混沌時代の販売情報力黒川想介 日常の基本動作が好奇心生む

2012年12月12日

物事を行う時に、「基本に忠実に」「基本動作の徹底」「迷ったら基本に戻れ」などという言葉がよく使われる。基本という言葉を辞典で調べると「いくつかある中でいちばんもとになる大事なこと」とか、「判断、行動、方法などの寄りどころとなる大もと」などと書かれている。これらの文言や解釈を紐解くまでもなく、人が意図して物事を実行する時には、基礎となる物事を身につけていなければうまくいかないのは自明である。だから人は仕事であっても趣味の世界であっても、他人から習うことから始める。それが基本となるからだ。

営業の最前線で働いている販売員にとって、情報収集は最重要の仕事である。情報収集のやり方にも基本動作がある。新米販売員は実務を習うが、営業にとって最も大事な情報収集の基本動作を習ったという人は少ない。情報収集の基本動作は、顧客が話す内容をしっかりと聞くことぐらいにしか思ってないからだろうか。それとも情報収集の仕方は商品さえわかれば自然と身につくものと思っているからだろうか。ともかく、何事にも最初に習ったことを新人のうちにこつこつやることによって基礎がしっかりするようになる。状況にしたがって応用に入れるようになるのだ。だから、基本動作が身についていると、現在のように混沌とした不透明の時代であっても、現象面にとらわれることなく、適切な情報収集ができることになる。

日本の社会は20年前に比べると大きく変わっている。製造業では海外移転が後を絶たず勢いがなくなり、電気部品やコンポの世界でも国内製造業分はかなり減り、海外移転先への輸出分が増加し、トータルはフラットの売り上げを続けている。それでも他業界と比べると海外向けがある分、深刻さは少ない。深刻さが少ない分、油断となって表れる。つまり日本の社会や製造業は20年前と大きく違っているのに、利益は確保されているから、とりあえず安心という気持ちがどこかにあって油断を生じさせている。「顧客が海外へ移転した」「競合の価格が安いため失注した」「案件が少なくなっている」などという情報に日常的に接している。案件から発生する商説情報や前記のように世間で一般的に起こっていることが情報収集だと思っているのは油断である。情報とは顧客が会話の中でしゃべってくれたことや目先の情報だけではない。情報収集の基本動作を実行してきた販売員は顧客がオープンにしてくれた情報からさらに何かをとらえようとする感度をもっている。そして顧客の中には多くの情報が眠っていることを知っているから、その隠れている情報をまず質問によって引き出そうと試みるのである。したがって、情報収集の基本動作を日常的にやってきた販売員は自然と好奇心が旺盛になっているので、少なくなった案件を追い求め、打ち合わせに終始してはいない。情報収集に関して言えば、案件の背後に何があるのかを探る方が重要なのだ。

例えばプログラマブルコントローラのリニューアルの案件が浮上し数台の引き合いが出た。すぐに打ち合わせに入るだろう。仕様、性能、価格といった詰めを行うのが通常である。古くなって替え時なのか、生産効率を上げるためなのか、それならコントローラで動く装置はそのままでいいのか、動力は?

情報通信系は?

さらに全体のレイアウトは?

などの疑問が湧いてきて、質問をすれば隠れた情報は入手できる。それほどむずかしくはないのに、「どうして?」「なぜ?」「それで?」などの疑問が自然体で湧かないのは日常的に基本動作をしてこなかったからだ。

(次回は1月9日付掲載)