不連続線線に異状なし 黒川想介 (10)

業務用産業用部品や機器営業が使う用語の中に、最終ユーザーという用語がよく出てくる。機器や部品を使っているメーカーは、すべてユーザーである。しかし、あえて最終ユーザーと言うのは、機器や部品を購入して製造設備・機器をつくるメーカーと、それらの製造設備・機器を使って物づくりするメーカーを意識的に分けて、前者をセットメーカー、あるいは単なるメーカーと言い、後者を最終ユーザー、あるいはエンドユーザーと言っている。

実際には、部品やコンポとしての機器を扱う営業にとっての最終ユーザーはいくつかに分けられる。(1)家電や電子機器などを使う一般消費者(2)業務用機器を使う法人(3)物づくりをしている製造の現場―の3つくらいに分けられる。

部品やコンポとしての機器の営業がよく使う最終ユーザーという用語は、(3)の物づくりの現場のことを指している。(3)の最終ユーザーには、プロセス監視制御を主とする装置産業型のメーカーがある。原料を加工して原材料をつくっている現場であるから、計装系のプロセス監視制御が多い。そのため計測器を主として扱う営業マンはよく訪問するが、部品や制御コンポを扱う営業マンにとってなじみが薄いメーカーだ。

この他にも、最終ユーザーと言われるメーカーがある。最終製品を組み立てているメーカーと、最終製品をつくるための中間材や部品をつくっているメーカーである。原材料の加工や、加工された部材を組み立てているので加工組み立て産業形態のメーカーである。

加工組み立ての製造工場は、日本の産業が発展するにつれて件数が増え、地方への移転が盛んに行われた。高度成長期には人手不足、品質向上、生産力増強のために機械化、自動化投資を活発に推進してきた。その担い手になったのが、製造現場にいる生産技術や設備技術であった。

加工・組み立て産業の現場には、たくさんの加工・組み立て工程と検査工程がある。成長期には、生産技術者や設備技術者が物づくりにおける機械化、自動制御技術を磨いて各工程のオートメーションを推進してきた。その結果として省人化によるコストダウンや、世界でもトップクラスの品質がつくり込まれた。それによって自動車や電子機器産業は日本の花形産業として成長し、メードインジャパンの価値を高めてきた。したがって、物づくりの日本が国際競争力に秀いでていたのは生産に携わる技術者たちが競い合って、品質向上、生産力、生産効率向上に挑戦し、工程の機械化、自動制御化をしつづけてきた結果だということも言える。

加工・組み立て工場では工作機械などの設備を購入するが、専用の加工収具や組み立て機、あるいは工程間のつなぎ装置や検査治具装置などを工場内で生産技術部門が内作することが多かった。このため、現場にいる生産技術者は貪欲に電機部門や制御コンポ、計測機器の新商品情報を欲しがった。部品や機器メーカーは、生産技術者の貪欲ぶりに歩調を合わせて新商品を次々とアピールした。加工・組み立て工場が持ち込み展示会を歓迎したのは、そんな背景があったからである。

現在では、国内工場の物づくり現場では自動制御化は一巡してリニューアルを待っている状態であることから、生産技術者は少なくなってメンテなどの設備保全作業に追われている。したがって仕事の内容も、成長期のような貪欲ぶりはなくなりつつある。しかし日本の物づくり復活には生産技術者の新しい挑戦が不可欠である。多種少量生産の低コスト化や電力使用の半減生産などで従来の概念にとらわれないことが重要になる。
(次回は12月3日付掲載)

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