企業リスクマネジメント 第52話 ~ルール遵守の意味~ グローバル時代の生き残り戦略

車を運転していて時々思うことがある。もし、交通ルールがなかったらどうなるだろう。

運転歴も長くなると、頭で考えなくてもルールは身体に染みついており、手足が自然に動いている。初心者であってもそれなりにルールを守りながら道路に出るので、ルール通り動いていれば交通事故は起きないように計算されている。

ルールでは規制しづらい、ドライバーの判断によるところが大きい事項もある。例えば狭い道ですれ違う時だ。

相手を先に通し自分がバックしたほうがいいのか、それとも相手側の道幅の広い場所まで突っ込んだ方がいいのか、口頭で確認しなくとも行動で合意しその場を通過する。もたもたしていると、後から来る車に迷惑だから、瞬時に判断し処理している。この場合「譲り合うこと」がルールである。もし、ルールを守らずに好き勝手に道路に飛び出したら、事故に繋がるのは時間の問題。社会で安全に生きるためにはルールを守らなければならない。

では、会社に置き換えるとどうだろう。組織体系は会社によって様々で一概には言えないが、どの組織もベースとなるルールは報告・連絡・相談、いわゆるホウレンソウであると思う。自分が会社トップでない限り、必ずホウレンソウをする相手はいる。そのために組織には、報告・指示系統が明確にあるわけだが、意外と出来ていない場合が見受けられる。

ホウレンソウをせずに自己判断で行動し、後で問題が手に負えなくなり事後報告になってしまうケースもある。ある例だが、上司が代理店サービスエンジニアだけで顧客の処理にあたるよう指示を出し、そのエンジニアは了解していたのだが、メーカーから上司の指示直後に客先へ同行するオファーがあったため、良かれと思い同行を許可し一緒に顧客に対応したというケース。内容自体は、顧客にとって悪い話ではない。しかし上司は政治的、政策的な利害に絡む心配事があったため、あえて単独処理をするよう指示を出していたのであった。上司の立場の懸念事項は、その社員にはわからない。だが何もかも全社員に説明するものでもない。部下の「良かれ」の判断は、会社にとって「良かれ」の結果をもたらさなかった。メーカーからオファーがあったとはいえ、上司の指示を受け了承した後に自己判断で違う行動にでている事実は業務命令違反である。その行為によって会社が不利益を受けたり損失を被ったりすれば、背任行為にもなる。

ここで行うべきことは簡単だった。打ち合わせと違う事態になった時に、上司に相談することであった。時間がなかった、連絡が取れなかった等は言い訳にもならない。

また、別の例だが、クレームトラブルを報告せずに自己処理をしていたため、事態が悪化し顧客を怒らせ支払いも止まってしまったケース。最終的に損害賠償を受けたり、謝罪に出向いたりするのは上司や経営トップなのだから、クレームトラブルは一担当で処理してはいけない。小さなトラブルであっても、事実は上長に報告すべきで、内容如何によっては上長の上司、またその上司と報告系統にのっとって経営者の耳に入れることが会社のルールである。

そして所属長は、部下が確実にホウレンソウをできるように教育をする責任があり、その欠如による失敗は上司の管理責任である。

管理者は、自分の部署の行動を全て把握しているだろうか。会議や報告会で把握している気分になっているだけではないか。

一般的な社員規則にはこれに該当する懲罰制度があり、制裁が科せられても仕方がない。

これが会社のルールであり、行動師範を逸脱すると、経営を脅かす可能性につながることは、交通ルール違反によって生命を脅かす交通事故と同じなのであるから、改めてホウレンソウの大切さを考えたいと思う。
(シュピンドラー株式会社
代表取締役シュピンドラー千恵子)

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