【新社長インタビュー】リタール新岡卓代表取締役、世界の標準化プロセス 日本へ

2019年8月7日

盤用筐体の世界トップメーカーが進める盤製造の効率化

リタールは、盤用筐体の世界ナンバーワンメーカーで、ドイツのインダストリー4.0の中心的メンバーでもある。単に盤用筐体を販売するだけでなく、デジタル技術とプロセスの標準化を通じた盤製造の効率化、生産性向上を進めている。

2019年4月に日本法人の代表取締役に就任した新岡卓氏に、同社が進める盤製造プロセス変革と日本事業について話を聞いた。

リタール代表取締役 新岡卓氏

 

–盤製造の生産性向上が叫ばれている

日本は30年前から労働人口の減少が予測できたが、本質的な対処が先延ばされてきた。2015年から60年の45年間で労働人口が3200万人減ると言われている。これは今のイギリス1国の労働人口と同じ。それが丸々、日本の生産現場からいなくなる。すでにこの流れは始まっている。

これによって自動車や工作機械、電力やエネルギーなど、多くの産業において生産の土台を支えてきた筐体を作る板金メーカーが危機に直面している。労働者の獲得や技術の継承ができず、存続できないケースが増えている。人口減少は大変シビアで、もう先延ばしにできない問題だ。

ドイツでも30年前、労働人口が減る状況のなか、政策的には移民を受け入れて工場の労働力を支えてきた。同時に産業界は、標準化とマスプロダクションの仕組みによって国際競争力を高めるという決断をして今に至っている。

当社の日本でのビジネスは31年目となるが、当初から今までずっとドイツの工業生産の標準化を通じた日本の製造業を支えるチャレンジを続けてきた。それぞれの市場の特性があるので、そのままドイツのやり方で大成功するわけではない。ひとつの可能性の解として、今ならばドイツの標準化を日本の生産現場に入れることで効果がでるのではないか。まさに節目に来ていると思っている。

 

–標準化とは具体的にはどのようなものなのか?

ドイツのある企業では、箱の標準化だけでなく、電気設計から3D CADによるレイアウト設計、その後の加工や組み立て、配線作業までの一連の流れを標準化して生産性を上げている。

グループ会社のEPLANの統合電気CADには、クラウド上に欧米や日本など世界中のメーカーの機器や電材のデータがそろっている。それらを用いて電気回路設計、および3Dによるレイアウト設計を行うことが可能だ。

また、そのレイアウト設計データからレールやダクト等の取り付けを含む穴加工情報、および配線情報を抽出し、当社のリタールオートメーションシステムズが提供する自動機に送る。すると切削加工機Perforexは3Dレイアウト図とおりに穴加工を行い、また全自動配線加工機WTワイヤータミナルは配線部材を適切な長さにカットしてマーキングし、端子処理をして、必要な部材をカセットにしてくれる。作業者はそれを受け取り、EPLANが提供するSmart Wiringというアプリにてタブレット等を使ってデータ化された配線接続情報や3Dの配線図を見ながら組み立て、配線作業をする。こうすることで紙の図面がいらず、スムーズに作業できるようになっている。トータルでは60%の工数削減につながっている。

30年前は筐体を売ることが主だったが、今は変わってきている。この一連の流れを日本でも実現し、お客さまにその効果を評価していただき、成功に導きたい。

 

–日本はドイツとは商流が異なり、壁も高い

当社の根底にあるものは、ものづくりのプロセスに対する新しいモデルを作ること。それが成功すれば、サプライチェーンが断ち切られているところへの課題の解決策になるだろう。

日本の多くの企業は、ぶつ切れのプロセスのなかの部分最適でコストを抑えられている。しかしその分、図面や設計変更も含めた全体のフローではコストがかかっている。一方ドイツでは全体プロセスを通じた全体最適を行っている。日本も、いつまで情報のやり取りを現場の力技で続けられるかは分からない。

いま顧客が欲しいものは単なる箱ではなく、ソリューションへと着眼点が変わってきている。当社は、サプライチェーンの全体最適を必要だと考えるパートナー企業と一緒に経営改革を進めていく。はじめはパイロットラインに導入してもらって評価してもらうことからスタートし、それに成功すればゲームチェンジャーになれるだろう。

 

–注力製品や新製品について

差別化商品でもあるサポートアームは、高さ調節をスムーズになるように改良し、2018年のJIMTOFに出したところ、大変好評だった。これをパッケージ化して販売を強化する予定だ。

また、密閉型の19インチITラックにクーラーを取り付け、サーバールームのない環境でもシステムを簡単に構築できるエッジデータセンターソリューションは製造現場のIoT化に最適な製品であり、ドイツ本国ではHP社と共同開発したシステムをすでに多くの顧客に提供している。

筐体の主力機種である「TS8」の後継機種「VX25」をヨーロッパで発売を開始している。日本では生産体制が整う2020年以降に出す予定だ。

 

–今後について

当社の最大の強みであり、差別化できるポイントは、CAD、マシン、筐体まで一貫してトータルで提供して全体最適を行えること。盤製造のプラットフォーマーを目指すためにはCADとの協調戦略は必須。バリューチェーンを具現化すべく、グループ会社のEPLANとの連携をさらに強化していく。

サービス・サポートに関しても、東名阪、福岡、小田原に拠点があり、納期は小田原に在庫を持つセンターを持ち、短納期になるよう改善している。

ヨーロッパでは圧倒的なシェアを持ち、中国や韓国、アジア地域でも優位に立っている。日本は競合が強い市場だが、取り巻く環境が変わりつつある。ロールモデルを作って横展開していければトータルな売り上げにつながり、同時に日本のものづくりの生産性向上の一翼を担えると考えている。