不連続戦線に異状なし 黒川想介 (20)

課題解決営業と称して、顧客の課題を何とか引き出して、そこにテーマを見つけようとする営業が流行ったことがあった。現在でもその名残りが散見される。いきなり、課題はありませんかと聞く営業マンはいないと思うが、もしそのような聞き方をする営業がいたら、はなはだ顧客を愚弄していることになる。課題とは、不安からくるものとチャレンジからくるものがある。人は必ず、どちらかの課題は持っているものである。企業という法人もまた常にどちらかの課題を持っている。そして何とかしようと苦心している。そこに、何か悩み苦しんでいることがあったら教えて下さいと聞くようなものであるから、それほど親しくない見込み客に対しては失礼なことと言えるのである。

同じような営業で、ご提案営業というものがある。これは顧客の課題を見つけるというよりも、営業側の言い分の方が強い営業である。この商品を採用していただければ、次のようなメリットがあります、と言ってメリットを羅列することや、次のような使い方ができます、と言ってアプリケーション例を羅列することである。課題解決営業もご提案営業も、顧客のためにやる究極の営業であって、単なる商品の売り込みとは違うと思ってやってきたが、今では少しズレているようである。

かつて80年代から90年代の初めにかけて、これらの営業が流行った頃にはエンドユーザーの工程の自動化が進化した時期だった。一方、部品やコンポ機器メーカーでは自動化の進化に伴う商品の開発が行われ、開発の趣旨やそれによって考えられる使い方を情報としてエンドユーザーに届けていた。こうした背景から、ご提案営業が生まれたのである。そして、そのご提案によってエンドユーザーの進化していく自動化ラインの課題が解決されることがたびたびあったために、ご提案や課題解決の営業と言われ出したのである。その頃のご提案営業がうまくいっていたのは営業側にも要因があった。

70年代のエンドユーザーでは、自動化を推進していく上で部品やコンポ機器の情報が欲しかった。そのため技術者と営業は毎日のように打ち合わせを重ねていた。その折に、営業はものづくりの現場によく足を運んでいた。だから営業はものづくりの現場がどのようになっているのかをよく目にしていた。その上クレームが現在に比べると多くあり、そのたびに現場に入って技術の相談相手になっていた。つまり、営業は知らず知らずにエンドユーザーの現場の工程を知るようになっていたのである。その結果、新しい部品やコンポ機器ができたので、営業は他の顧客に自然と横展開をしていた。

80年代から90年初めにかけて流行った課題解決営業や提案営業は、ものづくりの現場を知っていた営業が顧客の課題を見つけて、それに合った商品を勧めていたことから根付いたものであったのだ。したがって何か課題がありますかと顧客に聞いたり、間接情報で学んだ使い方やメリットを強調する営業とは少し違うものであった。現在、日本国内企業の設備はマクロ的に見れば設備過剰の時代である。ということは、すべて一律にどの企業もと言うわけではないが、過剰設備の減価償却コストが重くのしかかっていることになる。その中で課題解決営業やご提案営業というものを推進していくなら、70年代のように顧客のことをもっと知って、行うべきである。机上で学んだ売り方では、どうしても売りたい欲の方が顧客の課題を無視してしまうので十分注意が必要だ。
(次回は5月13日付掲載)

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