功』というのは、お客様(特に工場の現場)から「おかげ様で生産効率アップできた。デジタル化に成功できた。」という声をいただくことである。

残念ながら、全国の工場を見て回っている筆者に言わせれば、製造業(特に中小企業)でのDXは、ほとんどが形だけに終わっている。なぜなら、簡単なハンドリングなどのDXはすでに頭打ちで、加工ではロボットが埃を被っているのが現実である。「成功した」と騒いでいるのは一部のメディアやSIer・商社などの販売会社だけなので、くれぐれも「簡単にDXは成功できる」と判断をしないことだ。


-なぜ、多くの企業は失敗しているのか?

では、なぜ失敗するのであろうか?その理由の一つとして、多くのものづくりの企業は「ロボットはNCに軸を少し追加しただけ」という間違った認識を持って導入したパターンが非常に多い。NCとロボットは全く別物であることを理解していない。その違いは、例えば「車の運転ができるから、明日からジャンボジェット機を運転しよう」という人はいない。それくらい大きな違いがあるのだ。ロボットはNCと違い汎用性が非常に高いが、扱いが難しいのである。

-不可能と罵倒された『ものづくりのDX

その難しい『ものづくりのDX』を成功させる(前例でいうと、ジャンボジェット機をゲームコントローラで動かせるようにする)ことが当社のノウハウである。

しかし、その当社に対し、ロボットを中途半端に理解した方々から、「初心者がロボットを扱えるなんて不可能。ロボットは熟練者でないと扱えない」「ロボットは○○な方法でやると決まっている。DXは無理」「効率を大幅に上げるなんて絶対に不可能」と鼻で笑われ、時には罵倒されることもあった。

罵倒する理由として、製造業の加工の世界では、紙で処理をしていたものをデジタル化するだけでも難しいから。まして、ロボットとデジタルを融合させて効率アップとなると、これまで多くの企業がチャレンジしても失敗し、結局アナログに戻ってしまうほど難しいからである。

なぜ難しいかというと、『デジタル』と『現実』はまったく世界が違うので、現場で様々な問題がおきるからだ。その理由は、ロボット自体の精度、製品と3DCADとの差分、ロボットの特性、ロボットを動かすティーチングペンダントで最低限やっておくことを理解していない、ソフトよりハードを重視する日本人的な考え、設備を導入するスケジューリングが間違っている、などである。

ちなみに当社を罵倒した方々は、なぜアナログで非効率な方法を長期間放置し、変革の努力さえしないか?不思議に思うかもしれないが、アナログな方法が継続する方が既得権を持っている方々には好都合である(時間がかかった方が金もうけになる)ことが当社の調べで判明してきた。既得権を持つ者が、自分たちのことしか考えず前例主義に固執することは愚かにも程がある。

-血を吐くほどの苦労を重ねて、不可能を可能に!

さて、どうして当社はDXに成功し、多くの企業の生産効率アップを実現できたのであろうか?すでに前述した内容にも答えがあるが、あえてまとめると顧客が何を望んでいるかをヒアリングし、その要望を満たすために『初心者でも使えるソフトの開発』や『ノウハウを簡単にパーケージ化』して顧客の社員教育に努めてきたからである。言葉にすることは非常に簡単だが、当社は全国の工場を回り、成功するまで顧客に寄り添い、その成功したノウハウをビックデータとして管理し、またそれを次の顧客のために活かす、を繰り返してきた。長年、血を吐くほどの苦労を重ねて、不可能を可能にしたのだ。

ソフトを購入された顧客には、ノウハウを授けるコンサルティングを無償で行うことは「経営者失格」と言われてしまうかもしれない。しかし、顧客の喜ぶ顔は、当社の生きがいで創業した理由でもある。

最後に、「富士ロボットさんは顧客に何を望みますか?」とよく聞かれるが、ひとつ挙げるとすると「謙虚さ」である。謙虚さに欠け「金を持っている方が偉い」という古く傲慢な企業からの依頼は最近お断りしているが、謙虚な企業には全力で当社のノウハウを惜しみなく授けたい。

◆山下夏樹(やましたなつき)
富士ロボット株式会社(http://www.fuji-robot.com/)代表取締役。福井県のロボット導入促進や生産効率化を図る「ふくいロボットテクニカルセンター」顧問。1973年生まれ。サーボモータ6つを使って1からロボットを作成した経歴を持つ。多くの企業にて、自社のソフトで産業用ロボットのティーチング工数を1/10にするなどの生産効率UPや、コンサルタントでも現場の問題を解決してきた実績を持つ、産業用ロボットの導入のプロ。コンサルタントは「無償相談から」の窓口を設けている。

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