混沌時代の販売情報力黒川想介 技術者の性向や環境を知る

情報を取るという行為は販売員にとって最も重要な仕事である。市場が全体的に拡大をしていた成長期とちがって、成熟期に入った市場では厳しい競争に晒さらされている。そのため情報と言えば競合商品発見情報か、顧客が手がけてる案件情報が情報なのである。販売会議の席上で「何か情報はないか」と聞いても、よい情報イコール案件情報や競合情報だから、取り立てて報告する情報はないと返ってくる。「毎回何もないことはないはずだ。何かあるだろう」と再度、聞いても答えは変わり映えしない。

業界の成長期には、ルート営業まであっても顧客は販売員がPRして売り込んだ商品に関心があると、使ってみたいという気持ちに駆られて即、具体的な打ち合わせに入る場面が多かった。商談テーマの発生である。成熟期に入ると同じように商品をPRし売り込んでも、あまり真剣な答えは返ってこない。販売員のPR説明が終わると、既に発注ズミの商品の納期や既に案件情報として上がっている商品のコストや使い方の確認の話になる。だから商品PR兼売り込み営業をしても商談テーマは出てこない。

ところで、ビジネスマンには歴史好きが多い。仕事柄フィクションよりは事実を好むからなのかもしれない。あるいは歴史上の成功事例、失敗事例をビジネスの上で参考にする人が多いせいかもしれない。歴史から学ぶ際に留意すべきことは多々あるが、最も大事なことはその時代の人々の暮らし方・考え方などの時代認識を深く理解することである。過去の事実を現代的感覚でとらえるのでなく、その時代の感覚でまずとらえることである。歴史から学ぶということは、なぜそのような行動で成功したのかを知るために当時の歴史環境を学び、その上で現代流の戦術のヒントにすることなのだ。

例えばなぜ源義経はわずか数十騎を率いて、ひよどり越えの奇襲で難攻不落と言われた福原に籠る平家を破れたのか、なぜ源義経は壇ノ浦で海に強い平家を破ったのか、軍船数がほぼ同数なら、弓矢の命中率と船の操縦の上手さが勝敗のカギになる。その点、関東の陸地での戦いに慣れた源氏より海上貿易をスムーズにするために常に海賊と戦っていた平氏が断然有利なのに、なぜ源氏は勝ったのか。当時の社会の背景になっている考え方を理解しないで現代流で参考にすると、谷の合戦はひよどり越えのような冒険的奇襲をすればいいということになるし、壇ノ浦の合戦は速い潮の流れ方を研究し、平氏以外に海で活躍してきた水軍を味方にして、数カ月訓練すればいいということになる。確かに物語的にはおもしろいが当時の社会の背景にある考え方がわかって初めて、源義経のやった戦術が革命的といえる戦術だったことがわかる。

現代の合戦は営業活動だ。営業活動で最も重要な仕事は情報を取ることである。情報を取らなければ合戦も営業活動も有利な戦いができないからだ。一ノ谷も壇ノ浦も徹底的に情報入手した上でその時代では考えもつかない戦術を呼び込んで勝利した。現代の営業活動においてもまた然りである。

21世紀になって、はっきりとは見えないが揺籃期にある市場がちらほら見え始めている。新たな市場を感ずるためにも案件や競合情報を追いかけるだけでなく、具体的な顧客情報を入手するための時間比率を少しずつ上げる時なのだ。その際に時代背景を知ることが歴史から学ぶ際に重要であったように、営業の現場で働く販売員の性向や環境、そして顧客である技術者の性向や環境を知ることが重要になる。(次回は11月14日付掲載)

ANSYS

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