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産業用トランス 半導体製造・データセンター・社会インフラ 幅広い用途で堅調に推移

■小型・軽量、省工数配線で使いやすさ向上
産業用トランス市場は、工作機械、半導体製造装置、電子部品実装装置、各種ロボットや、データセンターなどのIT関連の需要に支えられて、堅調に推移している。受配電関連、エレベーターやエスカレータなどの社会インフラ関連の需要も拡大している。PV(太陽光発電)システムをはじめとした新エネルギー関連もトランス需要を支えている。技術的には、軽量化、コンパクト化と共に、配線構造の工夫、海外規格の取得、雷やノイズ対策機能など多様化し、ユーザーのきめ細かいニーズに応えている。トランスメーカー各社では、技術力、営業力を高めて製品開発、販売活動に注力し、市場拡大を図っている。

トランスは、変圧器とも呼ばれ、交流電力の電圧の高さを、電磁誘導を利用して変換する機器である。トランスは、磁気的に結合した複数のコイルから構成される。基本的構造はシンプルで、鉄芯に1次コイルと2次コイルを巻きつけた構造になっている。

トランスの種類には、単相AC(交流)と三相AC(交流)があり、巻き方は通常複巻だが、他に単巻もある。複巻は1次側と2次側が絶縁できるが単巻に比べて大きい。単巻は複巻に比べて小型、安価だが、1次、2次の絶縁ができないという短所がある。

また、構造別に分類すると①鉄心と巻線が、絶縁油で満たされた容器内に収納された油入変圧器②1次巻線、2次巻線の全表面が樹脂または樹脂を含んだ絶縁基材で覆われたモールド変圧器③絶縁基材として耐熱クラスH(許容最高温度180℃)を用い、表面をワニス塗布した乾式変圧器であるH種乾式変圧器④鉄心と巻線が、不活性ガスを封入した容器内に収納されたガス絶縁変圧器-などに分けられる。

トランスを構成する材料のなかで、最も大切なものは絶縁材料である。汎用トランスのほとんどが周囲温度40℃で設定し、構成する絶縁材料を選定している。

また、トランスは、鉄と銅の塊で丈夫そうに見えるが、自重が重いため、落下した場合の衝撃はかなり大きく、破損する恐れがあるので、発送する場合はしっかり梱包する必要がある。

こうしたトランスは電気を使用する機器に多く使用されている。特にロボット、工作機械、医療機器、発電関係、アミューズメントなどの産業機器や業務機器分野では、大型タイプから受配電盤、電子機器・装置に組み込まれる小型タイプまで多種多様な機種が利用されている。

変圧器の生産金額は、日本電機工業会(JEMA)の統計によると、2015年度は2290億円(前年度比100.4%)で、16年度は2371億円(同103.5%)を見込んでいる。

トランスメーカー各社は、トランスの軽量・コンパクト化に加え、接続方法の簡易化など作業性の向上、マルチタップ化、LEDによる通電表示などの工夫・改良が進んでいる。取り付け作業の効率化を図るために、結線の作業性・信頼性の向上、デザイン面などの観点から結線部への端子台の採用が一般化している。タブ端子台を採用し、ねじを使わず、リセプタクル端子をタブに差し込むだけで結線が完了するタイプなどが主流となっており、結線作業の効率が大幅に向上している。最近では、単線や棒端子を差し込むだけで結線が可能なプッシュイン式端子台を採用したトランスも増えてきており、配線作業の省力化に大きな効果を生み出している。

また、マルチタップを採用した製品は、1次側(入力)とともに、2次側(出力)にもマルチタップを採用することで、1台のトランスで12種類の電圧に対応することができ、入出力の電圧変更が簡単に行える。

ねじアップ式端子台にLEDを搭載し、通電中はLEDが点灯し通電状態が一目で確認できるタイプも好評だ。軽量・コンパクト化へ、絶縁紙の使用枚数を減らす工夫もされている。

出力コンセントとLEDを搭載することで、コンセントと盤内照明が不要になり、部品点数、配線工数、設置工数が削減できるタイプや、コイルの上下面の線輪間を完全に覆うことで、ホコリやごみ、湿気などからコイルを守り、絶縁不良の事故を防ぐタイプもある。

海外向けや海外向け装置への組み込み用に、欧州のEU規格や北米のUL規格などを取得した製品も増えている。

電圧や電流を変化・安定させる役割を持つトランスであるが、最近はさらに役割が増えている。ノイズ対策機能を内蔵したものや、雷対策用の耐雷トランスが用意されている。ノイズ対策にはノイズフィルタなどが使用されているが、トランスにもノイズ対策機能を内蔵させている。雷対策用の耐雷トランスでは、入力側から侵入したコモンモード雷サージ電圧を1000分の1以下に減衰させたりできる。

その他、焼損事故の再発を防止する自己保持型サーマルプロテクタを内蔵したトランス、成型前のガラス繊維などに熱硬化性樹脂を染み込ませた、金型レスのプリプレグ方式のモールドトランスなども伸長している。

最近は、トランスの技術を応用したリアクトルや給電システムなどが開発されている。汎用インバータ用交流・直流リアクトルは、入力力率を改善するとともに高調波電流を阻止するもので、コンデンサの焼損を防止し、電流の脈動を平滑化させる機能があり、需要が拡大している。

高周波リアクトルは、小型でありながら低損失、低騒音で、電流特性に優れ、PVシステムのパワーコンディショナ向けに需要が伸びている。PV分野以外にもUPS(無停電電源装置)や、バッテリチャージャー、各種のコンバータ/インバータや、各種の電源装置にも応用でき、今後のアプリケーション拡大につながるものと期待されている。

トランスは、寿命が長い機器であるが、長期にわたって使用していると、温度、湿度などの影響を受け、巻線の被覆やコイル間スペーサなどの絶縁物が劣化する。絶縁物は劣化が進行すると、異常電圧や外部短絡の際の電気的・機械的ストレスを受けて破損する危機が増える。

さらに、トランスの寿命は絶縁物が受ける温度に影響を受けるため、寸法や絶縁種別が同じトランスでも、温度の高いところで使用する機器の場合は、定格容量が小さくなり、注意が必要だ。

今後の産業用トランスは、より一層の省エネ化・高効率化を図るため、鉄心や巻き線の材料の開発や、トランス自体の構造改良などが引き続き進むものとみられる。また、IoT・M2Mやスマートグリッドの進展で、通信形態や電力供給の形態が大幅に変化する可能性があり、従来の用途に加えて新しいトランスの市場が形成されることが見込まれる。

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