【インタビュー】セイコーエプソンに聞く 産業用ロボットの今後

【回答】
◆エプソン販売 産業機器営業部FA機器営業課課長 原明氏
◆セイコーエプソン RS営業部課長 安田光一氏

力覚センサー、小型スカラ、省スペース多関節 3本柱で高度化サポート

スカラロボットをはじめ、小型ロボット分野で世界をリードするセイコーエプソン。すでにロボットによる自動化が進んでいる自動車部品や電子機器などの組み立て領域に加え、現在は、得意とする小型、高速・高精度のロボット制御技術を武器に、新たな分野やアプリケーション領域の発掘を進めている。

—— 国内における小型ロボットの需要見込みは?

先進国でも小型ロボットの需要伸び率は5%あるとされ、特に国内消費されるものは国内生産が多く、その分野に需要を見込んでいます。

例えば自動車は、軽量化やEV化すると、そこで使われる部品も小型・軽量化されていきます。そうなると当社がスマートフォンや精密機器、家電などで培ったロボット技術が生きてきます。また食品工場での生産は、ほとんどが専用機と人手で行われています。特に加工品をトレイに詰めるのは人手が多く、そうした単純作業はスカラロボットが得意とする分野で、多くの市場があると見ています。

—— 現在、力を入れている製品を教えてください。

主に3つの製品にフォーカスしています。1つ目は、自動化が難しかった作業に対して、力覚センサーを使ったソリューション。2つ目は、ロボットを使ったことがない企業に向けて、低価格でコンパクトなスカラロボット「T3」シリーズを提案しています。3つ目は、人手不足の問題に対して、特に狭い工場の中で自動化したいという企業に向けて、折り畳み式スリムアームを持つ省スペース多関節ロボット「N2」を提案しています。

—— 力覚センサーに力を入れている理由は?

職人が手の感覚で行っていた作業を自動化したいというニーズが多くあります。そこで、スカラロボットや多関節ロボットの手首に力覚センサーを取り付けて、微妙な力加減でアームを動かすことで代替していこうと考えています。

ロードセルを使った力覚センサーもありますが、微妙な制御が難しく、測定範囲も狭く、少しでも大きな力がかかると壊れてしまっていました。それに対し、当社はクオーツのMEMS技術を使い、桁違いの高精度で、壊れにくい堅牢性、幅広い計測レンジを実現しています。0.1Nから250Nまでの広い範囲を、0.1N単位で検知でき、1000Nでたたいても壊れません。

—— どんな作業や用途を想定していますか?

例えば、部品同士のはめ合い作業。アームが指定された穴の位置まで部品を持っていくと、そのあとは部品が接触した小さな力を感じて、向きなどを調整しながらはめ込んでいくことができます。また、精密ネジ締めなどにも適しており、上向きの穴や横穴、斜めなど死角になっているような穴でも可能です。このほかコネクタの挿入作業や、表面研磨などにも適しています。

—— T3について教えてください。

ロボットによる自動化には数千万円というお金がかかり、特に多品種少量生産の中小製造業では諦めていた企業がとても多くあります。

T3はコントローラー一体型のスカラロボットで、100Vの電源で使え、モーターユニット・バッテリーの交換もいりません。さらに16キログラムの小型で、標準価格は72万円。構造はとてもシンプルで操作も簡単なので、ロボット未経験の企業でも導入しやすくなっています。

—— N2については?

N2は腕をバッタの足のように折り畳めるスリムアーム採用の省スペース多関節ロボットで、狭いセルの中で自由に動くことができます。通常、多関節ロボットを使う場合は800~900ミリメートル幅の範囲が必要でしたが、N2は700ミリメートル幅程度のセルで十分です。人1人の作業範囲と同じスペースで設置でき、人手不足解消に役立ちます。

協働ロボットを入れる動きもありますが、協働ロボットは安全のため動きが遅く、生産性の面から見ると満足しにくい部分があります。そこにセルで囲ったN2であれば、スピードは速いまま、狭いスペースの作業に使うことができます。

—— 今後について教えてください。

T3とN2を中心に、製造業の自動化と生産性向上に貢献し、合わせて力覚センサーのアプリケーションを増やして、ソリューションを世界に広げていきたいと思っています。

また当社はエプソンブランドで世界中に販売とサポート拠点があるのが強みです。日本の工場から世界中の工場に移設する際にもエプソンによるサポートが可能です。こうした強みを生かしていきたいと思います。

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