石油化学プラントから工事現場まで導入進む防爆関連機器 リニューアル需要に加え新規需要増える 市場のグローバル化に対応国際防爆指針の検定増加 IT技術が浸透

2012年12月19日

防爆関連機器は、石油化学プラントを中心に、食品・薬品・医薬品などの3品分野、さらにエネルギー、半導体製造装置分野など、爆発危険領域の安全確保の観点から導入が進んでいる。近年では、プラントや施設の老朽化などに伴い、リニューアル需要に加え新規需要も増えている。FA分野における防爆関連製品は、コントロールボックス、バリアリレー、照明、表示器、バーコードリーダー、各種センサ、無線機器、グリップスイッチ、ケーブルグランドなどに加え、最近ではWebカメラやデジタルカメラなどが加わっている。防爆規格に関しては、2010年に厚生労働省がIEC規格に基づく技術的基準を廃止し、国際防爆指針を適合したことで、防爆機器メーカーでは国際防爆指針の検定を取り入れるケースが増えている。石油精製プラントや化学プラント、LNG基地、石油・天然ガスの備蓄・貯蔵場所、塗装工場、火力発電所、トンネル掘削工事現場などの爆発危険場所では、可燃性ガスや引火性液体などを使用することから、爆発の要因となる電気機械器具使用について、法律で定められた防爆構造の機器を使用することが義務付けられている。

最近は、プラントなどを管理・保守する熟練者が、定年退職などで年々減少傾向となっており、管理・保守業務を外部に委託するケースも増えている。このようなことから設備の状況を社内で把握していないケースも多く、設備が老朽化した現場ではトラブルや爆発事故につながっている。こうしたことを背景に、安全対策、安全確保の観点から防爆関連機器に対する関心が高まり市場拡大につながっている。

防爆機器には様々な規格があるが国内の動きでは、厚生労働省が防爆構造規格に関して、10年に「防爆性能基準」と「型式取り扱い」の通達を出した。さらに、88年以来IEC規格基準として「技術的基準」があったが、10年の通達で廃止され、同日付けで「国際防爆指針」に適合するものが構造規格に適合するとして扱われるようになった。

■6月に欧州防爆指令適合品

防爆性能基準の内容は「電気機械器具防爆構造規格における可燃性ガス、または引火性の物の蒸気に係る防爆構造の規格に適合する電気機械器具と同等以上の防爆性能を有するものの基準等について」で、型式取り扱いの通達内容は「防爆構造電気機械器具の型式の取り扱いについて」である。この通達により、防爆機器メーカーでは市場のグローバル化に対応するため、国際防爆指針の検定を増やす傾向になっている。この動きに呼応し今年6月には国内で初めて、欧州防爆指令(ATEX指令)に適合した耐圧・安全増防爆構造のコントロールボックスが発売されている。

一方、防爆構造基準に関しては、「電気機械器具防爆構造規格」と「国際規格(IEC規格)」の2つの体系が実質的に存在しており、10年の通達内容では防爆構造規格は1つとされているが、規定の規格に適合しない電気機械器具についても、IEC規格準拠の物は適合すると見なしている。また、10年の厚生労働省の通達により、IEC規格の整合性に伴い、曖昧な型式ごとの文面が明確にされた。

クリーニング業者が建築基準法により住宅商業系地域で使用が禁じられている引火性溶剤を同地域で使用していたことが問題になったが、引火性の有機溶剤を用いるドライクリーニング工場は、建築基準法第48条により立地規制があり、住宅系・商業系用途地域での立地が認められていない。こうした動きを受け、関連する防爆機器メーカーでは、クリーニング業界向けへの防爆機器の普及啓発活動を行っている。

防爆関連機器を必要とする危険箇所として、08年3月に労働安全衛生法で「爆発のある濃度に達するおそれに」という文言が追加された。これに伴い、大規模な工場から半導体製造工場や燃料電池関連などの先端事業所、ガソリンスタンド、LNG・LPG充填所、塗装作業所、有機溶剤の取扱所まで、危険物や可燃性物質、高圧ガスなどを取り扱う様々な事業所が法改正の対象となり、防爆関連機器の需要拡大につながっている。また、同法改正により、危険場所の区分が法的にも義務付けられ、既存のプラントも法改正の影響を受けることになった。

このような危険箇所では、爆発事故などを防ぐため電子・電気機器を隔離しなければならない。危険箇所では石油などは常温でも気化し、その蒸気や温度によってはスイッチなどの開閉に伴う微小の電気火花や静電気による火花で引火や爆発の恐れがある。また、最近では、設備の更新遅れや熟練の保守点検要員の退職といった理由から、高圧ガスの製造事業所での事故件数が増加しており、電子・電気機器の防爆対策に対するニーズが急速に高まっている。

■3品業界でも採用活性化

半導体製造関連分野や有機溶剤を取り扱う自動車塗装関連分野などでは、本質安全防爆機器の採用が広がっている。さらに、食品業界や薬品業界といった3品業界でも安全確保の観点から防爆関連機器採用の動きが活発化している。

■FA分野で製品種類拡大

防爆関連製品は、FA制御機器分野、モータ分野、照明分野、計測機器分野の4つに分かれる。このうちFA制御機器分野の市場規模は80億円前後とみられている。

FA制御機器分野の防爆機器は、日本電気制御機器工業会(NECA)が所管する製品が多く、コントロールボックス、バリアリレー、タッチパネル表示器、リミットスイッチ、各種センサ、回転灯、バーコードリーダー、グリップスイッチ、ソケット、パソコン、ケーブルグランドなどが挙げられる。モータなどは日本電機工業会(JEMA)、測定器などは日本電気計測器工業会(JEMIMA)、照明器具は日本照明器具工業会(JLA)などが所管し、各工業会間でも連携し啓発活動などを行っている。

IT機器の普及と防爆製品の需要増を背景に、防爆型の広域アクセスポイントや指向性の遠距離タイプ、無指向性のアクセスポイントなどの製品が次々と開発・発売されているほか、無線LANによる防爆ネットワーク構築や、インターネットに対応する防爆WebカメラやIP電話、さらに防爆型ハブなども発売されている。

新たな防爆技術として「DART」の動向も注目されている。電気回路全体をモニターできるインテリジェントな検出回路を使用することで、危険なスパークを検出すると、その電源をマイクロ秒以内でOFFにし、スパークが誘引されて爆発が起きないように防御する。これまで大容量の電源が必要な機器を危険場所で使用するには制約が多かったが、こうした制約が解消されるほか、接続できる機器数の増加やケーブルが長くできるなどの利点があり、フィールドバス用電源などが製品化されている。

■耐圧防爆など様々な方式

防爆方式には、「耐圧防爆」「内圧防爆」「安全増防爆構造」「本質安全防爆」「油入り防爆構造」などがある。

「耐圧防爆」は着火源を頑丈な箱で被い、電気火花により着火した火炎や高温ガスを箱の外に出さない方法で、内部で点火爆発しても外部に悪影響を与えない構造となっている。容器は内部の爆発圧力に耐え、周囲の爆発性ガスへの火炎逸走を防止する性能を持たなければならない。光電スイッチ、バーコードリーダー、プログラマブル表示器、電子天びんなどで採用されている。

「内圧防爆」は箱内にきれいな空気などを封入し、内部の圧力を外部より高く設定することで、外部からの危険ガス侵入を防ぐ構造。内部圧力の保持方法によって、給気口や排気口を設ける通風式と、密閉する封入式がある。操作盤など大型の電気機器で採用されている。

「安全増防爆構造」は正常な運転中、操作の際に点火源を持たない電気機器(巻線、接続端子など)に限定して適用できるもので、接点開閉部、高温発生部などのある電気機器はこの構造を採用できない。一般的に点火源を持たない電気機器が点火源となりにくいように安全度を増加させ、断線、絶縁不良などの故障が起こりにくいようにしている。

「本質安全防爆」は、あらかじめ電気火花エネルギーを点火エネルギー以下になるようにシステム構築する方法。その電気火花は、爆発性ガスに対する最小点火エネルギーの50%以下に設計されている。この構造は、必要に応じ各種安全素子を活用し、安全回路自体に防爆性を持たせている。接点信号変換器、表示灯、ブザー、近接スイッチなどで採用されている。最近は、コスト面からフィールドバス用のバリアより本質安全防爆構造の機器を使うケースが増えてきている。

「油入り防爆構造」は、火花やアーク、高温度を絶縁油の中に深く沈めて爆発性ガスが点火源となる恐れのある部分に触れないように隔離したもので、内圧防爆構造と同じような性格を持つ。

また、「バリアリレー」は本質安全防爆構造の一種のリレー中継装置で、危険場所にあるリミットスイッチや押しボタンスイッチなどのON/OFF信号を、非危険場所へ中継させる。爆発性ガス雰囲気の中で、汎用のリミットスイッチや押ボタンスイッチが使え、さらに危険場所に配線する本質安全回路の断線・短絡・地絡や、非本質安全防爆回路のトラブルの波及など、あらゆるトラブルが生じても安全性を確保する。光電スイッチやブザー、ランプが使えるバリアも製品化されている。

最近では、国内防爆検定取得と機械安全規格認証を受け、防爆安全と機械安全両方を満たした「防爆機械安全」というセーフティリレーバリアが登場している。

機械安全と防爆安全が確保されたシステムで、爆発性雰囲気内での安全システム構築に対応する。例えば、このリレーバリアに非常停止用押しボタンスイッチや安全スイッチなどの安全入力機器と、安全規格に適合したコンタクタを接続することで、防爆安全と機械安全の双方が実現できる。

■NECAが普及促進活動

NECAでは、防爆関連機器の啓発・普及活動に向けて様々な活動を行っている。防爆電気機器の点検や保守の促進、啓発を目的とした「防爆安全カイドブック」の発刊や、機械運用安全で設けているセーフティアセッサ資格認証制度を防爆電気機器分野でも設けている。「セーフティベーシックアセッサ」(防爆電気機器安全資格制度、略称SBA―Ex)で、防爆電気機器を使用する現場設備の安全パトロールや点検を行う設備の運用者、管理者、オペレータ、保全関係者などを対象に、IEC60079―17に基づき、防爆電気機器に対する正しい基礎知識を持ってもらうことを狙いにしている。

■国を挙げた取り組みが必要

規格の国際標準化が進展するなかで、防爆規格の閉鎖性を指摘する声が強まっている。海外では本質防爆構造品として規格をクリアしていても、日本の防爆検定ではクリアできない機器が多く、しかも検定料の高額さも課題になっている。国ごとに防爆基準が異なることが背景にあるが、国際標準に基づいた相互承認を進めないと、防爆メーカー、防爆機器ユーザーそれぞれが不利益を被ることになる。

It技術を駆使した機器の防爆現場への普及が今後ますます進むことが予想されるだけに、国を挙げた解決への取り組みが求められている。