オートメーション新聞N0.403を発行!24年度のFA・制御機器市場まとめや主要各社の24年度決算など掲載中

【サーボモータ市況2012春】今年度下期以降の伸長に期待 脱レアアース、生産コスト低減

サーボモータ市場は、国内外を取り巻く需要環境低迷の影響を受けているものの、スマートフォンやタブレットPCの需要拡大、北米市場の堅調維持などもあり、今年度下期以降の伸長へ期待が高まっている。製品は高速・高精度制御、省エネルギー化、セーフティ対応、簡単操作化などが進み、一層使いやすさと機能の向上が進んでいる。

レアアースをはじめとしたモータの原材料価格の上昇を受けて、サーボモータ各社は、ユーザーへの価格改定交渉に取り組んでおり、一定の浸透を見せている。一方では設計の改良などで、脱レアアース、コストダウン対応も積極的に行われている。 

サーボモータ市場は、リーマンショック後の大幅落ち込みから徐々に需要を戻しつつあり、2010年は09年比で数量、金額とも2倍から3倍となった。11年は震災発生までは生産台数が過去最高ベースで推移するなど好調であったが、3月の東日本大震災の影響がプラスとマイナスに大きく振れ、前半は好調、後半は失速気味となっている。

サーボモータ市況概況

経済産業省の機械統計によると、サーボモータの生産は、10年は数量が410万台(同280・8%増)、金額が1898億円(同272・3%増)と驚異的な回復を見せた。11年は、数量が432万台(同5・5%増)、金額が2167億円(同14・2%増)となって、金額が2桁の伸長を見せるなど堅調拡大となっている。 11年は、大震災の影響から前半は発注の前倒しが顕著に表れたが、逆に後半は需要の先食いの反動が出た。これに加え半導体・液晶製造装置の需要不振、欧州金融危機による市場の冷え込み、中国の金融引き締めと欧州向け販売不振などが重なり、急に需要が停滞し始めている。

日本電機工業会(JEMA)がまとめている生産実績では、11年度(11年4月~12年3月)は1980億円と、10年度比4・2%減の見込みで、12年度も同1962億円(0・9%減)と厳しい見通しを立てている。外需のうち、北米向けは比較的堅調な推移が見込まれるのに対し、中国や欧州向けは前半まだ需要環境が厳しいとしており、後半での回復に期待をかけている。 これに対し、内需は比較的明るいテーマが多い。サーボモータ需要の大きな市場である工作機械、ロボット市場が堅調な動きを見せていることだ。工作機械は、リーマンショックから急速に立ち上がり、3年連続でプラスとなっている。自動車関連向けが好調であることや、欧州向けを除く外需も好調だ。特に北米向けは、航空機や鉱山機械などの製造から需要が伸びている。ロボットも自動車関連向けを中心に拡大している。特に、中国は人件費の上昇が継続していることで生産の自動化投資が活発化、自動車製造以外でもロボットをはじめとした自動化生産を進めていることで、サーボモータ需要を支えている。

半導体・液晶製造やソーラーパネル製造などの今までサーボモータ需要を牽引してきた分野もしばらくは低迷が予想されているが、この中にあってバッテリー関連や3品(食品、薬品、化粧品)関連は内需として期待が高まっている。バッテリー市場は、電気自動車や再生可能エネルギー関連、携帯電話を中心に大きな分野に成長しつつあり、その製造工程で必要になる精密な巻線機械用として、サーボモータは大きな役割を果たしている。振動や制振技術などに独特なノウハウが必要とされる。3品業界も位置決めに高精度が求められる用途が多く、安定した市場となっている。

サーボモータの用途は年々拡大している。工場以外では、駅ホームの安全ドア開閉や自動改札機、乗り物シミュレータなどのゲーム関連機器、回転鮨のベルトコンベア制御、介護ベッドや手術支援ロボット、医療検査装置などの介護・医療関連といった身近な日常生活の中にも採用が進んでいる。

同時に環境・省エネ対応と言った点でも採用が進んでいる。例えばアクチュエータの電動化が挙げられる。

自動車車体のプレス加工の場合、均一かつ強力な圧力を加える必要があるが、油圧に比べ、サーボモータを使った電動プレスは、同期したツイン制御によって上下から静かにプレスすることが可能になる。自動車の車体は、燃費向上と材料費削減のため軽量化に取り組んでいる。材質の薄型化はこの一環であるが、電動プレスはこの点からも置き換えが進んでいる。ここでは大容量サーボモータが使用されることが多いが、ここでの加速エネルギーをあらかじめ蓄電しておいて、必要な電力設備を小型化できるコンデンサーバンクや2次電池対応への取り組みも始まっている。同様な動きは射出成型機でも見られる。

空圧機器もサーボモータへの置き換えが見られる。空圧はエア漏れがエネルギーの浪費につながるという省エネ・環境の視点からで、今後もこうした「省エネ」をキーワードにしたニーズが広がり、電動化への置き換えにより使いやすい部品や機械・設備が増えてきそうだ。 昨年秋以降、大手サーボモータメーカーを中心に、製品価格を改定し、値上げを実施しているところが多い。レアアースをはじめとして、原材料の高騰によるもので、10~20%の幅で改定している。こうした一方で、レアアースを中心に磁性材料の使用削減を行う設計への取り組みも進んでいる。レアアースを使用しない設計や使用量を減らす設計で、生産コストを低減しようとしている。

使いやすさに重点を置いた製品開発

複雑な制御調整が簡単にできるオートチューニング機能、機械の振動を抑えながら短時間で位置決めを行う制振制御技術、作業の安全を確保するセーフティ制御技術、さらには効率的な生産を進めるネットワーク化対応などが主なポイントになっている。 オートチューニングでは、ワンタッチで機械の共振抑制や制振制御などにも対応できるように、サーボモータ各社が独自の機能を競っている。例えば制振制御技術では、アーム先端の振動に加え、装置本体の残留振動も抑制できる低周波抑制アルゴリズムで、さらに高精度な調整を可能にしている。

各社ともセーフティ化に対応パワー素子使った製品に注目

高速化では、速度周波数応答2・5kHz、22ビットロータリーエンコーダーの標準搭載で400万パルス/revを超える高分解能製品も登場しており、位置決め整定時間を大幅に短縮し、高精度な位置決めや微細加工を可能にしている。整定時間を短縮することは、業務の効率化につながり、機械・システムの生産性が向上する。ネットワーク対応では、Ethernet技術をベースに、通信速度100Mbps全二重の高速独自ネットワークを駆使し、リアルタイム通信性能や、自由度の拡大を図った最新の製品も登場している。

セーフティ化への対応も著しい。サーボドライブで関連する規格としては、ISO13849―1、IEC61508シリーズ、IEC62061、IEC60204―1、IEC61800―5―2などがある。このうちIEC60204―1は、機械の電気装置に関する要求事項を定めた規格の1つで、停止の制御機能について定義している。また、IEC61800―5―2は、可変則電力ドライブシステムの安全要求事項を規定している。現在はこの2つのセーフティ規格を搭載したサーボモータが発売されているが、各社とも国際標準化に準拠したセーフティ機能拡充へ、今後も開発を継続している。

一方、防爆ではATEXの新防爆基準に対応し、小型・軽量でコンパクト化したACサーボモータが標準で発売されている。そのほか、厳しい環境下でも使用できるよう保護構造IP65などを標準採用したタイプやIP67対応品も増えつつある。

「オールインワン・サーボモータ」として、ドライバ、エンコーダ、モーションコントローラ、シーケンサ、ネットワークまでを1台に収納した製品は、配線作業が不要で、省スペース化にもつながり、トータルコストダウンにも貢献できる。

超小型タイプも登場

搬送機械、繊維機械などでは、1台のマシンに使用するモータ数が多く、特にサーボアンプの小型化や各軸のゲインチューニング工数の短縮が求められている。このため、回路基板をワンボード化するなど、高密度実装と最適放熱設計での超小型サーボアンプも登場している。

今後もサーボモータの開発で注目されているのは次世代素子であるSiC(シリコン・カーバイト)やGaN(ガリウム・ナイトライド)などパワー素子を使った製品の実用化だ。サーボドライバーからの発熱を大幅に下げることで一段と小型化できる。また、省配線化につながるエンコーダの配線本数削減や配線レス化、バッテリーレス化なども志向されている。

同時に、中国など新興国市場を意識した機能を絞ったローコストタイプや、操作のさらなる簡易化などが取り組まれている。

用途拡大へはさらなる制振技術の向上なども求められており、信頼性向上と合わせ、サーボモータへの期待はまだまだ高いものがある。