産業用LED照明 省エネ・節電効果と調光機能で市場拡大

高輝度で信頼性が高く長寿命という特徴を持つ産業用LED照明は、調光制御が可能なことから、工場やビル、店舗用など幅広い分野で採用が増えている。メンテナンスフリー、小型・薄型化などの特徴も、装置や機械の内部照明用として使用が進んでいる。植物育成分野や医療施設などでの利用も拡大している。LEDの演色性の改良やさらなる発光効率の向上などが進んで、快適性や安全性など付加価値につながっている。

LED照明は、高輝度・長寿命・高信頼性・低消費電力・低発熱性・耐衝撃性、小型・点光源、瞬間点灯、環境に優しいなど多くの特徴を持つことから、現在では家庭用から産業用まで幅広い分野で使用されている。

LED照明器具の国内市場は、節電・省エネニーズを背景にここ数年、急速に拡大している。日本照明工業会による全LED照明器具の2012年度(12年4月~13年3月)の出荷金額は、3047億円で、前年比92・6%増と約2倍の伸びを示しており、産業用LED照明も同様の伸びを示しているものと見られる。

LED照明の輝度については、産業用の製品では高出力デバイスと光学技術、マイクロアロイレンズの採用などにより、輝度で2100ルクス、光束で1万5700ルーメンという高輝度を実現している。

LEDの想定寿命も現在は、照度70%期において6万時間とされており、非常に長い。これにより、一度設置すれば電球交換など保守の手間が省け、部品や器具の購入コストが削減できるなどの利点がある。低消費電力・低発熱性であることで、発光効率が高く、少ない電力で従来の白熱照明と同じ明るさが可能だ。

■使用電力量約60%削減

工場用の天井照明では、従来の水銀灯に比べ、使用電力が約60%削減できるなど高い省エネルギー性を実現している。さらに調光機能を取り付けることで、さらなる省エネ化が可能となる。

日本電球工業会によると、LED照明の使用電力は蛍光灯の約2分の1、白熱電球の約8分の1としており、CO2削減にもつながっている。

さらに、真空やフィラメントを必要としない構造のため、従来の照明機器より衝撃に強く、しかも、ほぼ点光源であり発光部が小さいことから、設置空間が小さくでき、デザインも工夫しやすい。

その他、熱慣性がほとんどないLED照明は、供給電源が断続すればそれに応じ高速で明滅し、有害な水銀が不使用で環境にも優しく、赤紫外線を出さないので虫が寄ってこない、蛍光灯のようなノイズ源がないので電子機器への影響もない、などの利点がある。

LED市場が拡大したことで量産化が進み、リーズナブルな価格になっている。

産業分野では、LED照明を導入することで、省エネ・節電効果が得られる上、調光などの制御が可能なこともあり、工場や事務所での採用が拡大している。さらに、小型化や薄型化を図ることで、装置や機械、制御盤・配電盤の内部用の照明としての用途も増えている。

産業用LED照明メーカーでは、高輝度LEDデバイスとレンズの採用、さらにリフレクタによる光学設計や高効率な電源設計などで、より高輝度化や、省エネルギーと長寿命によるメンテナンスフリーの進展、省スペース、演色性の向上などの開発を進めており、特徴のある各種の産業用LED照明が続々と発売されている。

■マイナス40℃でも即時フル点灯

標準タイプの産業用LED照明は、オフィスや工場、店舗用などで幅広く採用されているが、マイナス40℃の環境でも即時フル点灯が可能なタイプは、低温倉庫などの低温場所用照明として使用されている。

さらに、水や油、切削屑が飛び交う工作機械や食品加工機械・設備など、厳しい環境下での機械内部照明用として活躍する産業用LED照明は、保護特性IP66G、IP67G、IP69Kという高い保護特性を保持しており、防水・防塵・耐油・高耐食性を備えた高機能な産業用LED照明の市場も形成されている。

また、小型・薄型で軽量という携帯用のハンディタイプは、機械や装置、制御盤や配電盤内のほか、自動車や車両の駆動部分を検査する場合などに使用され、重宝がられている。照明器具の裏側に磁石を取り付けたタイプは、作業員が見たい場所に磁石で貼り付けることで手が自由になり、作業性向上につながっている。サイズも、本体長さ100ミリぐらいのミニサイズから、300ミリ前後のロングサイズなどがあり、従来品では設置が難しかった超小型機械から大型機械まで対応できる。

高さを25ミリに抑えた超薄型タイプや、機内が見やすいように約120度という広角配光タイプ、カスタムでは50度より狭い視野角や片側偏芯レンズ、拡散型のレンズタイプなどもある。

人間の目への配慮も進んでいる。独自の面発光技術を駆使し、蛍光灯に類似した均一な昼白色の高輝度配光を実現したタイプは、LED特有の眩しさをカットし目に優しく疲れにくい。

検査用のLED照明は、蛍光灯のようなチラつきがなく、検査対象物に均一の光を照射し、凸凹など傷のコントラストを作ることで、より確実な目視検査を実現している。さらに、塗装工場など水素やアセチレンガスを含むゾーン1/2の危険場所でも使用可能な、耐圧防爆構造LED照明も増えている。

画像処理用LED照明としては、LED照明のほか、照明用電源やセンシング照明、フィードバック電源、照明モニタリングセンサ、アクセサリ類まで幅広くラインアップしている。

■植物育成用として需要広がる

その他、植物工場など室内での植物育成用としても需要が拡大している。植物の育成にはLEDの単波長特性が適するとされており、最近では、産官学の連携事業として、大学などで専門的な植物工場が多数建設されている。植物工場から品質の高い野菜や果物を、一般市場に大量に供給できる研究や開発が進んでおり、今後の成果が期待される。

植物工場以外でも、消費燃料が軽減できるイカ漁などの集魚灯分野や、紫外線や赤外線による劣化を避けたい美術品や伝統工芸品などの展示品照明用、さらにLED照明はノイズを放射しない利点を利用した、医療施設や半導体工場向け、歯科治療用光硬化樹脂の照射光源、商業施設などでの映像表示を兼ねた映像ライティングなど、様々な分野で需要が拡大している。

新機軸のLED照明として、小型で高度な表現力が求められるモバイル機器やアミューズメント機器向けに、表現力のアップに欠かせない高混色性を実現した、リフレクタ付き3色発光チップLEDなどが開発されている。

超精細でありながら、高輝度でのLEDマトリクス生成を可能としており、モバイル機器やアミューズメント機器などでの表現力向上につながるものとして期待されている。

LED照明は今後、高演色性やさらなる発光効率・節電効果のアップ、長寿命化、低価格化などが進むとともに、デジタル制御が可能なことで、快適性や安全性のさらなる向上が見込まれている。

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