【2019年 年頭所感】日本ロボット工業会、「利用拡大」意欲的に展開

日本ロボット工業会 会長 橋本 康彦

新春を迎え、謹んで新年のお慶びを申し上げます。

さて、我が国では昨年、2025年の大阪万博誘致の成功や京都大学・本庶佑特別教授のノーベル医学生理学受賞、そして20年の東京オリンピック開催を間近に控えてのスポーツ界での様々な活躍といった明るい話題があった反面、台風や地震などの大規模な自然災害が多発した一年でした。

一方、世界経済は緩やかに拡大するなかで、米国での金利上昇や米中貿易摩擦の先行きに対する不透明感から株式市場の不安定な動きが見られるほか、中国においても貿易摩擦の影響が実体経済に現れつつあり、さらにはユーロ圏においても景気が減速しつつあります。このように、世界経済は保護主義的な傾向が強まることによる減速懸念を抱えたなかでの幕開けとなりました。

ひるがえって我が国経済は、政府の各種政策効果もあって雇用・所得環境の改善で緩やかながら景気回復が持続しています。その中にあって、特に私どもロボット業界にとりましては、こうした景気回復下で少子高齢化による人手不足感の拡大と併せ、2015年に取り纏められた「ロボット新戦略」での政策目標と、それに伴う各種施策に支えられ、ユーザー側での需要意欲に底堅さが見られました。

また、「ロボット新戦略」で提案されたロボットの国際競技大会である「World Robot Summit」のプレ大会が、昨年10月、Japan Robot Week2018の開催時期に併せて開催され、その相乗効果もあり盛会裡に終了致しました。20年の本大会に向けて大きな期待を集めるものとなりました。

このような状況の下、我が国のロボット産業は、国内需要が引き続き堅調な伸びを示したほか、需要の約7割を占める輸出が年後半より前年割れが見られたものの、18年は受注額で業界初の1兆円越え(対前年比約7%増の1兆100億円程)とともに、生産額においても対前年比6%前後の9300~9500億円を見込んでいます。

そして19年の今年は、引き続き米中の貿易摩擦による景気減速懸念はあるものの、引き続き中国をはじめアジア及び欧米での世界的な自動化投資意欲が期待されています。

このようなことから、本年のロボット受注額は対前年比4%増の1兆500億円に、生産額につきましても約4%増の9800億円程を期待しております。

このような中、当業界としては中長期的視点に立った業界の活性化をさらに推進する必要がありますが、昨年に引き続き以下の3点を重点項目として取り組む所存です。

第一は「市場拡大に向けた取組」です。

ロボット新戦略での「世界一のロボット利活用社会の実現」を目指し、当会ではロボット革命イニシアティブ協議会との連携のもと、20年に向けロボット活用の裾野拡大に向けたマッチング活動や人材育成並びに環境整備について具体的成果に繋がるよう引き続き「ロボット利活用推進WG」の事務局としてその役割を積極的に担ってまいります。

また、ロボット利活用推進にとってシステムインテグレータ(SIer)の役割は極めて重要であるとの認識のもと、昨年7月に当工業会内に「FA・ロボットシステムインテグレータ協会」が設立されました。本協会では、業界ネットワークの構築や経営基盤や事業環境の向上、さらにはシステムインテグレーションに対する専門性の高度化に向けた活動を積極的に展開致します。

第二は「イノベーションの加速化に向けた産学連携の推進」です。

競争力をベースとしたグローバル市場での優位性確保や今後のAI及びコネクテッドインダストリーズを通じた潜在市場の顕在化を図るうえでも、イノベーションの加速化を通じた市場の獲得・拡大が急務となっています。そしてグローバル市場における我が国競争力の維持・向上にあたっては、イノベーションの加速化を図るためにも、引き続き日本ロボット学会をはじめ関係学会及び関連業界との連携に努めて参ります。

第三は「国際標準化の推進、国際協調・協力の推進」です。

国際標準については、欧米が市場の獲得手段として戦略的に取り組んでいますが、引き続き我が国も官民挙げての取組みが重要です。国際標準化活動に対しては、ロボットのリーディングカントリーとして引き続き積極的に取り組むこととしております。加えて国際ロボット連盟の活動とも併せて、国際交流を積極的に推進していく所存です。

また、本年は6月5日~7日に例年同様「実装プロセステクノロジー展」を開催致します。加えて12月18日~21日には、隔年開催の「2019国際ロボット展」を開催することとしております。

これらの展示会を通じて技術情報の発信とともに様々な分野へのロボット利用拡大への意欲を喚起することに加え、市場調査、技術振興等の各事業を意欲的に展開する所存です。

引き続き関係各位の一層のご支援とご協力をお願い申し上げますとともに、会員各位のご活躍とご発展を祈念いたしまして、新年のご挨拶とさせていただきます。

オートメーション新聞は、1976年の発行開始以来、45年超にわたって製造業界で働く人々を応援してきたものづくり業界専門メディアです。工場や製造現場、生産設備におけるFAや自動化、ロボットや制御技術・製品のトピックスを中心に、IoTやスマートファクトリー、製造業DX等に関する情報を発信しています。新聞とPDF電子版は月3回の発行、WEBとTwitterは随時更新しています。

購読料は、法人企業向けは年間3万円(税抜)、個人向けは年間6000円(税抜)。個人プランの場合、月額500円で定期的に業界の情報を手に入れることができます。ぜひご検討ください。

オートメーション新聞/ものづくり.jp Twitterでは、最新ニュースのほか、展示会レポートや日々の取材こぼれ話などをお届けしています

特集の最新記事8件

>FA・自動化、デジタル化、製造業の今をお届けする ものづくり業界専門メディア「オートメーション新聞」

FA・自動化、デジタル化、製造業の今をお届けする ものづくり業界専門メディア「オートメーション新聞」

オートメーション新聞は、45年以上の歴史を持つ製造業・ものづくり業界の専門メディアです。製造業DXやデジタル化、FA・自動化、スマートファクトリーに向けた動きなど、製造業各社と市場の動きをお伝えします。年間購読は、個人向けプラン6600円、法人向けプラン3万3000円

CTR IMG