サーボモータ市場 自動化投資がけん引

2019年6月26日

サーボモータの市場は、2017、18年の上昇基調からは一服感が見られるものの、安定した状況で推移している。人手不足や人件費上昇を背景にした工場の自動化投資意欲はますます高まっており、需要を支えている。

製品的には高分解による高速・高精度制御や、簡単な調整作業、安全対策などを中心に取り組まれ、さらにネットワーク化への対応も注目されている。今後もグローバル市場を巻き込んだ取り組みが続きそうだ。

 

人手不足が追い風

需要の裾野 拡大進む

日本電機工業会(JEMA)がまとめている生産統計によると、サーボモータの17年度(16年4月~17年3月)の生産額は1196億円(前年度比126.8%)で、18年度は1217億円(同101.7%)となっている。また、サーボアンプは、17年度は2046億円(同142.0%)、18年度1668億円(同81.5%)となっている。

17年度はサーボモータの大きな需要先である半導体・FPD(フラットパネルディスプレイ)製造装置の生産が、スマホやタブレットPCなどの生産拡大、車の自動運転に絡んだカーナビゲーションシステム、ドライブレコーダなどでセンサやカメラなどが旺盛な需要となっていることが大きく貢献し、市場を牽引した。

また、人手不足や人件費の上昇なども加わり、工場の自動化投資が国内外で活発に行われたことで、ロボット、工作機械などの生産も大きく拡大したことも要因となっている。18年度も前半はこの状況が継続したものの、中国でのスマホ市場の減速、米中の貿易摩擦の激化などを大きな要因にして半導体・FPD製造装置の需要に急ブレーキがかかり、その余波が工作機械、ロボット市場などにも及ぼうとしている。

 

JEMAの19年度生産見通しは、サーボモータが1181億円(同97.1%)、サーボアンプが1619億円(同97.1%)と微減と見ている。

関連工業会の19年度見通しは、日本半導体製造装置協会(SEAJ)が半導体製造装置が前年度比横ばいの2兆2810億円、FPDが同92.2%の4532億円、日本工作機械工業会(JMTBA)は同88.9%の1兆6000億円、18年度に過去最高の9624億円の受注となった日本ロボット工業会(JARA)では、19年度の受注を同97.7%の9400億円と減少を見込んでいる。

国内では深刻な人手不足、海外ではアジアの新興国を中心とした人件費の上昇から生産の自動化投資が意欲的に行われている。中国では人件費の上昇に加え、工場ワーカーの不足も加わり、自動化は待った無しの状況と言われ、ロボットなどの自動化機械に置換えが進んでいる。

 

国内でも人手不足に加え、自動機やロボットでないと人では作れないものも増えており、自動化投資が取り組まれている。ロボットは産業用に加え、非製造業でもホテルでのサービスや外食産業の人手補完用、警備や清掃などといった幅広い用途で試行しながら普及が進んでいる。

ロボットはサーボモータとセンサで構成されているとも言えるほど、サーボモータの大きな市場で、ロボットの伸長はサーボモータの伸長ともほぼ比例する。ここ数年で2倍ぐらいまでに増加すると予想されているロボットの需要が、サーボモータの市場拡大の牽引役になることは確実だけに、ロボットの果たす役割は大きい。

 

著しい高速・高精度制御化

ネットワークで価値創出

サーボモータの需要はこのほかに、駅ホームの安全ドア開閉や自動改札機、乗り物シミュレータなどのアミューズメント関連、回転ずしのベルトコンベヤ制御などでも採用が進んでおり、新たな市場を形成している。

サーボモータ各社は、使いやすさに重点を置いた製品開発を進めている。複雑な制御調整が簡単にできるオートチューニング機能、機械の振動を抑えながら短時間で位置決めを行う制振制御技術、作業の安全を確保するセーフティ制御技術、さらに効率的な生産を進めるネットワーク化対応などが開発のポイントとなっている。

オートチューニングでは、ワンタッチで機械の共振制御などにも対応できるよう、各社が独自の機能を搭載している。制振制御技術ではアーム先端の振動に加え、装置本体の残留振動も抑制できる低周波抑制アルゴリズムを搭載し、さらなる高精度調整を可能にしている。

 

高速化では、速度周波数応答3.5kHz、26ビットロータリーエンコーダの標準搭載で、6700万パルス/revを超える高分解能製品もラインアップされ、位置決め整定時間を大幅に短縮し、高精度な位置決めや微細加工を可能にしている。整定時間を短縮することは、業務の効率化につながり、機械・システムの生産性が向上する。

また、サーボモータの制御に関しては、指令応答特性を高めるフィードフォワード機能(FF機能)と、外乱抑制特性を高めるフィードバック制御(FB制御)があるが、FF制御とFB制御を完全に分離して制御を行うことができる、2自由度制御方式を搭載したサーボモータも使われている。

両制御を完全に分離することで、より高速・高精度なモータ制御が実現する。例えば電子部品実装機では、部品搭載ヘッドの振動を抑えた高速実装タクトの実現や、金属加工機では、摩擦や粘性の影響を少なくし、切断面を滑らかにするといった高精度な加工が実現できる。

さらに、1台のアンプで最大3台(3軸)のサーボモータができる機種も評価が高まっている。

 

最近注目されているのは、アンプの診断機能を使ったサーボモータの予知診断機能である。サーボモータの稼働時間などを計測して、故障などを予知することで稼働停止などに伴うトラブルを未然に防止することにつながる。

ネットワーク対応では、イーサネット技術をベースにした通信が主流で、通信速度1Gbpsを実現した機種も増えてきた。特にこのところ注目されているのが、イーサネットを拡張し、産業用ネットワークとIT用ネットワークをシームレスに統合するTSN技術である。すでにCC-Link IE TSNに対応したサーボモータが販売開始されている。

MECHATROLINKをはじめ、他のネットワークでもTSNへの対応を始めており、近々ネットワークの主流となってくるという見方も強まっている。

 

■センサレスの動向注視 ■IoT連携で高まる役割 ■TCO削減への取り組み

サーボモータのセーフティ化への対応も進んでいる。サーボモータに関連する規格として、ISO13849-1、IE C61508シリーズ、IEC62061、IEC60204-1、IEC61800-5-2などがあるが、このうちIEC60204-1は、機械の電気装置に関する要求事項を定めた規格で、停止の制御機能について定義されている。

可変速ドライブシステムの機能安全規格であるIEC61800-5-2への対応も行われている。安全規格への対応は特に、自動車製造関連の用途で求められることが多く、サーボモータ各社のほとんどが対応を行っている。

このほか、厳しい環境下でも使用できるよう保護構造IP65などを標準採用したタイプや、IP67対応品も増えている。

 

低剛性への対応もポイントで、特に高速応答の必要なマシンボンダーや、低剛性メカニックを低振動で高速駆動したい取り出しロボット、多関節ロボットなどで重要視されている。

小型・軽量化の例では、サーボドライブが必要とするトルクを直接供給するようにすれば、機構が単純になってコンパクト化が可能となる。故障の発生や外的トラブルの要因も減らせ、低コストや省資源というメリットにもつながる。

機器の小型化では、リニアサーボモータの動向も注目されている。回転型サーボモータとボールねじとの組み合わせに比べ、推力が大きく、短ストローク移動で加減速の繰り返しなどに強みを発揮できる。特に、小型で速い動きが求められている機械などに最適である。

搬送機械、繊維機械などでは、1台のマシンに使用するモータ数が多く、特にサーボアンプの小型化や各軸のゲインチューニング工数の短縮が求められる。このため、回路基板をワンボード化するなど、高密度実装と最適放熱設計での超小型サーボアンプもある。

 

今後注目されるのが、センサレスサーボモータの動向だ。インダクションモータの付加価値を上げたともいえ、エンコーダなしで電圧および電流からモータの速度と位置を検出して、高精度な速度制御や簡易な位置決め制御が実現できる。

しかも負荷変動(0~100%)に関係なく安定した速度で運転や位置決めを実現でき、位置決め精度も高い。エンコーダを使用しないため、小型化が可能で機械の省スペース化にもつながる。また、部品点数が少なくなることで、トラブルも少なくなり、メンテナンス性も良くなる。

IoTと連携したものづくりが志向される中で、装置・システムでのサーボモータの果たす役割はますます高まっている。特定の機能に特化した開発も志向されつつあり、また、ネットワークの特性を生かしたサポート対応も期待される。TCO(総所有コスト)削減に向けた次のステップアップへ取り組みがますます加速しそうだ。