【提言】コロナ新時代のデジタル工場(デジタル5S )【コロナ禍が教える日本ものづくり課題(その4 )】〜日本の製造業再起動に向けて(67)

2020年9月30日

コロナ禍によって私達の世界は一変した。 筆者は先日、地方に出張した折、地元の人から聞いた話に大きな衝撃を受けた。コロナ感染者が出た企業が地元の人々に襲撃された実話である。窓ガラスが割られ、落書きをされ、企業経営の中止を余儀なくされた。日本中で繰り返されるコロナ感染者への攻撃は、もはやリンチであり、犯罪である。

自殺者、潰された飲食店、などなど・・日本人の他人を思いやる『美しい日本人の遺伝子』は消え去った。テレビが繰り返すコロナ報道は、人々に恐怖を与え、人々の心を変えた。自分を守ることへの執念から、他人への容赦ない批判と攻撃が芽生えてしまった。テレビによる洗脳は強烈であり、テレビウイルスの蔓延である。

 

古来より日本人の遺伝子は『強調と団結』であり、製造業界においては皆が団結し、『良いものを作る遺伝子』を継承してきた。

製造業の『5S』は、日本製造業の誇りでもある。経営者と社員、事務所と製造現場、個々に差別意識もなく、皆が一丸となって事に当たる姿が日本である。しかし、残念なことに「コロナ禍が日本人の団結を引き裂いてしまった」と言っても過言ではない。

40℃近い真夏の屋外で全員がマスクをつけて歩く姿は、秩序ある日本人と評されるが、その半面で(他人を攻撃する )悪魔が、日本人の遺伝子となってはならない。

 

日本の中小製造業のメリットも、『強調と団結』、そして現場を大切にする事であり、この継承こそ中小製造業の未来への羅針盤である。

中小製造業の経営者は、テレビウイルスの脅威を感じながら、経営を刷新する必然性に直面している。

中小企業経営者が、コロナ禍によって激変した社会を意識しつつ、アフターコロナ時代の経営を立案することは、めちゃくちゃ面倒であるが避けて通れないことである。

 

前段が長くなったが、本論に戻したい。今回のテーマはデジタル工場(デジタル5S )である。工場のデジタル化を検討する上で、必要な知識は『デジタル化の歴史』と『最新デジタル技術の活用メリット』である。

最近、DX(デジタル・トランスフォーメーション )という言葉が話題になっている。デジタル化推進は、菅新首相の政府方針でもあり、日本中でデジタル化が盛り上がっている。では、DXとはなにか? DXが製造業にとって何がメリットか? を解説していきたい。

 

人類のデジタル化の歴史は、コンピュータとネットワークの進化の歴史である。コンピュータの活用は1964年、IBMがメインフレームのSYSTEM/360の発売から始まる。大型計算機として紹介されたこのコンピュータがデジタル化の始まりとして、銀行・証券など大企業で採用され、事務所のデジタル化(IT化と呼ばれた )がスタートした。

コンピュータは自動計算機として開発されたため、日本では『電子計算機』と訳された。ちなみに、中国ではコンピュータを『電脳機』と訳している。

コンピュータは、大型計算機の第1次世代を経て、パソコンの第2次世代に移行し、中小製造業でも爆発的にデジタル化が進行した。今日は、スマホに代表されるクラウドコンピュータの時代に移行している。

 

ネットワークは90年代から、M2M(マシンツーマシン )と呼ばれる独自ネットワークが普及し、中小製造業でも『機械とのネットワーク』として導入されている企業も多い。

今日の革新技術No.1は『インターネット』である。インターネットを活用し、あらゆる情報をリンクする新時代が幕開けした。これをIoTと呼び、インターネットを活用したネットワーク新技術である。

DXとは、インターネット活用への移行であり、クラウドや人工知能、RPAの活用で、中小製造業に大きなメリットをもたらす夢の技術である。

 

DX活用による中小製造業へのメリットは計り知れないが、大別して5つのメリットがある。①段取り ②操作 ③加工 ④メンテナンス ⑤フィードバック で、この5つをデジタル技術によって知能化することにより、 作業者負担を激減させ、大幅な生産性向上とQCD向上が実現する。

このメリットを中小製造業が享受するためには、まず初めに経営者の強いポリシーが必須である。 このポリシーとは、要約すると『5S』へのこだわりである。

5Sとは、整理・整頓・清掃・清潔・しつけであり、日本の(良き )遺伝子の結晶でもある。5Sの徹底と企業成長は見事に比例している。5S徹底の元で日本のものづくりが開花し、企業が成長したのは紛れもない事実である。

ところが、5Sを徹底し大きく成長した企業も、事務所や工場内の情報に目を転じると、生産管理やCAD/CAMなど各種ソフトウェアがバラバラで、情報が5S化されていないことに気がつくはずである。

インダストリー4・0、IoT、DXなど、様々な新用語が飛び交っているが、中小製造業経営者はデジタル化による経営のメリットを確信し、情報の5S化(デジタル5S )を推進すべきである。コロナ新時代の新様式『ニューノーマル工場』は、デジタル5Sの徹底した工場である。

 

◆高木俊郎(たかぎ・としお)
株式会社アルファTKG社長。1953年長野市生まれ。2014年3月までアマダ専務取締役。電気通信大学時代からアジアを中心に海外を訪問して見聞を広め、77年にアマダ入社後も海外販売本部長や欧米の海外子会社の社長を務めながら、グローバルな観点から日本および世界の製造業を見てきた。