富士経済 画像処理システムの世界市場調査、19年は縮小も20年以降拡大へ

■2019年見込 1兆2,836億円(2018年比5.2%減)

 主要処理装置やカメラ、デバイス関連や基板実装関連の検査アプリケーションで米中貿易摩擦の影響大
 エリア別には日本は微減にとどまるも中国やその他アジアで影響大

■2022年予測 1兆5,024億円(2018年比10.9%増)

 省人化を目的とした導入、本格的なデジタル化の移行、ディープラーニングの活用などで拡大

 

総合マーケティングビジネスの富士経済(東京都中央区)は、2019年は米中貿易摩擦の影響により縮小するものの、今後は省人化ニーズが高まり導入する業種や用途が広がり拡大が予想される画像処理システムの世界市場を調査した。その結果を「2019 画像処理システム市場の現状と将来展望」にまとめた。

 

<調査結果の概要>

■画像処理システムの世界市場

2019年の画像処理システムの世界市場は、米中貿易摩擦が想定以上に長期化・深刻化したことによる景気減速と設備投資の停滞から、リーマンショック以来の落ち込みとなり、画像処理装置、画像センサー、FA用エリアスキャンカメラ、FA用ラインスキャンカメラをはじめとした主要処理装置やカメラなどの機器、既に普及が進んでいるデバイス関連や基板実装関連の検査アプリケーションを中心に縮小するとみられる。

一方、人手不足による省人化ニーズの高まりと画像処理技術の向上による検査範囲の広がりを背景に目視検査から画像処理システムを採用した検査が増えつつある自動車関連や、景気の影響を受けにくく同じく省人化ニーズが高まる食品・薬品・化粧品関連の検査アプリケーション、研究開発や品質管理用途が中心の観察・測定関連機器、近年採用が本格化しているAI・ディープラーニング応用製品は、米中貿易摩擦の影響も少なく引き続き拡大するとみられる。

今後市場は製造現場における画像処理のみならず画像活用ニーズの高まりや、省人化を目的としシステムを導入する業種や用途の広がり、アナログCCDイメージセンサーなどの在庫減少による本格的なデジタル化への移行やスマートフォンをベースとした画像処理装置の登場、ディープラーニングの実用化による大手IT企業の外観検査ビジネスへの参入などから拡大し、2022年には2018年比10.9%増が予測される。

 

■エリア別画像処理システムの世界市場

※日本、中国、その他アジアは合計の内数

2019年は各エリアとも縮小が予想される。最も落ち込みが少ないのは省人化への対応の必要性が高く、かつ品質管理用途の需要が底堅い日本であり、2018年比1.7%減が見込まれる。中国は内需向けが好調なものの、輸出向けが米中貿易摩擦の影響により減少し同6.9%減、その他アジアは設備投資を見送った企業がほかのエリアと比較し多くみられることから中国よりも落ち込み、同10.5%減が見込まれる。

欧州は東欧の自動車関連分野で設備投資が旺盛なこと、米州はAmazon.comをはじめとする物流向けが好調なことから、縮小は限定的である。

 

<注目市場>

●スマートフォン活用画像センサー

スマートフォンにモジュール式のパーツやアプリを付加することで画像センサーやコードリーダーとして使用でき、コード読み取りや簡易な文字検査などが可能となる製品を対象とする。

2016年にCognexが製品を発売し、本格的に市場が立ち上がった。スマートフォンを利用して安価に導入できる点が、オーバースペックなどを理由に画像センサーの導入を見送っていたユーザーに受け入れられ、物流関連、製造業、小売業で採用が進んでいる。物流関連では製品や包装などに記載された1次元/2次元コードなどの高速読み取りに使用されており、e-コマースの拡大もあり今後有望な分野とみられる。

現状参入企業は少ないが今後は増えていくとみられることや、スマートフォンのスペックも年々向上しており、コード読み取りや簡易な文字検査にとどまらない、より高度な画像処理も将来的に可能になるとみられ、用途の多様化による市場拡大が期待される。

 

●食品用X線検査装置

X線発生装置やラインスキャンカメラなどで構成され、食品メーカーにおける製造・加工・出荷工程での異物混入防止を目的に導入されている。

食品の安全に対するニーズの高まりや、SNSの普及により異物混入の事故情報も一気に拡散されるようになり明らかになった際のメーカーの損失も大きいことから、日本・海外問わず市場は拡大している。

エリア別には、更新需要のウェイトが高まっている日本や欧州、米州では今後伸びは鈍化していくとみられるが、中国やその他アジアでは外資系メーカーの工場だけでなく、現地メーカーの工場への導入も進んでいることから高い伸びが続くとみられる。

X線カメラ、X線センサーといった主要部品の耐久性が低いため、使用頻度が高いと部品交換によりランニングコストが高くなることが課題になっている。また、真空パックや冷凍保存など、長期保存技術の進展により、さまざまなパッケージが開発されているが、包装材の素材によっては現在のシステムでは明確な判定ができないこともあり、対応の必要性がでてきている。

 

●共焦点レーザー顕微鏡

レーザーが対象物上を走査することで、複数の焦点面の2次元画像を取得、これを高さデータと合成することにより3次元画像が取得できる顕微鏡である。

電子部品関連は電子部品の小型化、精密化が続いており、スマートフォンや車載電装品などの部品、素材関連を中心とした精密な測定ニーズの高まりにより安定した需要を獲得し、市場は拡大している。参入企業は日系メーカーが中心であることから市場では日本が4割近くを占めるが、自動車の電装化による自動車関連での需要増加により中国をはじめとする海外のウェイトが年々高まっている。

電子部品関連は部品や基板などの微細化、自動車関連では熱や振動など耐環境性の高い部品の選定など品質管理や研究開発において、高精度で信頼性の高い画像測定や解析が可能な共焦点レーザー顕微鏡のニーズは高く、引き続き拡大が予想される。

 

●ディープラーニング活用型画像処理ソフトウェア

ディープラーニングを採用した画像処理に特化したAIソフトウェアを対象とし、汎用のAIシステムによる外観検査は含まない。工場などにおける目視検査の代替としてディープラーニング活用型画像処理技術の導入が進んでいる。

2017年に実証実験を中心に市場が立ち上がった。2019年には実証実験が完了し本格導入が進むことで大幅な拡大が期待されたが、スムーズに完了しなかったケースもみられ、市場の伸びは2018年比54.8%増にとどまると見込まれる。

世界的に人件費が高騰しているなか、多くの作業員を配置する目視検査の省人化は喫緊の課題であり、業種としては目視検査のウェイトが高い自動車や食品・薬品・化粧品関連での採用が注目される。世界中の工場でディープラーニング活用型画像処理ソフトウェアの導入ニーズはあるとみられ、今後も市場拡大が予想される。

 

出典:富士経済「画像処理システムの世界市場を調査」

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