サービス/サポート体制重要に各社、グローバル市場にらみ構築 1台のパソコンで制御から処理までワンボックス化加速

最重要視される信頼性

産業(FA)用コンピュータ・コントローラには様々な機能が要求されるが、中でも最重視されるのが信頼性である。メモリーエラーの検出・訂正などが可能なECCメモリー機能、ハードウェア内部を監視するRAS機能、ハードディスクの片側で、健全時とは異なる動きを検出した時にそのハードディスクを切り離すホットスワップ対応ミラーリングディスク機能などがほとんどの製品に搭載されてきている。

さらに、コピー防止機能の要望も多くなっている。特に受託開発の分野では、技術が外に流出することを防ぐために、ハードとソフト両面からコピー防止対策を行うケースが増えている。

そのほか、24時間連続的に稼働する厳しい用途では、「いかにダウンタイムを減らせるか」も大きな開発テーマになっている。

最近の産業(FA)用コンピュータ・コントローラのOSはWindowsが多いが、Linuxやリアルタイム制御に対応したOSも使用されている。この背景には、PLC(プログラマブルコントローラ)では対応できない処理領域、例えばプロセス処理用の学術計算や高級言語によるプログラミングなどを実現するため、制御部分はリアルタイムOS上による処理、制御以外の部分は通常のWindows
OS側による処理を行うなど、1台のPCで制御から処理までを行っている。以前はWindows
OSとリアルタイムOSを同時に走らせるということは非常に困難であったが、近年はコンピュータの高性能化により、簡単に実現できるようになった。

このようなワンボックス化を実現することで、従来は現場にあった複数台のパソコンや周辺装置、及びそれらを連携する通信部分をコンパクトに集約することを可能にしている。最近は、1台のパソコンで操作から制御までを実現するシステムも登場、高効率でより高速のマシン制御が可能になっている。こうしたシステムは、GUIから制御まで対応でき、装置の小型化や処理能力の向上、保守部品・運用コストの低減など、様々なメリットを生み出している。
パネコンのHMI用途化

一方、日本を含むアジア市場では、計装におけるPLCの占める割合が高く、I/O周りの制御や接点の設定などはPLCで処理することが多い。日本国内では、複雑な制御を必要としない装置であれば、PLCの位置付けはそう簡単に変わらないものと思われるが、こうした海外での動きを受け、国内でも超高速フィールドネットワークなどに接続することで、高効率でより高速なマシン制御を可能にするような取り組みも活発化している。

一方、産業(FA)用コンピュータ・コントローラが、HMI端末や生産ラインの情報収集端末として使用される用途では、コンパクトな筐体、ファンレス対応、低コスト化など、組み込みに適した仕様が進んでいる。上位サーバからの製造指示を確認し、それに基づく作業内容をPLCや温度調節計などの各種コントローラに指示し、その結果を収集する場合などが当てはまる。こうした場合、端末で複雑なデータ処理をすることは少なく、高速のCPUスペックを要求するケースも少ない。

さらに、信頼性向上への要求は強く、寿命部品を減らすためのファンレス対応や、Windows
XP
EmbeddedによるHDDトラブル回避、バッテリユニットによる瞬停対策などが進んでいる。

産業(FA)用コンピュータ・コントローラのうち、パネコン(タッチパネルコンピュータ)では、HMI端末であるプログラマブル表示器から移行して使用するケースが増えている。この背景のひとつに、従来計装技術を担ってきたラダープログラム世代が少なくなってきたことで、再利用性の高いC言語などの高級言語(HLL)への世代交代が進んできたことが挙げられる。
汎用アーキテクチャを選択

装置メーカーは、他社との差異化を図るための独自技術として、汎用アーキテクチャを選択するケースが増えている。GUI構築などについては、HMIソフトウェアなどを導入し、画面の見栄えや、PDFなどのドキュメント閲覧機能、リモートモニタ機能などを構築することで、アプリケーションとしての付加価値を高めている。しかし、ローエンドレンジでは、パネコンよりPDなどを使用するケースが多く、専用のPDと汎用のパネルコンピュータとの間でHMIアプリケーション資産をどのように流用できるかが、プログラミング工数上の課題となっている。
汎用パソコンと差異化

今後、産業(FA)用コンピュータ・コントローラは、汎用パソコンとの違いを強調しながら、国内市場での新たな用途開拓と、市場拡大が確実に見込める海外市場へのアプローチが大きなポイントになってくる。国内では汎用パソコンの領域を、稼働の信頼性、長期間の安定供給サポートをポイントにして開拓を進めることで、汎用パソコンとの差異化を図り、付加価値を高めた販売につながる。海外メーカーとの販売競争も激しくなってきており、用途ごとに最適な機種選択提案ができるような対応も重要になってくる。

海外市場開拓は、海外メーカーや地場のローカルメーカーとの競合になるため、価格に加え、サポート体制が重要になってくる。メンテナンスサポートでも、代替機種を現地に在庫して、代替機種交換にも応じられるような体制も必要になる。

産業(FA)用コンピュータ・コントローラは、工場以外の分野にも用途を広げつつあることで、産業空洞化の影響を避けながら、公共投資や省エネ投資などの拡大を追い風にした市場拡大の可能性を増やしている。IT技術があらゆる面に浸透するなかで、情報化社会全体を支える産業(FA)用コンピュータ・コントローラの飛躍の可能性はますます高まっていると言えそうだ。

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