日本発スマート工場向けネットワーク規格「CC-Link IE TSN」発表 世界に先駆けTSN対応

2018年11月22日

CC-Link協会(CLPA)は21日、製造現場(FA)とITを融合し、スマート工場を実現するための通信規格となる「CC-Link IE TSN」を発表した。規格のベースとなったTSNは標準Ethernetベースの拡張規格で、スマート工場ネットワークの大本命と言われている。今回、世界で初めてCC-Linkが対応した。
CC-Linkは、日本をはじめ、世界の生産拠点であるアジア・中国地域を中心に普及しており、世界に先駆けてTSNに対応したことでスマート工場、製造業のデジタル化における日本製造業への好影響が期待される。

スマート工場実現に必要なネットワークとして開発

 製造業を取り巻く環境について、生産性と品質の向上、コスト削減、変種変量生産などが求められている。世界各国もそれに呼応するように、ドイツのインダストリー4・0、日本のコネクテッドインダストリーズ、中国の智能製造など国を挙げた製造業の強化方針を進めている。そんななかで大きな流れとして、自律的なものづくりを実現するスマート工場へと進んでいる。

 スマート工場の実現のためには
①フィールドレベルでのデータのリアルタイム収集
②エッジ領域で一次処理
③上位のITシステムへのシームレスな連携と伝送
④フィールドレベルでのリアルタイム応答と高度なモーション制御ができる仕組み
が必要とされる。そのためのネットワークには、FAとITの融合、さまざまな産業ネットワークの混在、高速で大容量通信、高精度な同期が求められる。

これに対しCC-Link協会では、世界に先駆けてTSN技術を産業用ネットワークに採用した「CC-Link IE TSN」を開発し、仕様を公開することとなった。

 川副真生事務局長はCC-Link IE TSNの開発について

「コネクテッドインダストリーズやインダストリー4・0などスマート工場の実現に向けてITとOTをつなぐ要望が高まっている。そのためそれに対応する製品を開発しやすい手法が大事で、そのためにも産業ネットワークも変わらなければならないところに来ている。CC-Link IE TSNはバージョンアップではない。製造のイノベーション、スマートファクトリーの実現に向けて一歩踏み出したいとの思いから、新しい規格としてTSNへの対応を世界に先駆けておこなった。日本からグローバルへスマートファクトリーの実現を発信していく」

と話す。

TSNとは?採用の理由

これまでの産業用ネットワークは、CC-Linkをはじめ複数のネットワークがバラバラに存在していた。それぞれに機器も配線も異なり接続性が悪く、ムダが多かった。

それに対しTSNは、リアルタイム性が求められる制御データを伝送するため、標準Ethernet規格をベースとして産業用に拡張した規格。TSN上でいくつものネットワークを同時に動かすことができ、リアルタイム性、相互運用性、優先制御、時刻同期、高セキュリティを実現できるという特長がある。FAとITの接続性が高く、TSNは欧米でも産業ネットワーク、スマート工場向けのネットワークの有力候補として調査研究が進んでいる。

CC-Link協会はこうしたことから、いち早くTSNへの対応を決め、世界で初めてTSNに対応した産業ネットワークとしてCC-Link IE TSNを発表した。

CC-Link IE TSNの4つの特長

CC-Link IE TSNの特長は大きく4つ。

1つ目は「FAとITの融合」。
これまでの産業用ネットワークは、Ethernetベースのネットワークでも駆動系、I/O系、FAとそれぞれに異なるコントローラで制御され、別々のネットワークで構成されていた。CC-Link IE TSNはFAネットワークを統合でき、ひとつのコントローラでさまざまなコンポーネンツを制御できるようになる。またシステム構成の自由度が増し、配線コストも削減可能だ。

TCP/IPや他のネットワークと同一幹線上で混在できる。時間帯を区切って伝送し、制御通信と情報通信の帯域を分けて伝送するので、混在していても、制御通信のリアルタイム性を保証している。

2つ目は「高速・高精度な制御」。
時分割方式でネットワーク内で同期している時刻で入出力を双方向に同時送信することで通信周期を大幅に短縮。また通信を制御して速い制御と遅い制御を組み合わせても高速性を維持できる。

3つ目は「システムの早期立上げと運用、保守における工数削減」。従来は各産業ネットワークで専用の診断ツールが必要だったが、CC-Link IE TSNではSNMPに対応した汎用の診断ツールが使用可能。多彩な診断方法に対応することで診断範囲が拡大し、正確な診断情報を得られるようになるため、ネットワークのトラブル発生時にも迅速に原因分析と普及ができるようになる。また、伝送時にタイムスタンプをデータに付与できるのも特長。これにより時系列でトラブルを追えるようになり、エラー原因の特定が用意になる。またデータにタイムスタンプがあることでAIなどの教示データとしても有効活用でき、予知保全の精度向上などに有効だ。

4つ目は「多様な開発手法による対応製品の拡充」。専用ASIC、FPGAで実装した高性能機器から汎用Ethernetチップにソフトウェアプロトコル・スタックで実装した低コスト品まで、さまざまなタイプの製品開発に対応可能。伝送速度も1Gbpsだけでなく100Mbpsにも対応する。

世界53社がCC−Link IE TSN製品開発を検討

現時点でCC-Link IE TSN対応製品を開発を検討しているメーカーは53社。FAコントローラやネットワーク機器、配線接続機器、センサや空圧機器、ロボットなど末端のコンポーネンツ、半導体まで幅広い。三菱電機、横河電機、IDEC、パナソニックデバイスSUNX、ワゴ、フエニックス・コンタクト、ワイドミュラー、モレックス、HMS、ヒルシャー、シスコ、バルーフ、オプテックス・エフエー、コグネックス、SMC、FESTO、CKD、川崎重工業、不二越、ダイヘン、アナログ・デバイセズ、ルネサスなど錚々たるメンバーが揃っている。

対応製品が出てくるのは、早いところで2019年春。各社出揃うのは2019年冬と見られており、「11月27日からのIIFESに間に合わせたい」という声が多かった。

日本発のネットワーク 世界に先駆けたチャレンジ 

 今回、CC-Link協会がTSNで先行したが、今後は他の産業用ネットワークもTSN対応を正式に打ち出すと見られており、他の産業用ネットワークとの相互運用性や接続性の強化、国際規格や業界規格、国家規格への提案を進めていきたいとしている。

 川副事務局長は「日本はこれまで規格が固まってから動いてきた。しかし今回は違う。TSNはまだ議論の最中ではあるが、進めることを決断した。TSNをFAとITの融合を実現するため、世界に広めるという覚悟を持ってやっていく。とは言え、既存のネットワークもある。TSNが広まるには時間がかかるだろう。当面は両方で進めていくことと認識している」と話す。さらに「これまでは1つのネットワークでやるメリットを訴求してきたが、ITとの連携、スマート工場になると1つでやるのは無理がある。さまざまなネットワークと融合できるようになるのは世界初の提案。既存のネットワークとTSNをどう結合していくかという提案をし、普及スピードを上げたい」と話している。

参考:CC-Link IE TSN