【インタビュー】三菱電機 半導体・デバイス事業本部 山崎事業部長「IGBTとIPMで世界を牽引」

2019年7月17日

 世界的にCO2削減や省エネに向けた制御の高度化が強く叫ばれるなか、そのキーデバイスとなるパワー半導体が活況だ。エネルギーを効率よく使うための電源制御に特化し、産業機器や家電、車載などで需要が急拡大している。三菱電機はパワー半導体のトップメーカーのひとつで、特にIGBTに強みを持つ。三菱電機 半導体・デバイス事業本部 山崎大樹 執行役員 半導体・デバイス第一事業部 事業部長に話を聞いた。

世界的に強い追い風に乗るパワー半導体

――パワー半導体市場の市況について

 半導体の最新市況について、WSTS(世界半導体市場統計)の調査では昨年は良かったが、今年はスローダウンすると予測しています。しかしパワー半導体は強い需要が続いており、2022年までに年間平均成長率8%での成長が期待できるとしています。

自動車の電動化、電気自動車が本格的な普及期に入り、家電も省エネ規制が厳しくなって世界的にインバータ化の流れが強まっています。産業機器の高度化、発電や送電など電力インフラ系、途上国の交通インフラ整備なども中期的に見ても好材料です。

 足元の市況では、半導体の設備投資の一服感、スマートフォンの新機種の投入、データセンター建設等が一時期に比べてスローダウンしています。サーボアンプやサーボモータ、汎用インバータ向けといったモーションコントロール用途では需要の復活を待っている状況です。

IGBTを中心に産業向けと家電向けに強み

――御社のパワー半導体事業について

 当社はパワー半導体のなかでもIGBTモジュールに力を入れており、世界シェアでトップクラスの位置にあります。市場は約半分が産業用途で、そのうちの7〜8割がサーボモータ、サーボアンプ向け。残り半分が民生用途の家電製品、エアコンや白物家電、ビルのファシリティで占めています。さらに今は自動車が伸びてきています。

 特に目立つ分野としては、再生可能エネルギー向けが活況です。世界的に太陽光発電、風力発電のマーケットが拡大し、それにともなう送電システムのプロジェクトが動いています。再生可能エネルギーは不安定な電源なので送電と配電の安定性が強く求められ、そのためのパワーコンディショナーや蓄電池向けが好調です。

 また世界的に自動化への関心が高い。オートメーションの高度化にはサーボ化やインバータが不可欠であり、設備投資が戻ればこの需要にも期待できるでしょう。中国の自動化市場はハイエンドとローエンドにトレンドが分かれ、特に低価格な汎用インバータの需要が活況でコスト競争が激しくなっています。当社はハイエンドを得意としていますが、ローエンド市場向けにはモジュール化したDIPIPMの提案に力を入れています。DIPIPMは制御に必要な機能を1チップに収めたモジュールで、ユーザーは開発工数と部品点数の削減、サプライチェーン管理の効率化などいくつものメリットを享受できます。トータルでのコストダウンを切り口として拡大しています。

新製品の大型DIPIPM+

――その他の分野では?

 民生市場として家電向けも好調です。エアコンや冷蔵庫、洗濯機など家電製品について、日本ではインバータ化率がほぼ100%ですが、中国ではまだ60%程度。ここ数年でインバータ化率が上がると見られており、ASEANなどアジア諸国も同様の動きがあります。ヨーロッパでも猛暑の影響でエアコンが好調で、世界的に省エネ強化のトレンドが進んでいます。IGBTの需要が期待できるでしょう。またインバータ化が進むと、同時にファンモータの制御も必要となり、パワー半導体がより使われるようになると見込んでいます。

 パワー半導体は全体的に追い風が吹いていますが、一方で内部では競争がとても激しい。引き続き、エッジの効いた製品開発と、需要に応じたタイムリーな供給能力を提供していきます。

総合電機メーカーとしての総合力・実績でリード

――三菱電機のパワー半導体の強みとは?

 当社は半導体専業メーカーと異なり、産業メカトロニクス、重電システム、家庭電器という、実際にパワー半導体を製品に組み込んで使う事業部門が社内にあります。彼らと連携して情報を得て、それを製品開発にフィードバックすることができます。一方で、社外との取り引きが売上の8割を占め、社内外のユーザーとも一緒に技術を磨いています。社内外で良いサイクルを構築しているのが強みです。先端研究所もあり、先行的に製品開発を行うこともできます。

 当社はIPMで世界一、産業IGBTでも確固たる顧客基盤があり、車載向けデバイスも昔から自動車メーカーと取り組んできた経験値があります。これらの実績が次の製品開発につなげられています。

 例えばSiCはディスクリート電源で普及していますが、モジュールは25年以降に本格化すると見ています。大容量では当社が一歩抜きん出ており、自動車でSiCモジュールが採用されれば量産効果でコストも下がる。そうなると車載から産業機器、インフラ向けへと大きく跳ねると考えています。

 パワー半導体の需要は今後も拡大していきます。今後も日本メーカーとして、日本のお客様の省エネや最適な制御をサポートしていきます。

■三菱電機、半導体・デバイス