製造業・世界と戦う担い手づくり エキスパート待望 (31)

2019年11月13日

「若手技術者が技術の本質を理解していない」という時に

「若手技術者が技術の本質を理解していない」という時には、「古い参考図書を購入し、行き詰まった時に何度も読み返させる」ということをやらせてみてください。

AI、IoT、5Gといった技術トレンドのキーワードが飛び交う昨今。技術は日進月歩で、その賞味期限は短くなる一方。それに追いつこうと、必死にあがく。技術というとそんな印象を持つ方が多いかもしれません。

技術者にとって専門性の根幹ともいえる「技術」は極めて重要であるため、上記の展開の早さが焦燥感につながることも多いと思います。

 

確かに技術の展開スピードは加速する一方です。これに対して常にキャッチアップしていくというのはなかなか大変なことでしょう。特に経験に偏りがあり、また全般的に浅い若手技術者にとって苦しい状況ともいえます。

しかしながら、多くの場合、とても大切なことが見逃されていることがあります。それは、「技術には不変の本質部分がある」ということです。

どれだけ技術が進歩したとしても、技術の本質というのは絶対にかわりません。この本質部分をいかに早い段階で理解するのか、ということが若手技術者にとって肝となります。

 

このような話をすると、多くの技術者は、「最新の理論に関する論文や参考図書を読まなくてはいけない」と考えるようです。当然ながらそのような情報媒体の方が本質を学べるケースもあるかもしれません。しかしながら、本質というのは現代のようなスピードで発展するはるか前に本質的なことが解明されていることが殆ど。

そういう意味では、「古い参考図書(古い論文含む)」の方が本質を理解するのには望ましいということになります。古い参考図書は、基本的に本質的なものをわかりやすく書いてあることがとても多い。

残念ながら最近の技術の参考書は簡単なものを難しく書いているケースが極めて多く、その理由は著者そのものが本質を理解していないというケースが多くなってきている、というのがその背景にあると考えています。

 

技術の本質を解明した人の書いた本は本当にわかりやすい。こういう名著を購入し、若手技術者に事あるごとに繰り返し読ませる、ということが技術の本質を理解する第一歩になっていきます。本質を理解できると、展開の速い最新技術に対しても、何が変化点なのか、業界がどのような方向に動いているのか、ということを落ち着いて俯瞰的に見ることができるようになります。

「古書にこそ本質がある」展開の速い最近の時代の流れこそ、本質が重要視されているに違いありません。ご参考になれば幸いです。

 

◆吉田州一郎(よしだしゅういちろう)
FRP Consultant 株式会社 代表取締役社長、福井大学非常勤講師。FRP(繊維強化プラスチック)を用いた製品の技術的課題解決、該関連業界への参入を検討、ならびに該業界での事業拡大を検討する企業をサポートする技術コンサルティング企業代表。現在も国内外の研究開発最前線で先導、指示するなど、評論家ではない実践力を重視。複数の海外ジャーナルにFull paperを掲載させた高い専門性に裏付けられた技術サポートには定評がある。