防爆関連機器 市場堅調に推移 各種プラントにリニューアル・新規需要 国際防爆指針の検定増える 市場動向欧州防爆指令に適合したコントロールボックスも登場 本質安全防爆機器の採用拡大 製品動向IT機器分野にも

爆発危険領域での爆発事故を未然に防止する防爆関連機器の市場が堅調な推移を見せている。特に、爆発危険領域の安全確保として、石油・ガス・化学プラントをはじめ、水処理、エネルギー、半導体、食品・薬品などの爆発性の高い分野で導入が進んでいる。国内のこうした施設は老朽化しているものも多いことからリニューアル需要や新規の建設も増えている。防爆関連製品は、コントロールボックス、バリアリレー、照明、表示機器、バーコードリーダー、各種センサ、無線機器、グリップスイッチ、ケーブルグランド、カメラなど多岐に渡り、その市場規模はハードだけで80億円前後と推定されている。これにソフトウェアやエンジニアリングなども含めると市場はさらに拡大する。2010年に厚生労働省が防爆構造規格に関し、IEC規格に基づく技術的基準を廃止、代わりに国際防爆指針を適合したことで、防爆機器メーカーでは国際防爆指針の検定を取り入れるケースが増えている。今年6月には、国内で初めて欧州防爆指令(ATEX指令)に適合したコントロールボックスが発売されるなど、規格の国際整合化が進みつつあるもののまだ課題も多く、完全整合化にはしばらく時間がかかりそうだ。

今年5月24日、新潟県南魚沼市の国道トンネル工事現場で爆発事故があり、4人が死亡、3人が爆風で重傷を負った。トンネル工事で爆発が起こるとは想像がつきにくいが、原因は地層から染み出した天然ガスがトンネル内に充満していたところに、火花が引火したことによるもの。トンネルなど、通常では爆発の危険性が予想されないところでも、こうした事故が起こる可能性があることから、トンネル工事では爆発危険の予知と検査を行い、場合によっては防爆対策機器を使用するといった対応が指摘されている。

トンネル工事でもこのようなことが起こる可能性があるだけに、石油やガスなど危険物質を扱う工場などでは、防爆対策は欠かせない。こうした爆発危険場所では、爆発の要因となる電気機械器具において、法律で定められた防爆構造の機器を使用することが義務付けられている。近年、こうした施設の老朽化が進展しており、爆発事故の起こる危険性が高まっている。同時にこれらの管理・保守を担当する担当者も、ベテランが定年退職したり、外部にアウトソーシングしたりする傾向が強まっており、設備の状況を会社として完全に把握していないことも多く、トラブルや爆発事故につながっている。

こうした中で、厚生労働省が10年に「防爆性能基準」と「型式取り扱い」で防爆構造規格に関する通達を出した。これに伴いさらに、88年以来の「技術的基準」が廃止され、国際防爆指針に適合するものが構造規格に適合するとして扱われるようになった。

防爆性能基準の通達内容は「電気機械器具防爆構造規格における可燃性ガスまたは引火性の物の蒸気に係る防爆構造の規格に適合する電気機械器具と同等以上の防爆性能を有するものの基準等について」で、型式取り扱いの通達内容は「防爆構造電気機械器具の型式の取り扱いについて」である。

この通達により、防爆機器メーカーでは市場のグローバル化に対応するため、国際防爆指針の検定を増やす傾向になっている。今年6月には国内で初めて、欧州防爆指令(ATEX指令)に適合した耐圧・安全増防爆構造のコントロールボックスが発売された。

一方、防爆構造基準は、「電気機械器具防爆構造規格」と「国際規格(IEC規格)」の2つの体系が実質的に存在しており、10年の通達内容では防爆構造規格は1つとされているが、規定の規格に適合しない電気機械器具についても、IEC規格準拠のものは適合すると見なしている。また、10年の厚生労働省の通達により、IEC規格の整合性に伴い、曖昧な型式ごとの文面が明確にされた。

また、引火性の有機溶剤を用いるドライクリーニング工場の溶剤を保管する容器の設置場所の防爆対応で、厚生労働省が助言・指導を行ったこともある。

防爆関連機器を必要とする危険箇所として、08年3月に労働安全衛生法で「爆発のある濃度に達するおそれ」という文言が追加された。これに伴い、大規模な工場から半導体製造工場や燃料電池関連などの先端事業所、ガソリンスタンド、LNG・LPG充填所、塗装作業所、有機溶剤の取扱所まで、危険物や可燃性物質、高圧ガスなどを取り扱う様々な事業所が法改正の対象となり、防爆関連機器の市場拡大につながっている。

このような危険箇所では、爆発事故などを防ぐため電子・電気機器を隔離しなければならない。例えば、危険箇所では石油などは常温でも気化し、その蒸気や温度によってはスイッチなどの開閉に伴う微小の電気火花や静電気による火花で引火や爆発する恐れがある。また、ここ数年は、設備の更新遅れや熟練の保守点検要員の退職といった理由から、高圧ガスの製造事業所での事故件数が増加しており、電子・電気機器の防爆対策に対するニーズが急速に高まっている。
防爆製品の動向では、半導体製造関連分野、有機溶剤を取り扱う自動車塗装関連分野などでは、本質安全防爆機器の採用が広がっている。さらに、食品業界や薬品業界といった3品業界でも防爆関連機器採用の動きが活発化している。

防爆製品は大きく、FA制御機器分野、モータ分野、照明分野、計測機器分野の4つに分かれる。このうちFA制御機器分野の市場規模は80億円前後と見られている。これに、ソフトウェアやエンジニアリングなども含めるとさらに膨らむ。

FA制御機器分野の防爆機器は、コントロールボックス、バリアリレー、タッチパネル表示器、リミットスイッチ、各種センサ、回転灯、バーコードリーダー、ハンディターミナル、グリップスイッチ、ソケット、パソコン、ケーブルグランドなどが挙げられる。これらは主に日本電気制御機器工業会(NECA)が所管する製品が多いが、モータ関係は日本電機工業会(JEMA)、測定器などは日本電気計測器工業会(JEMIMA)、照明器具は日本照明器具工業会(JLA)などが主に所管している。

昨今のIT機器の普及は防爆分野にも及んでおり、ハンディターミナルを始め、携帯電話、タブレットパソコン、Webカメラ、デジタルカメラなど次々と新しいIT機器が登場している。これらと通信する防爆型の広域アクセスポイントや指向性の遠距離タイプ、無指向性のアクセスポイントなども開発・発売され、無線LANによる防爆ネットワークなどが構築されている。

しかし、これらの製品のほとんどが耐圧防爆として頑丈なハウジングに収納されて使用されており、本質安全防爆機器として使用されるものは少ない。耐圧構造の場合、頑丈である分、重くて扱いづらく、特にハンディタイプとなると、片手での操作はかなり大変になる。海外では本質防爆構造品として規格をクリアしていても、日本の防爆検定ではクリアできない機器も多く、規格の国際整合性の点から貿易障壁だと指摘する声も強まっている。ある海外の防爆機器メーカーは「1点で何十万円という高い検定料を取りながら、1年近く審査をかけて、最後は回路設計からのやり直しを命じるという日本の検定機関の姿勢は、嫌がらせ以外の何もでもない。これでは日本ではビジネスをやるなと言うのに等しい」と指摘する。また、ある防爆関係者は「検定機関は最近の新しいIT機器の流れに知識が追いつかず、検定をクリアした後に事故が起こることを恐れて、はじめから防爆適合認可をする気がないのではないか」とも語る。こうした日本の防爆検定のあり方は、国際整合化の流れに遅れるだけでなく、防爆機器メーカー、エンドユーザーにとっても、不利益を被ることになる。防爆は厚生労働省に加え、経済産業省、消防庁など役所間の壁の影響も指摘されており、ここでも障壁を取り除く取り組みが必要だ。

新たな防爆技術も登場している。「DART」という防爆技術は、電気回路全体をモニターできるインテリジェントな検出回路を使用することで、危険なスパークを検出すると、その電源をマイクロ秒以内でOFFにし、スパークが誘引されて爆発が起きないように防御する。これまで大容量の電源が必要な機器を危険場所で使用するには制約が多かったが、こうした制約が解消されるほか、接続できる機器数の増加やケーブルが長くできるなどの利点があり、すでにフィールドバス用電源などが製品化されている。

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