IoTのレイヤー(階層)と日本の強み・弱み -山田太郎の製造業生き残りのためのスペックマネジメント術(5)

今回の連載ではIoT(Internet of Things;モノのインターネット化)とIndustry4.0のうち、実践的な話をしたいと思う。Industry4.0を整理する上で重要なのがIoTレイヤー(階層)別の考え方だ。

このIoTレイヤー(階層)は下から順に「モノ」「センサー&カメラ」「エッジデバイス」「通信機器」「Iaas」「Paas」「SaaS」「社会インフラ・産業」の8階層からなっている。モノの情報をネットワーク経由で収集し、人がアプリケーション上で可視化するといったイメージだ。IoTもクラウドやインターネットの技術を前提とするので、各レイヤーはISOのOSI参照モデルの階層に似ている。

レイヤー(階層)ごとの整理なのは、それぞれのレイヤー全てをひとつの企業で網羅するサービスを提供するのが難しいためだ。例えばGEやジーメンスであってもセッション層に該当するIaaS(Infrastructure as a Service)領域は得意ではないし、SAPやIBMのようなシステムインテグレーターであれば、末端の機器についてはサービスが提供できない。

それぞれのレイヤーにおいて標準化を行うことで、それぞれの企業において、いろいろな企業の持つ技術との連携が容易になり、各社は自社の付加価値を全体的に高めることに集中でき、全体としてサービスを優位に提供することができる。ドイツが、中小企業を連携させるために国を挙げて取り組んでいるのはこのためだ。

IoTのSaaSやPasS、IaaSといった概念は、製造業でIndustry4.0を目指すときには重要になる。これを意識せずに個別の仕組みを作ってしまっては、あるレイヤーのサービスを丸ごと取り替えたり、他システムの同レイヤーとシステム連携する際の障害となってしまう。

このモデルは今後、どのような方向に広がっていくのであろうか。ここでは、三つの動きを押さえておく必要がある。一つは「one
M2M(世界主要7標準化団体)」「Thread
Group(Googleなど)」に代表される“グローバルでの標準化”の動きだ。また、「MQTT(IBM)」「CSRmesh(イギリスCSR)」のように、“デファクトスタンダード”を目指す動きもある。

これらの動きに連動して全ての領域のサービスを提供できる企業がいないことや、ドイツのIndustry4.0をはじめとする“政府による標準化の要請”もあり、各企業内や企業間での標準化は進み、各企業の提供サービスのすみ分けは進んでいくというのが三つめの動きだ。

ここで一つ注意しなければならないのが、日本型と欧米型の考え方の違いだ。欧州では製造業など産業をベースにIndustry4.0やIoTが進展している。逆に日本では社会インフラをベースにIoTが進んでいることが分かる。「スマートエネルギー」「スマートシティ」「スマートモビリティ」などに代表される「スマート○○」だ。

どちらが優れているとは一概にいえないが、「スマート○○」の利点として、実利的だということだ。プロジェクトを進めていくに当たって成果が見えやすいので、各プレイヤーがまとまって課題解決にまい進しやすい。逆に問題点は、個々のプロジェクトに依存して固有の制約が多く、標準化・モジュール化が進まなかったり、他組織・企業との連携がしにくくなることだ。デファクトスタンダードを取り、ビジネスを拡大していくという、これまでの欧米のスタイルに後れを取らないようにしていくべきだ。

日本と欧米との違いに注視し、プロジェクトを進行するには、国際標準という視点が重要だ。国際標準に沿っているかどうかで、その拡張の容易性や費用面での優位性が発揮できる。

これまでの日本の強みは個々の要素技術や現場における改善力であるが、IoTなど標準を企画する動きやプラットフォームを握る動きなどは弱い。日本全体が世界に伍していくためにも政策としてこの点をしっかり押さえていく必要があると考えている。

山田太郎(やまだ・たろう)

参議院議員
慶大経済卒、早大院博士課程単位取得。外資系コンサルティング会社を経て製造業専門のコンサルティング会社を創業、3年半で東証マザーズに上場。東工大特任教授、早大客員准教授、東大非常勤講師、清華大講師など歴任。これまでの経験を生かしステーツマン(政治家)として活躍中。

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