注目集めるステッピングモータシステム

2014年7月23日

1.クローズドループステッピングサーボとは

近年、サーボ制御のステッピングモータシステムが注目されている。背景には、従来ステッピングモータが抱えていたネガティブな問題が、このシステムによって改善が可能となり、ACサーボに近い性能を持つことができるようになったからである。

装置のコストダウン化の要請に伴い、低価格で手軽なサーボシステムとしての魅力が出てきた。しかも応用によっては、ACサーボの不得意な低回転領域で大きなトルクが出せる機能など、もともとステッピングモータが持っている長所が注目されてきた。

2.融合技術

“図1は、ステッピングモータとサーボモータ、およびその中間に属する融合技術の概念図である。この領域では、モータはステッピングモータを使い、ドライブ技術を工夫することにより、ACサーボに近い性能を発揮することができる比較的新しい制御技術である。

この融合技術にはいくつかの制御方法がある。代表的なものは、マイクロステップ制御を使いながら、脱調(負荷の変動等によりモータが共振したり停止したりする現象)検知により、脱調を防止する方法と、高度なACサーボで使われているベクトル制御技術を使った方法があり、それぞれ各社から特徴のある製品が発売されている。

マイクロステップを使った制御システムは、従来技術の延長上にある技術であり、1ステップ(2相の場合1.8度)を多分割制御して滑らかに回転し、脱調しないように制御されることから、停止時間が早い、(ACサーボのようにハンチングしない)、停止トルクが大きいなど、ステッピングモータが持つ有利な性能が発揮される。しかしながら、モータに常に通電されることから、発熱が多く省エネ性にはやや課題が残る。これに対し、ベクトル制御技術を使ったシステムは、あらかじめモータの特性をデータベース化し、回転に際しては、超高速演算が可能なCPUを使い、理想的な電流値をモータに流す。実際に流れた電流の検知フィードバック制御をする。この連続動作を高速に行うことにより、ACサーボに近い性能が発揮できる。位置決め、速度制御、押し圧制御、トルク制御などの他、低速から高速にわたる滑らかな回転、瞬時トルクが定格の1.5倍程度出すことができるなど、多くの優れた性能が発揮できるようになった。”

3.ベクトル制御型サーボシステム「ST-Servo」

ST―Servo(写真1)で特筆すべきはその優れた環境性能だ。マイクロステップ方式の融合技術では、常時通電しているために発熱が著しいが、ST-Servoの常時クローズドループ制御では、起動、減速時など負荷に応じた電流が流れるが、負荷が軽い場合は極めて低い電流しか流れない。しかも高速の電流制御により、モータに流れる電流は無駄がない。その結果、電力損失がきわめて少なく、発熱も少ないという特徴を持つ。ステッピングモータ特有のピーピーという甲高い音もなく、低速から高速まで極めて静かに回転する。低発熱、低振動、低騒音、結果的に省エネ性能に優れているシステムと言える。

4.3つの位置制御モード

“ST-Servoは3つの位置制御モードを持つことにより、顧客のアプリケーションに最適な位置制御が選択可能になっている。

(1)フルタイムクローズドループモード

常時クローズドループ制御を行うため、ACサーボの位置決めと同等の制御を行う。

負荷に応じた電流を流すため低発熱。

(2)クローズドループとオープン制御の併用モード

オープンとクローズドループを設定速度により切り替えが可能。停止時にサーボ制御による振動をとりたい場合、小ピッチ送りでタクトタイムを早くしたい場合に有効。

(3)フルタイムオープン制御モード

マイクロステップ駆動となり、速度、トルク制御と組み合わせ、停止時にステッピングモータが持つホールディングトルクによる保持を行いたいときに有効。”

5.速度・トルク・押し当て制御の協調動作

“位置制御・速度・トルク・押し当ての各制御は単独での動作の他に、他のモードに停止することなく瞬時に切り替えることができる。

ある位置まで位置制御で移動し、その位置に達した後に押し当て制御やトルク制御に移ることができることで新たな応用が考えられる。速度制御では、10rpmというような低回転でも、低振動かつ非常に滑らかに回転することが可能になり、ステッピングモータの低速領域での高いトルク特性を利用して、ACサーボでは減速ギアが必要な場合でもST-Servoを使うことで減速ギアが不要になることもある。

速度やトルクモードでは、速度指令やトルク制限指令を内部のデジタル値の他、外部アナログ入力でも可能になっている。”

6.ST-Servoの機種

ST-Servoには3つの機種が用意されている。パルス列入力型BSL、ネットワーク対応型NTL、モータドライバ一体型CMB、パラメータ設定は、PCから専用アプリを使用して入力する。

7.低発熱モード、高速回転モード

装置への応用として、3000回転以上の高速回転域まである程度トルクが欲しい場合、それよりも低発熱、省エネ特性が欲しい場合がある。ST-Servoは高速モードと低発熱モードを設定できる。

8.モータのサイズとトルク特性

モータサイズは□25、□28、□42、□56があり、□20、□82も近く発売予定している。

9.微細ネジ締め電動ドライバーへの応用

“ST-Servoは微妙なトルクを制御できる。写真2は、スマートフォンなどに使われる微細ネジを、正確にトルク制御を可能にした微細ネジ締めドライバーである。AC-Servoモータを使った製品は、低速での制御のためモータとドライバービットの間に減速ギアを使う必要があったが、本製品では、ステッピングモータのシャフトに直接ドライバービットを取り付けており、バックラッシュなどの影響がないため、ネジ締めトルクのバラつきを従来製品より少なくすることができた。

更に製品が小型軽量化できたことにより、ネジ締めロボットの可搬重量が有利になっている。ネジ締め経過中のトルクの変化をトレースすることができるなど特徴のある製品になっている。”

10.今後の応用

“ST-Servoを活用して様々な応用技術を開発していくことができそうだ。低速域での低振動・高トルク特性を生かして、液体用ポンプ・搬送用コンベアの応用が考えられる。また、トルク制御機能を利用して、巻線やフィルムなどを巻く張力制御にも挑戦したい。
(筆者=株式会社バンガードシステムズ
代表取締役 池野成雄氏)”