産業用トランス 改良の継続で市場拡大 軽量化、新たな配線法など進化

情報制御技術の浸透で需要創出

産業用トランス市場は、幅広い需要分野に加え、産業全般の好調さを背景に需要を拡大している。基本的技術に大きな変化はないものの、軽量・コンパクト化や、配線方法の改良、付加機能の追加、海外規格への対応などといった、ユーザーの使いやすさに応えた改良を地道に続けることで、市場を掘り起こしている。

トランスは、交流電力の電圧を、電磁誘導を利用して変換する機器として、電気機器と不分離なものとして使用されている。トランスは、磁気的に結合した複数のコイルから構成され、基本的構造はシンプルで、鉄芯に1次コイルと2次コイルを巻きつけた構造になっている。

トランスの種類には、単相AC(交流)と三相AC(交流)があり、巻き方は通常複巻だが、他に単巻もある。複巻は1次側と2次側が絶縁できるが単巻に比べて大きい。単巻は複巻に比べて小型、安価だが、1次、2次の絶縁ができないという短所がある。

また、構造別に分類すると①鉄心と巻線が、絶縁油で満たされた容器内に収納された油入変圧器②1次巻線、2次巻線の全表面が樹脂または樹脂を含んだ絶縁基材で覆われたモールド変圧器③絶縁基材として耐熱クラスH(許容最高温度180℃)を用い、表面をワニス塗布した乾式変圧器であるH種乾式変圧器④鉄心と巻線が、不活性ガスを封入した容器内に収納されたガス絶縁変圧器-などに分けられる。

トランスを構成する材料の中で、最も大切なものは絶縁材料である。汎用トランスのほとんどが周囲温度40℃で設定し、構成する絶縁材料を選定している。

トランスは電気を使用するほとんどの機器に使用されている。家電機器から業務用機器、産業用機器まで需要の裾野は非常に広い。産業用では、ロボット、各種加工機械、半導体製造装置、医療機器などが代表的で、さらにインフラ分野の発電関係や、業務用機器のパチンコ・パチスロ、ゲーム機などアミューズメント用途も多く使用されている。形状も用途に応じて、大型タイプから受配電盤、電子機器・装置に組み込まれる小型タイプまで多種多様な機種が利用されている。

日本電機工業会(JEMA)の統計によると、変圧器の生産金額は2016年度で2423億円(前年度比106.4%)で、17年度は2451億円(同101.2%)を見込んでいる。

昨今は省エネへの取り組みが各方面で行われているが、トランスでもトップランナー製品として、効率の高いトランスの開発・販売が国を挙げて展開され、トップランナートランスへ買い替えが大きく進んでいる。

設置の作業性も向上

トランスメーカー各社は、トランスの軽量・コンパクト化に加え、接続方法の改良など作業性の向上、マルチタップ化、LEDによる通電表示などの工夫・改良に取り組んでいる。

取り付け作業の効率化と結線の作業性・信頼性の向上、デザイン面などの観点から結線部への端子台の採用が一般化している。タブ端子台を採用し、ねじを使わず、リセプタクル端子をタブに差し込むだけで結線が完了するタイプなどが主流となっており、結線作業の効率が大幅に向上している。

最近では、単線や棒端子を差し込むだけで結線が可能なプッシュイン式端子台を採用したトランスも増えてきており、配線作業の省力化に大きな効果を生み出している。

また、マルチタップを採用した製品は、1次側(入力)とともに、2次側(出力)にもマルチタップを採用することで、1台のトランスで複数の電圧に対応することができ、入出力の電圧変更が簡単に行える。

ねじアップ式端子台にLEDを搭載し、通電中はLEDが点灯し通電状態が一目で確認できるタイプも好評だ。軽量・コンパクト化へ、絶縁紙の使用枚数を減らす工夫もされている。

出力コンセントとLEDを搭載することで、コンセントと盤内照明が不要になり、部品点数、配線工数、設置工数が削減できるタイプや、コイルの上下面の線輪間を完全に覆うことで、ホコリやごみ、湿気などからコイルを守り、絶縁不良の事故を防ぐタイプもある。

海外向けや海外向け装置への組み込み用に、欧州のEU規格や北米のcUL規格などを取得した製品も増えている。

電圧や電流を変化・安定させる役割を持つトランスであるが、最近はさらに役割が増えている。ノイズ対策機能を内蔵したものや、雷対策用の耐雷トランスが用意されている。ノイズ対策にはノイズフィルタなどが使用されているが、トランスにもノイズ対策機能を内蔵させている。

雷対策用の耐雷トランスでは、入力側から侵入したコモンモード雷サージ電圧を1000分の1以下に減衰させたりできる。

その他、焼損事故の再発を防止する自己保持型サーマルプロテクタを内蔵したトランス、成型前のガラス繊維などに熱硬化性樹脂を染み込ませた、金型レスのプリプレグ方式のモールドトランスなども伸長している。

最近は、トランスの技術を応用したリアクトルや給電システムなどが開発されている。汎用インバータ用交流・直流リアクトルは、入力力率を改善するとともに高調波電流を阻止するもので、コンデンサの焼損を防止し、電流の脈動を平滑化させる機能があり、需要が拡大している。

高周波リアクトルは、小型でありながら低損失、低騒音で、電流特性に優れ、PV(太陽光発電)システムのパワーコンディショナ向けに需要が伸びている。PV分野以外にもUPS(無停電電源装置)や、バッテリチャージャー、各種のコンバータ/インバータや、各種の電源装置にも応用でき、今後のアプリケーション拡大につながるものと期待されている。

トランスは、寿命が長い機器であるが、長期にわたって使用していると、温度、湿度などの影響を受け、巻線の被覆やコイル間スペーサなどの絶縁物が劣化する。絶縁物は劣化が進行すると、異常電圧や外部短絡の際の電気的・機械的ストレスを受けて破損する機器が増える。

さらに、トランスの寿命は絶縁物が受ける温度に影響を受けるため、寸法や絶縁種別が同じトランスでも、温度の高いところで使用する機器の場合は、定格容量が小さくなり、注意が必要だ。

今後の産業用トランスは、より一層の省エネ化・高効率化を図るため、鉄心や巻き線の材料の開発や、トランス自体の構造改良などが引き続き進むものとみられる。

産業用トランスは用途ごとに仕様が変わり品種が増えることが多い。搭載される機器に最適なスペックや形状、容量などを求めるユーザーニーズは依然強く、トランスメーカーは、在庫管理の効率化や販売店との連携などをはかりながら、効果的な取り組みを進めている。

情報制御技術が社会全体で活用され、IoT・M2Mやスマートグリッドなどが浸透することで、トランスの需要も今後着実に拡大することが見込まれる。トランスの付加価値を高める取り組みが新たな需要創出につながってくる。

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