人と現場を強くする日本流のIoT FOAコンセプト 情報短冊で組織感度高める

2016年4月27日

smart-FOA(東京都千代田区、奥雅春社長)が提唱する「FOA」は、現場で起きている事象を、現場の言葉で分かりやすく一つの情報(情報短冊)にまとめ、企業全体へ素早く共有する仕組み。クラウドやビッグデータなどIT主導で進む従来のIoTとも相性のよいアプローチで、製造現場や人の情報感度を高める形で最適化する。シスコシステムズがそのコンセプトを高く評価し、同社に出資するなど、今注目を集めている。

■回転ずしのように現場情報が流れてくるFOA
FOA(Flow Oriented Approach)は、奥社長が、長年の製造現場で培ったマネジメント・ノウハウをもとに作り上げた現場情報システム構築コンセプト。現場の言葉を使い、管理や改善、問題発見など、人の判断・アクションやさまざまな改善活動につなげていくのが最大の特徴だ。

具体的には、製造イベントデータとその背景のデータが一つになった情報のかたまり「情報短冊」を作り、それをネットワークに流して情報の利用者にタイムリーに届ける仕組み。流れてくる情報短冊は定型化され、誰でも必要なときに使えることから「回転ずし型IT」とも評される。

■データが現場の言葉に変換されて情報としてまとまっている「情報短冊」
情報短冊は、日々発生する製造イベントデータに、いつ・どの作業員が・どの工程で・何が・どんなふうに起きたのかという「説明データ」と、イベントが発生したときの背景にある「因果関係データ」を加えて、情報をひとまとめにしたもの。そこには4M(人・機械・材料・方法)、5W1H、各種データと正常時の基準値などが登録されている。

「情報短冊の情報は、現場のベテラン作業者に話を聞き、必要であると判断されたデータを、現場で実際に使っている言葉に置き換えて情報化されている。だから現場の人が情報短冊を見れば、どんな異常やトラブルが起きたのかひと目で分かる。単なるデータと情報の違いだ」(奥社長)。

■人と組織の情報感度を上げ、気付きのきっかけを作る
FOAを入れて活用したときの最大の効果は「組織感度が上がること」。

現場の事実情報が生で流れ、各人がそれを使うことによって、異変や疑問に気付き、素早く判断できるようになる。また、現場の作業者から管理者、役員など経営層まで問題意識の違う各層で自ら情報を見て、気付きを創造できる。

現場・工場の作業者の場合、ベテラン作業員の知見やノウハウを共有でき、若手技術者の育成に役立つ。また現場共通の言葉で、改善の仕組みをグローバルに展開しやすくする。

マネジメントや管理者層にとっては、マザー工場が他の工場を支援する際の強力なサポートツールになり、グローバルの活動モニタリングやKPI管理が容易になる。

役員など経営者層にとっては、現場の状況を肌で感じることができ、激しい変動に対するスピーディーな対処を指示でき新たな兆候や問題も検出できる。グローバルな状況も瞬時に分かりやすくなり、適切な海外戦略の立案にも役立つ。

誰もが使える情報共有インフラを整えることで、情報感度の高い組織が醸成できるようになる。

■データと情報の違いを明確にするFOA
IoTでよくいわれるシステムは、あらゆる場所からデータを集めて一カ所にためる“ストック型”。高度な分析や解析、データマイニングには適している。また、ここでいうデータは、あくまでデータであり、専門家が加工するか、何らかの手間のかかるデータクレンジングを行わないと「情報」になりにくい。

一方FOAは、“データ”と“情報”を明確に定義した上で区別する。あくまで人が使う情報になる。

奥社長は「データは機械同士が、情報は人が扱うものであり、まったくの別物。FOAで作られるのは、人が使うためのフロー情報であり、素早い判断や行動、仮説の創造や検証に向いている」という。

統計解析やAIともFOAは、両立することでお互いを補完し合う。AIなど機械による高度な解析と未来予測、人間による気付きの両方をうまく組み合わせ、今までにない高度な情報インフラが構築できるとしている。

■導入進むFOA.シスコや富士通なども
FOAは、データに別のデータを重ねて情報に変換するので、データベースの作り直しやデータをそろえてきれいにするデータクレンジングがいらない。スピーディーで局地的にスモールスタートから始められる。小さな変更の積み重ねもでき、長年使い続けられる優しいシステム。国内メーカーを中心に導入が急ピッチで進んでいる。

ある電機メーカーは、現場のRDBの統合化が乱立する中で、データのあるべき姿としてインフラ整備ツールとして活用している。ある自動車部品メーカーはFOAによって、見える化+共有化をベースにしたグローバルの改善支援体制を強化。また某産業機械メーカーは、全体サプライチェーン構築の中の組み立て部門データ集計・現場の管理活動・改善活動のデータ活用に使い、環境装置・設備メーカーは現場のリアルタイムな情報による統括管理支援などに活用している。

またFOAコンセプトに賛同するITベンダー等とFIMコンソーシアムを設立。シスコシステムズや富士通、三菱総研、日立製作所などのベンダーが参加している。