混沌時代の販売情報力 基本は「相手の手柄を知る」

情報を取るということは見聞きをすることである。日常生活において、知らない人と話をする時に、とりとめもない会話をしながら、相手の人はどんな人かと自然に探りを入れている。これは人の習性である。相手の人がどんな人か分からなければ、どのように付き合っていいか分からないからだ。

ところが営業の場面では、販売員が見込み客、つまり知らない人と面会し、名刺を交換している時に相手のことを探ろうとしていない。名刺に関する話や相手の会社に関するさらっとした話をしながら探りを入れるようなことを意図してない。どのように自己をアピールするかで一杯一杯になっている。一般の人から売り手側の販売員になったとたん、相手を見聞きしようとする人間一般の習性から離れてしまう。効率の追求やスピードを要求する現代の世相が営業の分野にも波及して、PR優先の営業になるのか、それとも今の販売員が育ってきた環境にあるのだろうか。

大量生産を志向し、大勢の人がひしめき合っていた時代には販売員が面識のない見込み客を訪問した時に、売り込みPR以前に、人間の習性にしたがって、相手のことをよく見ようと精力を注いでいた。相手はどんなタイプの人か、どのようなタイミングで、どの角度から話を進めればいいのかを真剣に探ろうとして見聞きした。現代の販売員もその頃の販売員も、会社案内やアピールする商材に関してよく勉強している点は同じである。ただ必要な情報を現場にいる顧客から入手しようとしていたのが、その頃の販売員であり、必要と思われる情報をウェブネットなどのような情報機関から手軽に入手できるのが現代の販売員である。

現場にいる顧客から聞いて学習しなくとも、自分で調べたり、いろいろな教育機関が教えてくれるので、情報入手には便利な半面、顧客や見込み客とのコミュニケーションの仕方が人間一般の習性を離れ変則的になっている。つまり顧客である技術者たちがやっていることは分かっているという前提で、自分たちのアピールから入っていく。しかし成熟期を迎え競争の激しさが日増しに強くなる業界では、混沌としてどのように展開していくか分からない時代である。このような時代には、あせらず遠回りのように見える基本動作を身につけていくのが大切である。顧客や見込み客に、いきなりアピールする前に人間の習性にしたがって相手はどんな人なのか探りを入れようとする気持ちを優先することが基本動作である。特に見込み客の場合では相手のことは分からないことが多い。いろいろな質問をしたいが、どんな人柄なのか分からないから質問したくとも不安があって質問できない。こんな人だというおおよその見当がつくまでは核心を突かない方がいい。ベテラン販売員は初回の面談で、相手に関しておおよその見当がつくために、ある程度のアピールができるだろう。若手販売員は販売は少なく、相手の人柄を探る余裕がない。だからといって、いきなり手持ちの情報をアピールするのでなく、人柄を知ることを優先すべきなのだ。初回で分からないのは当然だから数回顔を合わせなければならない。数回顔を合わせれば人柄が見えてくる。人柄に合わせて核心を突くアピールをすればいい。しかし、見込み客である技術者と数回顔を合わせるには会うための工夫がいる。会う工夫も相手の人柄を大雑把につかまないと、これまた大変なのだ。
(次回は11月2日掲載)

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