回復基調に入ったPLC市場 半導体・液晶製造装置、社会インフラ向けで拡大 意欲的なイーサネット通信への対応 需要の裾野拡大も追い風小型・高機能化で使いやすさ向上

08年秋のリーマンショックまでは月ベースで100億円から120億円の出荷をコンスタントに維持していたPLC市場であったが、09年1月には70億円台、2月に40億円台、5月には30億円台とピーク時の4分の1まで大きく落ち込んだ。しかし、これを底に回復基調に入り、現在では月間70億円台で推移している。

経済産業省の機械統計によると、PLCの国内生産は08年で台数が200万台、金額が1305億円と07年比では、それぞれ8・7%、6・8%増加した。08年はリーマンショックの影響はあったものの、前半が非常に好調であったことや、リーマンショックが秋であったことで、08年12月までの統計に大きな影響がなかったことから、前年より増加する結果になった。

逆にその影響は09年の統計に大きく影響し、台数で36・5%減の127万台、金額で47・5%減の685億円と大きく落ち込んだ。

ただ、昨年夏以降底を打ったことで、今年に入っても出荷は70億円前後で堅調に推移しており、日本電機工業会(JEMA)がまとめている09年度(09年4月~10年3月)の出荷見込み額は744億円で08年度比34%減と減少幅が狭まっている。出荷ベースで統計をまとめている日本電気制御機器工業会(NECA)もほぼ同じような傾向を示している。

JEMAでは来期10年度のPLCの生産見通しを09年度比26%増の937億円と2桁の大幅な伸びを予想し、1000億円台回復を視野に入れている。

PLCの需要はリーマンショックに伴う自動車、工作機械、ロボット、半導体・液晶製造装置などでの設備投資抑制が大きなダメージとなって落ち込んだ。国内の自動車関連の設備投資は依然厳しく、工作機械やロボットの出荷はピーク時の半分から3分の1となっているが、デジタル家電やパソコン、携帯電話などの需要増で、半導体・液晶製造装置、電子部品実装装置などの需要も堅調に拡大して、PLCの出荷増に繋がっている。

また、紙パルプ、飼料、鉄鋼、石油化学などのプラント設備では、装置のリプレースが意欲的に行われており、PLCの出荷増になっている。

社会インフラ関連でも高速道路の監視システムやごみ処理施設の制御などでPLCが活用され、需要を支えている。

環境・省エネの観点から太陽光や風力などの新エネルギー関連や電池関連、さらにはスマートグリッド関連での需要も期待されている。

一方、海外は中国を中心としたアジア市場が大きく拡大している。日本で好調な半導体・液晶製造装置に加え、自動車設備や工作機械関連も堅調に推移している。

さらに、情報通信や省エネ・新エネ関連、ビルのエレベーターや空調制御といった社会インフラ整備に伴う需要も大きなウエイトを占めている。

このようにPLCは機械・装置の制御用のコントローラから用途・機能が広がり、PA(プロセスオートメーション)制御領域やパソコンの領域までカバーしている。PLCの持つ信頼性の高さ、長期間の製品供給体制確保といった使いやすさへの評価が定着して、パソコンなどとの差別化が図られていることが大きい。

この評価が素材産業向けで、PLCをDCSからの置き換え用に使うPLC計装として用途を拡大している。DCSに比べコストダウンでき、ユーザー側で自由にプログラムが変えられるのも大きなメリットだ。

最近は少ループ制御に最適なプロセスCPUを新たに開発することで、コストの削減と盤の小型化や設置スペースの削減などに繋げる取り組みも見られる。

計装向けPLCの活用は、今後も一定領域で進みそうだ。

FA分野でも、こうしたPLCのリニューアル投資が見られる。最近のPLCは小型・高機能化が進んでいることから、リニューアルで使いやすさが増すのは確実ではあるが、投資負担を敬遠するユーザーは、この理由だけではなかなかリニューアルに踏み切らない。

しかし、工場設備全体の省エネ化に繋がるという提案でのリニューアル化には比較的抵抗が少ない傾向にある。特に省エネ・コストダウンを意識している国内のユーザーは、PLCをリニューアルして最新の機種で効率を上げようという傾向が強い。

PLCのリニューアルを簡単に行えるツールを充実させているPLCメーカーも多く、端子台やI/O機器を手がけるメーカーも、この市場の取り込みを積極的に行っている。

最近のPLCは、生産現場の機械・装置の制御のみならず、生産物個体のデータ管理やトレーサビリティ、エネルギー消費量管理などの点からもPLCの利用が進んでいる。同時に、PLCに大容量メモリを搭載して、MESインタフェイスユニットの機能をPLCやプログラマブル表示器に持たせる傾向も見られる。

PLCは今後、ソフトウェアも含め「オープン化」と「グローバル化」がさらに進展する。

例えば、プログラミング言語をシーケンス用言語であるラダーのほかに、IEC61131―3に基づいたストラクチャードテキストなどを使って、パソコンが苦手な用途・現場でも使用するケースが増えている。IEC61131―3は、産業用オートメーション分野の合理化につながるものとして、欧州を中心に普及が進んでおり、日本でもJIS規格化(JIS
B3501―3503)されている。

これらの用途では、生産管理・稼働履歴などのデータを上位システムと交換することが多いことから、CPUモジュールにイーサネットモジュールを内蔵して、高機能のネットワークが安価に構築できる取り組みも始まっている。PLC各社の製品は、いまやイーサネットへの対応が標準となってきており、製品のグローバル化とオープン化を加速させている。

イーサネットを含めた、こうしたネットワーク化は、制御と管理データの効率的な運用に繋がるが、これをさらに進歩させて、工場内にある装置・機械の待機電力を削減しようという提案も始まっている。ネットワークで管理と指令を行うことで、稼働しないでも待機電力を消費している装置・機械の効率的な管理が可能になる。

プログラミング言語の多様化ニーズに応えて、マルチCPUの採用、電気技術者にはC/アセンブラー、機械技術者にはラダー、生産技術者にはBASICといったように、得意な言語で記述できるような配慮もされ始めている。この場合、高速処理はラダー、浮動小数点/文字列演算はBASIC、HMIはAT互換といった用途に合わせた選択も可能になってくる。

なかでもC言語搭載のコントローラが注目されている。半導体や液晶製造分野などで良く使われているマイコンボードやパソコンベースのC言語環境を、PLCで実現できるのが大きな特徴。リーマンショックで大きく落ち込んだPLC市場の中にあって、C言語コントローラやPLC計装などの分野は落ち込み幅が少なかったというPLCメーカーもあり、PLCの持つ長期安定供給体制が、マイコンボードなどの生産中止に伴う供給不安を解消し、専用開発ツールとして最大限開発に集中できるメリットがある。特に公共関連分野では支持する声が多いようだ。

最近のPLCは、小型化、高速処理化、高機能化が著しい。高速処理化では、基本命令0・0095μsを実現したタイプも発売されている。

高速処理化は複雑な演算(応用命令)を短時間に処理でき、機械制御も安定化できる。同時に、ネットワークサービスによるスキャンタイムの不安定動作の低減にもつながる。これに加えて生産現場でのデータ収集、モニタリングを低価格で実現した8点入力タイプのプロセスユニットや、DC24V電源対応オールインワンタイプも新たな用途拡大が見込める。

同時に、モジュールの追加などにも余裕をもって対応できるほか、制御盤の標準化にもつながる。

小型PLCでは、小型・省スペース・ローコストという特徴のほかに、「適切な制御点数、必要な機能が選択できる拡張性、操作性の向上」が市場ニーズとして求められている。さらに、最近では高機能命令やプログラム容量の拡大、さらに入出力点数の増加などの要素も求められている。

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