IoT時代の製造業ITソリューション(最終回)

変革が求められる製造業ソリューション(2)

日本の製造業は現場の強さに求めることができ、それを無視して中央集権的な発想でIT化を進めては、かえって競争力を失うことになるかもしれない。

しかし一方で、グローバル競争力を高めるためには、海外現地工場の活用などの観点から、いつまでも日本流を掲げるわけにはいかないとも言われる。実際、製品ライフサイクルの短期化や高度なSCMオペレーションの必要性などを考えれば、製造の上流から下流までを見渡すことができる経営システムが必要なことは明らかであろう。

特に、Industrie4.0やIndustrial Internetといった次世代ものづくりの実現をはかろうとするならば、現場の情報をいかに上流側で統合していくかという点は重要なカギを握ることになる。

欧米系のメーカーからすれば、上流側は比較的統合が進んでいる。ERPで経営情報は可視化され、MOM/MESで工場データも可視化された。次はさらに細かい工場側・製品側のデータの可視化、というように、IoTは下流側サイドに限りなく神経網を伸ばしていくようなイメージでとらえられているに違いない。

ところが日本では、あまりそういうイメージをきかない。IoTの導入も、特定サービスの実現であったり、特定の工程を対象にした合理化検討策が目的で行われがちにみえる。つまりボトムアップ型の部分最適となっているのである。果たして、現有するセンサーや産業機械のデータすら、統合・活用されていないなか、IoTとしてセンサーを取り付け、データ量を増やすことで、何か新たな価値を生み出すことができるのだろうか。率直に疑問を感じる。

おそらく、日本の製造業が重視しなければならないのは、MOM/MES領域である。MOM/MESは大量のデータをERP側へつなぎこむ糊の役割を担っており、今後はMOM/MESにおいてデータ分析・故障予測など機能が盛り込まれていくだろう。

海外においても、MOM/MES領域は必ずしも標準化されているわけではない。製造現場には、個別のノウハウが蓄積されており、それは量・質の違いはあっても海外も同様と聞く。

日本でも、現場主導が悪いわけではなく、そこで閉じている点が問題なのである。企業として上流側が統合できるように、一定のルールにおいて現場側の改善を活かす動き、そしてそれを許容する柔軟なMOM/MES、そうしたものが、今後の日本の製造業を強くするのではないだろうか。

注1:メーカー出荷金額ベース、ハードウェア売上高を含まず、サービス・保守メンテナンス売上高を含む
注2:予測は予測値
注3:CAGRは2014年から各年までのCAGR

『2015 IoT時代の製造業ITソリューション -インダストリ4.0など次世代ものづくりとITベンダの戦略-』(矢野経済研究所 180,000円)より一部転載

■矢野経済研究所 主任研究員 忌部佳史
2004年矢野経済研究所入社。情報通信関連の市場調査、コンサルテーション、マーケティング戦略立案支援などを担当。現在は、製造業システムなどを含むエンタープライズIT全般およびビッグデータ、IoT、AIなどの先進テクノロジーの動向調査・研究を行っている。経済産業省登録 中小企業診断士

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