知財探訪(3)発明者は人工知能?

人間の「ヒラメキ」で挑戦を

今年の秋は活発な秋雨前線や相次ぐ台風に祟られて、爽やかな秋空を望める日がほとんどなかったように思います。気象庁も忙しくて大変だったと思いますが、最近では人工知能(AI)を駆使した天気予報サービスの取り組みが複数の企業で進められているようです。

AIといえば、チェスに続いて将棋や囲碁で相次いでAIが勝利してから「人智vs.AI」の議論がにわかに熱を帯びてきました。囲碁について言えば「AI同士の対局を通じて今まで知られていなかった囲碁の『定石』をAIが考え出した。今後も考え出すだろう」とのことです。「AIは理論的には人間の思考を凌駕する力を潜在的にもっている」というのが定説のようです。

同様な議論が知的財産の世界にもあります。先日、欧州特許庁による講演を聴く機会がありました。IoTによる第4次産業革命(Industry4.0)にどのように向き合うかという内容でした。とりわけ考えさせられたのが、Who/What is an “inventor?”(誰が/何が「発明者」?)というテーマでした。“Who”はヒトを指しており人間が発明者になることには今まで通りで問題ないわけですが、“What”は「人間ではない何者か」を指しています。この場合、具体的にはAIを搭載したコンピュータです。仮にコンピュータ上でAIが発明を着想した場合、発明者はそのコンピュータの使用者なのか、それとも人間ではないコンピュータそのものなのか、という新しい議論が起こっているのです。

「意外性」は発明の大きな要素です。「課題」や「解決手段」の意外性、すなわち従来の常識や思考方法とは異なったり真逆だったりする発明が、そのことゆえに特許として認められることもあるようです。意外性は「ヒラメキ」と言ってもよいのかもしれません。ホンダの創業者である本田宗一郎氏の名言に「不常識を非真面目にやれ」という言葉がありますが、過去の情報を学習して発想するAIがどこまでこの名言に迫れるのか、AIがヒラメキ能力を持つのか、とても興味があります。

もう一つ興味を惹いたのは特許審査へのAIの関与です。発明技術に対して特許が与えられるためには、従来知られていなかったこと(新規性)、従来あった類似技術と比べて本質的な違いがあること(進歩性)が求められます。特許出願を受理した特許庁では、これらの要件がクリアされているかについて審査をおこないますが、そのためには過去に公になった膨大な技術情報について、多大のマンパワーと時間とを費やして先行技術調査をおこなう必要があります。

欧州特許庁の講演によれば「先行技術調査はAIが自動的におこない、人間はその結果についてより高い次元での判断や評価のみをおこなうようになる。」とのことです。日本特許庁でも、「人工知能技術を活用した特許行政事務の高度化・効率化」の研究をはじめ、これについてのアクションプランを公表しており、先行技術調査についてはすでに研究開発段階に入っています。このように、知的財産の世界でもAIの導入検討は着々と進んでいます。

ネットを賑わす「AIによりなくなる仕事と残る仕事」などの記事を読むと、自分の仕事はどうなるのだろうと心もとない気持ちになりますが、それでも過去の産業革命の都度、消滅した仕事はあっても、一方でそれ以上に多くの新しい仕事が生まれてきたというのも事実だろうと思います。AIには負けない人間ならではの好奇心で新しい仕事を生み出していけるよう、「不常識を非真面目に」挑戦していきたいです。

 

◆清野安希子(きよの・あきこ)
国際基督教大学教養学部卒業。教育関連企業勤務を経て、2002年に知的財産専門翻訳会社の知財翻訳研究所(13年に知財関連サービスの拡充に伴い知財コーポレーションに社名変更)に入社。2年間の事務職勤務の後、営業担当として日本全国の大手メーカー知財部とのコネクション構築に注力。15年に中小企業診断士登録。現在は経営企画室長として事業戦略の立案や新規事業開発に携わっている。

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