【端子台特集】堅調続く端子台 IoTの「つながる」追い風

端子台の市場が依然好調な需要が継続している。半導体製造装置、工作機械、ロボット、自動車周辺、ビル、インフラ関連など端子台に関連する分野は総じて堅調で、当面不安要素は見られない。為替の円高傾向や原油価格の上昇などで素材価格への波及が懸念されているが、一部を除いて、量産化や生産改革でコストアップを吸収しているところが多い。製品は小型・薄型に加え、配線作業性、接続信頼性などを重視した開発が進められ、基板用から電力用まであらゆる製品で取り組まれている。人件費上昇、働き方改革、人手不足といった社会全体の変化の中に端子台も巻き込まれる形で変革が進んでいる。

 

関連分野も好調 不安要素なし

端子台の需要は、景気が好調に推移していることから旺盛な伸びを示している。日本電気制御機器工業会(NECA)の2017年度出荷統計によると、コネクタを含めた配線接続機器は前年同期比105.4%となっている。上期は2桁増高いペースであったが、下期は少し落ち着いたようだ。

国内の端子台の市場規模は、国内メーカー、最近シェアを高めている海外メーカー、外販しない内作メーカーなどを合わせて約400億円と推定される。電力設備関連やPV(太陽光発電)関連を除いたすべての分野で需要が拡大しており、端子台各社は納期管理に追われているのが実情だ。特に、半導体製造装置、工作機械、ロボット、自動車周辺、ビル、インフラ関連を中心に旺盛で、今後IoTに絡んだ投資が見込まれることからさらなる上積みも期待できる。

工作機械は17年に過去最高の出荷額を記録し、18年も2年連続で過去最高の更新を見込んでいる。半導体・FPD(フラットパネルディスプレイ)製造装置も再び2兆円市場を突破し、18年も維持する見通しになっている。ロボットもここ2年で50%増と急伸長で、18年は一挙に1兆円市場を突破し、1兆1000億円超えも視野に入れている。

自動車のEV(電気自動車)化や自動運転、蓄電池、IoT化対応に伴うデータセンターなども今後の端子台市場として有望視する声が強まっている。特に自動車は、中国やインド、欧州でのガソリンやディーゼルエンジンへの規制が始まっており、EVへの切替対応が求められている。エンジン車を構成する部品需要の裾野は非常に大きく広いが、EV化でその需要構成がどうなるかの見極めも重要で、EV化によるバッテリーや充電システム関連の市場も大きく見込めることになる。

さらに、バッテリーや自然エネルギーはDC(直流)への対応も必要になってくることが見込まれるが、自然エネルギーはDC1000Ⅴ、DC1500Vといった高圧に対応した端子台が必要になり、低圧端子台も含めて、需要拡大へのプラス効果につながることから、期待ができる。

エアコンなどの空調機器向けも、省エネ化などを狙ったビルのリニューアル化から、今後も堅調に推移するものと見られる。そのほか、鉄道車両向けでの需要も伸びている。鉄道車両は、国内に加え海外でも、社会インフラ向上や省エネ・環境対策などから新造台数が大きく増加している。先進国での新型車両への置き換えに加え、新興国では高速鉄道の建設を積極的に進めていることから、日本の車両メーカーも受注を大きく伸ばしている。毎年計画的に生産が行われることから、しばらくは安定した需要が続きそうだ。

 

端子台コネクタで省工数化

端子台はIoT化における機器や設備などを「つなぐ」という大きな役割を果たすとして、注目されている。最近の端子台は、配線作業性、接続信頼性に加え、小型・省スペース化、DCの高耐圧化などを大きなポイントに開発が進んでいる。

端子台の接続方法は、日本で主流となっているねじ式、欧米で主流となっている圧着端子を使用しないスプリング式(ねじレス式)、圧接式などがある。

日本はねじを使った丸圧着端子台(丸端)が長年使用され、定着している。特に高圧・大電流用途や振動の多い用途ではねじ式の使用が多い。接続信頼性が高いことが大きな理由だ。

しかし、ねじ式は配線作業の手間がスプリング式に比べ多くかかるのが難点となっている。ねじの緩みを直す増し締め作業も必要になることが多い。このところの人手不足の深刻化に対応策としてスプリング式への評価が急速に高まり、対応製品の発売が増えている。従来スプリング式は制御用や小電力用を中心に普及が進んでいたが、ここに来て2つの変化が起きている。

ひとつは欧州を中心にプリント基板に外部端子を使用しないで直接給電するための大電流対応コネクタの要求が高まっていることだ。大容量の電源、インバータ、サーボアンプなどでプリント基板に直接給電することで、大幅な小型化と電力損失の低減が図れ、省エネ化につながるというものだ。コネクタの採用で電線のハーネス化による組立性やボード交換などのメンテナンス性向上が図れるという効果も見込める。ここで使用される端子台コネクタは、結線作業用のレバーを内蔵しており、圧着端子や専用工具が不要で、電線をむき出し指操作での電線接続ができる。レバーを上げた時はスプリングが開き、レバーを下げればスプリングは閉じる構造で、レバーの位置でスプリングの開閉状態がはっきりとわかり閉め忘れなどの作業ミスを防止でき安全性が高いという効果も見込める。

 

広がるスプリング式の用途

もうひとつは、大電流用でのスプリング式端子台のラインアップが増えていることだ。1500Ⅴ/300Aの高圧・高電流の動力・電源用途に対応したり、電線径200平方ミリという太線でもドライバーを使ってワンタッチで裸の電線接続が可能な端子台も販売されている。大電流用は、配線後の増し締めをする丸圧着端子台(丸端)のカルチャーが定着し採用が進んでいなかったが、接続信頼性の高まりに加え、人手不足も重なり、徐々にこの壁がなくなりつつあり、トータルコスト面も優位性が高いとしてスプリング式の採用を始め、市場に大きな変化が出始めている。

スプリング式は配線作業の容易さと、作業スピードの速さでねじ式に比べ格段に優れている。日本配電制御システム工業会(JSIA)は、ねじ式とスプリング式の作業性などについて実機によって検証を行ったが、スプリング式はねじ式に比べ最大で工数が半減する効果が生まれるという結果も出ている。昨今の人手不足から配線接続作業、メンテナンス作業の省力・省人化を求めるニーズは急速に強まっている。スプリング式の端子台はこうした課題解決に大きく貢献するとして、端子台各社はキャンペーンなどを通じて市場への浸透に取り組んでいる。

日本で定着している丸圧着端子台(丸端)にスプリング端子台を組み合わせて1台の端子台でして使える「ハイブリッド式端子台」も動向が注目されている。

端子台の片方が丸/Y形端子台、もう片方がスプリング式となっており、配電盤に設置する内線はスプリング式、外線は現場の電気工事によく使用して慣れている丸/Y形端子台として使えるため、それぞれにとって都合がよいといえる。

従来、国内向けと輸出向けで端子台を使い分けることが多かったが、国際標準化の流れもあり欧州式端子台に一本化する傾向が強まっている。生産コストの削減や在庫管理上からも有効といえる。

1500Ⅴ/300Aの高圧・高電流の動力・電源用途に対応したり、電線径200平方ミリという太線でもドライバーを使ってワンタッチで裸の電線接続が可能な端子台も販売されている。

こうした用途は従来、ねじの緩みを心配することもあり、ねじ式の使用がほとんどだったが、接続信頼性の高まりに加え、トータルコスト面も優位性が高いとしてスプリング式の採用を始めており、市場に大きな変化が出始めている。

スプリング式端子台の利点をさらに向上させる配線用工具も改良が進み、格段に使いやすくなっている。作業者の疲労を低減する人間工学的な設計や、電動式工具なども登場しており、作業効率の向上に貢献している。

ただ、国内市場では丸/Y形端子は全体の約70%で使用されているといわれる。スプリング式の利点は徐々に浸透してきており、比率が変化してくるものと思われる。

一方、高温や低温下の使用周囲環境を考慮した端子台も注目されている。マイナス50℃やプラス150℃といった周囲温度にも耐える端子台や、材質もセラミックやフェノール樹脂などを使用しているが、最近は取り扱いが難しいセラミックに代わって、不飽和ポリエステル樹脂を使用した端子台も発売されている。

さらに別な意味での「ハイブリッド端子台」として、電子部品などを搭載し、付加価値を高めたものも多い。サージアブソーバー素子、リレー、スイッチ、断路器、ヒューズ、LEDなどを搭載したものが一般的で、リレー搭載タイプなどは端子台メーカー以外にリレーメーカーの一部でも扱っている。また、実配線削減でスペース効率の向上を図るため、リレーやサーキットプロテクター、ヒューズ、スイッチを中継端子台に搭載し1ユニット化を図ったタイプや、中継端子台が不要な機能搭載型リレーターミナルも登場している。メンテナンス性では、電流容量の区分や回路のグループ分けなどに端子台のカラー化で対応するケースが増えている。

端子間ピッチ8ミリというスペース効率の向上を図った断路端子台も、各種のプラントで採用されている。前述のLED搭載タイプなどもメンテナンスを容易にするといえる。加えて、端子台の材質に耐油・耐薬品性の高いものを採用した製品も登場している。

人手不足が端子台市場に大きな配線革命を起こし、ⅠoTの進展が市場拡大の起爆剤になりつつある。使いやすさと付加価値を追求した製品開発が今後も進むことで、市場裾野はさらに広がるものと見られ、一気に主役の製品として注目を集めようとしている。

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