トップランナーモータ 4月から新制度スタート 国際的に規制強化、今後の動向にも注目

今年4月から産業用モータのトップランナー制度が日本でもスタートする。電力消費全体における産業用モータの割合が高いだけに、省エネ効果への期待は高い。国際的にモータの省エネ規制が強まっているだけに、日本もこの流れに対応していくことになる。素材価格や為替の動向なども絡むことから、今後の動向が注目される。

モータのトップランナー規制は、国内で使われる産業用モータの省エネ化を目的としており、主に「定格電圧が1000V以下」「定格出力が0・75kW~375kW」「商用電源で使用する」などのモータが対象となる。

国内で消費される電力の約55%は産業用のモータと言われ、主にポンプ、圧縮機、送風機用などのモータとして使用されている。

産業部門だけでみると、モータが消費電力量の約75%を占めている。

経済産業省によると、今回の規制による省エネ効果で、国内電力消費量の1・5%の削減が見込まれている。

■IE5の規格化も予定
モータの効率クラスは、IECやJISで規定され、IE1(標準効率)、IE2(高効率)、IE3(プレミアム効率)が各国で普及しており、IE4(スーパープレミアム効率)が実用段階にある。今後IE5(ウルトラプレミアム効率)も規格化される予定だ。

現在、国内で使用されているモータの多くがIE1レベル相当であるが、4月以降はIE3レベル相当のモータの使用が義務づけられ、現在稼働しているモータと、全く同じ製品の製造・販売ができなくなる。

モータの効率規制は国際的に進展しているが、特に米国は、1997年頃からIE2レベル相当で規制が開始され、10年からはIE3レベル相当に引き上げられている。

日本電機工業会(JEMA)の資料によると、IE3レベル相当のモータとIE1レベル相当とを比較すると、約35%の損失低減効果が見込めるという。トップランナー化で国内のモータがすべてIE3に置き換えられたとすると、期待される電力削減量は我が国の全消費電力量の約1・5%に相当する年間155億kWになると試算されており、極めて大きな省エネ効果を見込めることになる。

現在、日本メーカーはIE4、IE5対応のモータ開発を進めている。

アモルファス金属を採用して高効率化を図るとともに、レアアース(ネオジウム)の使用量をゼロにすることで、従来の課題であった安定供給とコストダウンを両立させている。

■今後の課題はコスト
普及にあたっては、課題も多い。IE3モータ単体で約4割程度価格が上昇(標準効率モータと比較)する見通し。装置メーカにとってはモータ価格の上昇が仕入れコストアップにつながってしまう。しかし、ユーザーにとっては省エネ効果があるため、設備導入コストが上昇しても、省エネによるコストダウンで早期回収が見込める。今後、ユーザー側の理解をさらに深めていく必要がある。なお、今回のモータのトップランナー規制で除外されるモータもある。デルタスター始動方式、舶用モータ、液中モータ、防爆型モータ、ハイスリップモータ、ゲートモータ、キャンドモータなど。

■地球温暖化問題に貢献
2017年頃には、IE3レベル相当のモータの使用が主要先進国では義務付けられることは確実と見られており、地球温暖化問題に大きく貢献することが期待される。

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