照光式スイッチ堅調な動き 自動車、エネルギー関連やアミューズメント向けが好調 LED化で視認性が向上小型・薄型化さらに進展 有機ELや液晶新光源の採用も浸透

照光式スイッチ市場が堅調な動きで推移している。自動車、エネルギー関連向けや、アミューズメント関連を中心に需要が拡大している。照光式スイッチのポイントとも言える光源部分は、LED化と高輝度化によって年々視認性が向上しており、加えて小型・薄型化も進んでいる。有機ELや液晶などの新しい光源の採用も浸透しつつあり、新たなアプリケーションの開拓につながっている。
操作と表示機能を一体化した照光式スイッチは、スペースの有効活用と視認性のしやすさを大きなメリットに、操作用スイッチで大きな役割を果たしている。

日本電気制御機器工業会(NECA)の出荷統計によると、2011年度の照光式を含む操作用スイッチの出荷額は349億円で前年度比98%と横ばいとなっているが、12年度は上期が191億円で同109・8%と2桁に近い伸びを示している。国内では震災復興関連、新エネルギー関連、アミューズメント関連が好調となっている。
照光式スイッチの主要市場は、開閉制御装置・開閉機器、工作機械、食品機械、運搬機械、半導体製造装置、アミューズメント機器、ロボット、計測機器、事務機器などが挙げられるが、中でも工作機械向けは大きな市場だ。工作機械の12年生産は前年比若干減少となったが、依然大きな市場を形成している。タッチパネルスイッチや、プログラマブル表示器などへの置き換えが進んでいるものの、依然照光式スイッチの使用数は多い。

主力市場である半導体・液晶製造装置は、昨年は出荷が低迷したことで大きな影響を受けている。しかし、ここ数年需要が停滞していたアミューズメント市場は、パチスロ機を中心に需要が増加に転じており、久しぶりに活況を呈している。

大震災以降のエネルギー問題や省エネ対策関連での市場が急速な需要増加傾向を見せている。スマートグリッドやスマートマンション、再生可能エネルギー関連といった、電気の有効的な活用に向けた投資が大きな波及効果を生み出している。

昨年7月からの電力買い取り制度のスタートもあって、メガソーラーや家庭用のソーラー発電への投資が継続している。太陽光発電や風力などの新エネルギー関連は、電力変換用のパワーコンディショナーや受配電機器などで照光式スイッチが多く使用される。さらには、原発を補うための発電投資が継続して進められていることで、受配電盤向けも需要が伸びている。

EV(電気自動車)やHEV(ハイブリッド自動車)などの普及に伴う充電スタンド周辺でも需要が生まれている。

鉄道車両や鉄道制御システムといった鉄道インフラ関連向けも、照光式スイッチをはじめとした操作用スイッチの需要を支えている。鉄道車両のドアや運転席周り、車内情報表示系統、券売機、自動改札、プラットフォームなど多岐にわたる。最近の電車の運転席は、タッチパネルモニターが増えているものの、依然照光式スイッチなどの操作用スイッチも併用されて、運転情報を制御している。ドアや座席にも照光式スイッチがついており、ドア開閉や座席管理などで視認性を高めている。鉄道車両のスイッチは、信頼性に加えデザイン性、操作性などがポイントとなっている。車両にマッチしながらも、誰が操作しても確実に機能を果たすスイッチが選択の基準として重視されている。

放送・映像・通信関連機器向けも照光式スイッチの大きな市場である。放送・映像機器は、頻繁な操作が行われることから操作性が非常に重視される。機器に応じた最適な操作感を実現するためにスイッチメーカー各社は、技術的な面でのアピールができる分野の一つとして注力している。照光式スイッチに求められる操作感触、視認性、耐久性など、あらゆるニーズが集約されていることで、スイッチメーカーにとって技術の蓄積にもつながり、この分野向けを意識した開発を積極的に進めているところが多い。
照光式スイッチの光源は、現在はLEDが主流となっており、以前使用されていた白熱球、ネオン球などはほぼなくなりつつある。これに代わって最近はLCDや有機ELなども使われてきている。

主流として使用されているLEDは、白熱球より高輝度化が進んだことで急速に採用が増えた。特に青色の高輝度化によって、カラーのバリエーション拡大につながり、白熱球からの置き換えが進んだ。LED本来の特徴である長寿命、低消費電力、低発熱、省メンテナンスなどが加わり、光源としての評価が不変のものになりつつある。このところの省エネ・節電対応の高まりもあり、すべての光源がLEDに置き換えられつつある。

光源のLED化は、スイッチの薄型化にも大きな影響を与えている。白熱球光源に比べ小型であることで実装スペースを大幅に削減でき、照光式スイッチの薄型化を飛躍的に進めた。現在スイッチ各社は、こうした薄型の照光式スイッチをラインアップに加えている。

ベゼルの高さが1・8ミリの薄型・フラット構造の操作用スイッチも登場している。パネル全体がシャープで引き締まったデザインになることに加え、凹凸の少ない操作パネル面は食品機械や半導体製造装置で求められるゴミや埃の付着を防ぐことになる。操作スイッチの表面突起が低いことで、誤操作などを防ぐ利点↘↘もある。デザインだけでなく、スイッチ装着の安全対策や配線作業の省力化と誤作業防止の工夫もなされており、一層使いやすさをアピールしている。

デザイン性という点では、操作用スイッチのフランジにステンレスを採用することで金属質感を出し、より高級感を演出するスイッチもある。紫外線などからの耐候性も高い。表面だけでなくパネル奥行きも短胴化が進展しており、制御盤の小型化・薄型化にもつながっている。

光源のLED化は照光式スイッチの表示色のカラフル化につながっているが、単色のLEDでも表示プレートへの加工で赤と緑を切り替えた表示が可能になるスイッチも発売されている。
LED光源が主流の中で、新しい光源として市場で注目されているのが有機ELである。有機ELを光源に、表示部に画像やメッセージなどを表示させ、しかも1つの表示面で何種類にも切り替えて表示できることにより、限られたスペースで多様な情報を提供するスイッチとして使える。有機ELの持つきめ細かな表示は、テレビのような表示画面を実現でき、通信機能を搭載することで画面の変更も容易に行えるなど、新たなアプリケーション開拓も考えられ、今後のスイッチ市場の可能性を探るスイッチとして注目される。有機ELは照明やテレビなどでも実用化が取り組まれており、今後量産化が進めば、コスト面でも優位性を発揮できそうだ。

有機ELだけでなく、液晶などを使ったこうしたインテリジェントスイッチは今後の照光式スイッチ市場拡大の可能性を担うものと見られる。
一方、操作用スイッチの配線でも新しい方法が出てきた。配線時のはんだ作業をなくして、環境負荷低減と配線作業の短縮を実現できるもの。スイッチのユニット部分の端子ホルダー穴に電線を挿入し、平行プライヤーで端子を圧接するだけで結線ができるもの。配線時に、はんだやそのための電気が不要で、被覆廃棄物も発生しないなど、環境に優しい結線が可能になる。電線被覆を剥かないため、配線作業時間を半減化できる。しかも、はんだ不使用のため、はんだポールおよび、ひげショートなどの発生の心配もなく、はんだ状態の認定作業員も不要になるなどの特徴を有している。
市場での棲み分け進む

照光式スイッチを含めた操作用スイッチは、プログラマブル表示器やタッチパネルとの市場での棲み分けへの関心が、スイッチメーカー、ユーザーで高まっている。それぞれに特徴があり、選択権はエンドユーザーやセットメーカーに委ねられるものの、使用場所によっては照光式スイッチが優位性を発揮するところも多い。わかりやすい操作性(誤操作などの防止)、水や埃、薬品などの耐環境性、堅牢性などでは照光式スイッチの特徴を生かしやすいといえる。比較的こうした技術は日本メーカーが得意とするところであるが、最近は海外メーカーもニッチ市場をターゲットにして開拓を進めて、一定のシェアを獲得している。

今後はコストをポイントに、アジアのメーカーとの競合も生じてくるものと思われる。このため生産のグローバル化対応で競争力を確保する一方、品ぞろえの見直し、アライアンスの強化、生産拠点の再編などの取り組みを強めている。しかし、電気機器の入り口部分を担う役割は不変であるだけに、堅調な市場が継続していくことは確実と言える。

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