【DXツール導入事例】大林組、データドリブン経営の推進に向けて

2020年11月18日

データ仮想化ソリューション「Denodo」によるデータプラットフォームを構築

大林組は、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する取り組みとして、データに基づいて意思決定を行うデータドリブン経営を強化している。

その基盤として、2019年にBI・データウェアハウスソリューションを専門とする株式会社ジール(本社:東京都品川区、代表取締役社長:岡部貴弘)の技術支援を受けてデータプラットフォームを構築し、運用を開始している。

データプラットフォーム構築のプロジェクト開始からPoC、実運用までの取り組みについて、要点を抜粋して紹介する。

 

PoCから導入 ジールが支援

部門間の閉じたデータをオープンに 共通基盤の構築をスタート

データドリブン経営の根幹はデータ活用にあるが、同社では総務・営業・設計・工事など、部門最適でシステムを構築し、データ活用もそれぞれの部門内に行っていた。部門外でデータを活用する場合にも、担当者が社内システムや社外の情報を手元に集め、Excelでまとめ、レポートを作成していた。いわゆる部門ごとに閉じたサイロ状態で、まずそこの解消が必要となっていた。

安井勝俊デジタル推進室 デジタル推進第一部長によると、「手作業による集計業務では、隔週や月次のタイミングで経営指標などのデータを可視化するのは困難であり、ミスを招く恐れもあります。また、各部門で同じようなデータを作成するといった非効率な面も課題になっていました。DXにより社会や産業の構造が変化する中、意思決定の迅速化を図るために、社内のデータを統合し活用する基盤の構築が必要でした」とし、データプラットフォームの構築をスタートした。

(写真左から)株式会社ジール・デジタルイノベーションサービスユニットシニアアソシエイト佐藤葵氏、シニアコンサルタント山口亜矢子氏、ビジネスディベロップメント部上席チーフスペシャリスト石家丈朗氏、株式会社大林組・デジタル推進室デジタル推進第一部長 安井勝俊氏、副部長 望月政宏氏、グローバル経営戦略室経営基盤イノベーション推進部主任 廣瀬雅之氏

 

データプラットフォームの構築で重視した4つのポイント

部門に分散しているデータを統合し、全ユーザがデータ活用できるようにしたい。2019年にデータプラットフォーム構築プロジェクトをスタートし、大きく4つのポイントを重視した。

①データ取得の窓口一本化
データプラットフォームにアクセスすることで、ユーザの誰もが必要な時に必要なデータの活用を可能にする。

②データ活用における情報システム部門の負荷軽減
これまでは業務部門のデータ活用におけるニーズに対して、情報システム部門が内容を理解したうえで、データを収集・加工して提供していた。データ取得の窓口一本化と自動化、業務部門のセルフサービス化を促進することにより、情報システム部門の負荷を減らすことで、情報システム部門は、情報戦略など重点テーマに集中する時間を創出する。

③疑いようのない正しいデータであること
データの品質は、分析結果の信頼性に直結する。また、上司から「このデータは正しいのか?」と疑問を挟まれるケースもあったという。社内の誰もが同一のデータを利用し、かつ正しいデータであることを説明できるようにするためには、データを複製するのではなく実際に動いているシステムのデータを読み込む点を重視した。

④セキュリティの確保
これまで部門ごとでアクセス権限を行ってきたデータ活用を、部門を横断しユーザの誰もが利用できる環境に変えることにより、利便性とセキュリティの両立が重要な課題となった。

 

ツールとして「Denodo」、構築パートナーにジールを選択

数あるソリューションのなかでも、これら4つのポイントを満たし、かつ運用負荷の増加を最小限にしつつ『疑いようのない正しいデータ』という要望に応えることができたのが、データ仮想化ソリューション「Denodo」だったという。

データを複製することなく論理的なデータウェアハウス環境の提供により、ユーザは1つの大きな論理データウェアハウスへリアルタイムでアクセスし、意識することなく常に最新のデータを利用できることを高く評価した。

さらに構築パートナーには、Denodoの代理店としてデータ仮想化を推進しているジールを選定。データプラットフォーム構築後のデータ分析・活用でBIに豊富な実績と技術力があることがポイントになった。

 

ジールの支援を受けてPoC実施、Denodoのパフォーマンスを実感

2019年11月から20年1月までの3カ月間、PoCを実施。評価基準として、論理データウェアハウスの実用性や、データソースへの影響(負荷)の有無、権限を有するユーザ・組織への情報提供ができるかなどを含めたユーザ管理の実用性、さらにデータカタログの実用性を設定した。

論理データウェアハウスの実用性に関する検証では、既存システム用のデータベースであるOracleDatabaseやその他データベース製品に接続するためのJDBCやODBCのサポートをはじめ、XML、JSON、Excelといった各種ファイルに加えて、Webサービスなどさまざまなデータソースにつながることを確認した。これまでXMLファイルを読み込める状態にするまでに苦労していたところ、Denodoは特に設定することなくXMLファイルがうまく開けて驚いたという。またユーザがストレスなく利用できることも分かった。

データソースへの負荷について、業務システムの稼働中にデータを読み込むため、既存システムの性能面への影響も確認したが、問題はなかった。データ仮想化により既存システムの改修が必要なく、短期間の導入が可能であることも確認でき、GUIによる操作で運用の効率性も期待できるとした。

ユーザ管理の実用性では、アクセス権限設定の機能の使いやすさに対して高評価を与えた。データべースレベル、フォルダ/ビューレベルに加え、行・列レベルでアクセス権限を設定でき、管理職や部門、グループ、個人などそれぞれの立場や業務に合わせたデータ活用を実現できたという。

 

データカタログの実用性では、求める「正しいデータであること」を担保できるかが評価ポイントとなった。それも、メタデータに関する情報の一元管理を実現するデータカタログ機能でメタデータの検索が容易に行え、どこにどのような情報があるのかをユーザが把握でき、専門知識がなくてもWebブラウザを使ってキーワード検索ができ、『Denodoから取得したデータである』ことから利用データに関する説明責任を果たせるとしてクリアした。

PoCの総合評価は上々。従来はDenodoの国内での実績での少なさがマイナス要素となっていたが、今回は逆に「他社との差別化要因になる」と捉え、目利き力と主体性を発揮するICT部門の取り組みとして正式導入を決定した。

システム概要

 

手戻りのない構築作業で約3カ月間の短期間構築を実現

PoCの後、ジールの技術支援を受けて4月から環境構築をスタートし6月に完成。わずか3カ月で実現した。

構築にあたってジールでは、自社環境で事前に課題を洗い出して解消し、そのうえで大林組での構築に望むことで手戻りのないスムーズな構築を実現した。コロナ禍でリモートでの本番環境構築という難しさはあったが、Denodo社の技術者とも密に連携し、トリプルチェックでこまめに確認しながら進めたことも功を奏した。

またDenodoのマニュアルは英語で、そのままでは使いにくい形だったが、情報をかみ砕いて和訳したドキュメントを作成。運用や引き継ぎでも役に立っているという。

 

20年7月から運用開始。データに基づいたワークスタイルを目指す

20年7月からDenodoをベースとしたデータプラットフォームのサービスを開始。当初は社内の基幹システムを中心とする構造化データを対象とし、将来的には業務で利用している社外の統計データやIoTのセンサーデータといった半/非構造化データも含む、さまざまなデータをDenodo経由で提供し、多様な分析を可能にしていく予定。

今後に向けて大林組では、データに基づいたワークスタイルの実現、働き方や仕事の仕方を変えていきたいという。例えば、情報システム部門に依頼することなく、ユーザがデータをタイムリーに活用して競争力や生産性の向上に取り組んだり、経営や上司に対してダッシュボードを使った動的なプレゼンテーションなど。ジールには、データプラットフォームの安定運用に加え、データ活用の支援なども求めていきたいとしている。