混沌時代の販売情報力 黒川想介 顧客に必要を喚起する工夫

2010年2月3日

各社が永続的に売り上げを拡大し、販売競争の大競争時代を生き残っていくには戦略が必要なことは明白である。戦略を欠き、戦闘力を強化しても一過性の勝利のみに終わって継続的な勝利は続けられなくなる。成長ができないのである。戦略や戦術といった耳慣れた言葉は、販売競争を指揮する上位者が考えればいいだけでなく、営業現場の最前線にいる販売員も個人的戦略思考は持たねばならない時代に入っている。

それでは、個人的戦略思考に基づく営業活動とはどのようなものかを考えてみる。まず営業活動をするにあたって2つの心得を銘記すべきである。1つ目は、とにかく「取りあえず○○するという考えは捨てること」である。取りあえずと考えて行動してしまうから、過去に身についた経験で動いてしまう。あるいは経験を基にして、多少の商品に関する知識を追加したやり方で効果を挙げようとする。行動の鈍い販売員と比べれば取りあえず走り出す販売員は最強であり、頼もしく見えるであろう。

成長期には、特に必要なスキルであったかもしれない。しかし、成熟期に入り大競争時代を迎えている業界では、その混戦から抜け出せないだろう。販売員はシェア争いに巻き込まれて、忙しい白兵戦を毎日し続けることになる。勝っているのか、負けているのかわからない状態であって、早く景気が良くならないかとひたすら待つのみの面白くない営業になる。

今が成長期にある業界で、例えばIT業界ならば取りあえず動いていれば結果がでる。景気低迷の中にいても勝っている実感をもつことができるから、多少の行動修正があっても、行け行けドンドンで面白く営業ができる。しかし、成熟期にある商品群を多数もつこの業界では「顧客の必要」に売り上げは限定される。
成長時代にあった「顧客の必要」を喚起できる領分は、極端に少なくなっている。幸運にも顧客の必要に出合った時に案件名としてあがってくるだけになっていて、販売員が商品をPRしたから案件がでてくるわけではない。したがって景気が低迷すれば、先行き不安だけが頭をよぎり勝てるという実感をもつことはできない。

それでも営業の仕事の重要な部分は、顧客に「必要を喚起する」ことであって、それがゼロなら販売員はいらないことになる。取りあえず動くという白兵戦から脱して、2つ目の心得を持って行動することである。「取りあえず」の反対は「考えること」になるから、まず考えて準備をした後に行動に移ることが2つ目の心得ということになる。

例えば、現状の顧客である注文をくれる人や部門へ商品を売り込む話をする場合を想定して見よう。もし商品紹介や提案が空振りに終わった時に普段どうしているか、取り留めのない雑談で時を過ごし、帰り際に「使う時があったら連絡を待ってます」と言い残して帰るのが一般的ではないだろうか。雑談で時を過ごすのではなく、貪欲に何か必要を喚起できることはないかという観点に立たなければならない。必要を喚起する部分を見つけるためには、顧客のことを知ることであろう。

何が知りたいのかを考えて、知りたいことの質問を準備し、それに関する話題をどう提供すればいいかの準備をしておくことである。それが実行できれば、従来の経験を越えた幅広い体験ができよう。自力で考え自力で準備し、新たな体験を追加していくのである。能力は知らず知らずのうちに向上し、顧客への必要を喚起する部分も見つけることができるようになろう。
(次回は2月24日掲載)