産業用ロボットを巡る 光と影(21)

2019年9月25日

情報をタダと思う日本人

情報に対する価値観を改めれば、企業の生産効率は上がる

 

海外と比べて圧倒的に情報を軽んじる日本企業

現在、日本のモノづくりの生産効率が先進国の中でダントツの最下位であることは、周知の事実です。私は日本中の工場を回って産業用ロボットのコンサルタントや指導を行っている為、嫌でもその理由を生産現場で実感します。今回は、日本の生産効率が悪い理由の一つを述べたいと思います。

結論から申し上げると、それは、日本の企業は海外と比べて、圧倒的に情報を軽んじているからです。つまり、加工機などのハードには多くのお金をかけるが、情報はタダで手に入って当然、という風潮が流れているからです。

実は、私と弊社(富士ロボット)の社員は、全国の工場を回ってきた経験から、生産効率アップのノウハウを多数持っていますし、もちろん実績も多数あります。そのノウハウをタダで聞き出そうとする会社があるので、その例を、大企業と中小企業それぞれ挙げたいと思います。

富士ロボットのノウハウで生産効率がアップした顧客のレーザのロボットシステム

 

お礼どころか非礼な大手自動車メーカーの一次サプライヤー

愛知県の大手自動車メーカーの一次サプライヤーから「ロボットのティーチング工数が多くて困っているから来てほしい」「富士ロボットのティーチングソフトに興味がある」と連絡が来たので、お伺いしてプレゼンを行いました。

そこで、ソフトのプレゼン中に、ソフトだけでなくロボットに関する弊社の博識を感じたお客さまは、「ロボットメーカーの違いによる、加工の違いは?」「ロボットや治具の配置ミスを防ぐ方法は?」などを聞いてきました。

大事なプレゼンの時でしたので「それは答えられません」とは言えず、仕方なく色々と数時間にわたって説明をしました。もちろん、弊社のノウハウは何日間あっても話しきれるモノではないので、一部だけです。それでも、それを聞いた彼らは、「そんな見方があったのですね? 目に鱗です。驚きました」と喜んでくれましたが、ソフトの方は購入にはいたりませんでした。

 

そして1年後に、もう一度「来てくれ」と連絡があったので、またお伺いすると、「自分たちのロボット設備にとって完璧なソフトが欲しい」と言われるので、「ロボットの世界は深いので、既存のソフトで完璧を実現するのは厳しいので、ソフトの開発が必要になります」「ただし、既存のソフトでも○○までは出来ます。それでも十分に効率アップになります」と丁寧に説明しました。

しかし、「完璧じゃないなら不要だ。うちには必要ないね。もういいよ」と横柄な態度を取ったのでした。

私はこの時、情報を教えて貰ったことに『礼に対し礼で返す』どころか『お礼の一言もない』ことに、このような会社が存在するのだと、非常に残念に思いました。

 

偉そうな態度のレーザ溶接を得意とする中小企業

先日、レーザ溶接を得意としている愛知県の中小企業の社長から電話がかかってきました。そして、前置きもなく「ロボットで○○な動きをさせるとズレがどうしても起きるのだが、どのように解消するのか?」また「ロボットで△△で暴走することがあるが、それを回避する方法を教えてほしい」と聞いてきました。

会話の内容から、この社長はロボットに関しては素人だと分かったので、「あまりロボットをご存じないようですので、まずは『ロボットの軌跡精度』や『特異点』について、ご説明を差し上げた方がよろしいでしょうか?」と申し上げました。すると、「ご存じない」という言葉が気に入らなかったらしく、「オタクだってレーザ溶接、知らんでしょ。知っとるのか?」「とにかく解決法を教えなさい」と、とても教わる態度ではありませんでしたので、丁重にお断りいたしました。

この場合、お客さまは弊社に対し、「こういう見返りを約束しますので、ご教授ねがえませんか?」という態度を示すべきです。

 

海外と日本の違い

海外であれば有益な情報やノウハウは当然有償という認識がありますので、情報を聞くときには、お金、もしくはそれに見合うモノを用意します。

日本では「貴重な情報やノウハウは有償」という認識が根本的にないようです。その証拠に、日本では情報に対しては「タダで教えて」と言いますが、加工機などのハードに対して「タダで貸して」とは言わないはずです。短期間でも、必ずリース料を払うはずです。

 

情報は永遠に使えるという価値観を!

そして、そのリース料を払うことを辞めれば、ハードを返さなくてはなりません。しかし、情報の方は、一度得るとその会社のノウハウとなります。そして、そのノウハウはその企業において永遠に使うことができるのです。さらにその情報を、もともとのその企業のノウハウと合わせることで1+1=3にでも4にでもなるのです。

それでも情報に対してお金がもったいないと思う日本の企業を、私は不思議に思います。恐らく、「情報は目に見えないから」という古い考え方が理由だと思います。

日本の企業は、海外から遅れを取らない為にも、情報に対する価値観を改めるべきです。

 

有益な情報は会社を一変させる!

富士ロボットでは、弊社のソフトを導入されたお客さまに対しては、惜しみなくさまざまなノウハウを教授しています。理由は簡単で、せっかく導入されたのですから、生産効率を大きく改善して欲しいからです。

またそれだけでなく、企業間の情報交換会も実施しています。そして、多くのお客さまから「生産効率が大きく改善しました。期待以上です」とお喜びの声を頂いております。

これからお会いする多くの企業さまにも、有益な情報で会社が一変することを実感して欲しいと考えております。

 

◆山下夏樹
やましたなつき(46)富士ロボット株式会社(http://www.fuji-robot.com)代表取締役。産業用ロボットコンサルタント。サーボモータ6つを使って1からロボットを作成した経歴を持つ。自社のオフラインティーチングソフトでさまざまな現場で産業用ロボットのティーチング工数を10分の1にするなど、生産効率UPを実現してきた。さまざまな現場での問題解決の方法を知る、産業用ロボットの導入のプロ。コンサルタントは「とりあえず無償相談から」の窓口を設けている。