
エレクトロニクス業界の国際標準団体IPCは、2025年6月23日に「グローバル・エレクトロニクス・アソシエーション」に名称を変更した。70年にわたるIPCの歴史を受け継ぎ、「より良いエレクトロニクスで、より良い世界を」を新スローガンに、世界3000社以上の会員企業や数千のパートナー、各国政府と連携し、6兆ドル規模に成長した世界のエレクトロニクス産業を代表し、サプライチェーンの強靭化と国際連携を推進する。
今回の組織変革は、エレクトロニクス産業の本質的な変化を反映したもので、業界の発展によってAIや自動運転、次世代通信など幅広い分野にまたがるようになり、改めて新名称のもと、政府や産業界とのパートナーシップ強化、新規投資の促進、業界全体のイノベーション推進、サプライチェーンの混乱軽減に注力する。
新組織では政策提言の強化、業界洞察の深化、ステークホルダーとのコミュニケーション向上に向けたリソースを拡充。特に日本を重要な市場と位置づけ、これまで取り組んできた半導体や電子部品、オートモーティブ関連の標準化活動を継続し、日本のエレクトロニクス産業の発展に貢献していく。
製品の信頼性と一貫性を確保するために不可欠な業界標準と認証プログラムは、継続して「IPC」ブランドを利用する。
IPCは、1957年にプリント基板の標準化を促進する事業者団体として発足。アップルやボーイング、GE、フォックスコン、3M、デュポン、パナソニック、ソニー、ボッシュ、デンソーといった完成品メーカーから電子材料、半導体、電子部品、プリント基板、電子機器メーカー、装置メーカー、EMSサービス事業者まで、3000社以上のエレクトロニクス業界の全領域の関連企業が参画。アメリカ、日本、ドイツ、中国、インド、韓国など世界10か国に拠点を持ち、電子機器と部品の「組立要件と製造要件の標準化」を目的とする国際標準団体として活動している。

深い相互依存で成り立つエレクトロニクス業界 国をまたぐ連携、協力関係が重要に
また「世界のエレクトロニクス貿易の流れ」に関する調査結果も発表し、現在、世界の商品貿易の20%をエレクトロニクス関連が占め、そのサプライチェーンは自動車産業をも上回るほど国境を越えて複雑に絡み合っており、グローバルな連携が不可欠となっているとした。
2023年の世界のエレクトロニクス貿易総額は4.5兆ドルで、そのうち半導体やコネクターなどの部品だけで2.5兆ドルを占め、スマートフォンなどの完成品を上回った。また、中国、ベトナム、インドなどの主要な輸出国が、同時に電子部品の輸入でも急成長しており、エレクトロニクス産業が国際的に深く相互依存で成り立っていることが明らかになった。
そのため製造拠点を自国に戻す「リショアリング」や、特定国との経済的なつながりを断つ「デカップリング」戦略は実現可能性は難しく、他国との連携なしには成り立たず、『自国で完結する体制』ではなく、『外部環境に強い柔軟な体制(レジリエンス)』こそが、エレクトロニクス時代における競争力の鍵だと結論付けている。