令和の販売員心得 黒川想介 (152)制御営業の戦略も転換必要 情報を「ネタ」として捉える

かつて昭和期には、販売会議や販売員同士で交わす言葉に「良いネタはないか」と言う問いかけがあった。
「ネタ」とは当然、「情報」のことであるが、だからと言って現在のFA販売員がイメージする「情報」とは少し異なる。「トピックス」に近いが、これもFA販売員が会議等で使う「トピックス」とも異なる。
FA販売員が普段に使っている「情報」とは「商談情報」を意味している。「トピックス」とは、一般的には、話題性のある出来事をいうが、FA販売員が使う「トピックス」も「話題性のある大きな商談情報」を指している。
昭和期によく使っていた「ネタ」とは、もちろん商談情報も含まれるが、その前面にあって「いずれは商談につながるだろうと思われる動きや新しい発見」を指すことも多かった。
情報を「ネタ」と言っていた頃は、制御部品や機器がどこに、どんな商品が使われるかがまだよく分からなかったから、商談が矢継ぎ早に出てくるわけではなかった。だから制御商品を発注する資材部門や電気等の技術部門に顔を出すだけではなく、制御商品を搭載する製品を作っているメーカーを訪問すれば、そこの研究開発や設計部門にも顔を出した。製造工場を訪問した時には、製造部門や工場管理部門に顔を出し、何かネタはないかと探りを入れた。そうした活動を通じて新しい商品開発や大幅な設計変更、あるいは新しい生産ラインや既存の生産ラインの増設等の動きを漏れ聞くと、担当部門や担当者あるいは外注先などを紹介してもらえるように行動した。それらのネタを追っていけば、制御商品がどこでどんな役割で使われるかが分かったからである。
FA市場の成長期には、トピックス的なネタもそこそこあったが、FA販売員がつかむネタには、工場内部のどこにどんな役割で使うか、あるいは電気製品の内部のこんな役割で使われそうだと言うネタが多かった。このネタ入手の活動を通して、制御商品が使われている機械や設備の内容、制御商品の役割を知るようになり、それらの用途を横展開して、設計や製造技術に売り込みをかけた。また新規開拓の折にも、この情報は有効な手段になっていたから、新しい用途例の発見は、販売員にとって、いかにも頼もしいネタであった。
販売員にとって売り上げを上げるためには、情報がいかに重要であるかは自明である。現在の販売員にとっての情報は、いわゆるネタではなく「商談テーマ」の情報である。この商談テーマ情報こそが売り上げ獲得に最重要と思っているから、メーカーと営業、販売店営業も商談テーマ情報のエントリーと決着の管理が活動の中心になっている。
確かに商談テーマ活動は重要な営業活動であるが、営業活動はこれしかないと思うくらいの力の入れ方になっている。
この傾向は、商談テーマ活動と言う営業が、売り上げ拡大の戦術と戦法の成熟化を意味する。たとえて言えば、家電製品の成熟過程で競合が激しくなり、家電製品メーカーは次々と新しい機能を追加することが売り上げシェア確保になると言う販売戦略を展開したことに似ている。このようにして世に出た家電製品は、投資回収が次第に困難になり、家電製品メーカーの戦略変更につながっていったのはそれほど昔のことではない。このように同じ傾向を強化しつつ、繰り返すようになったら成熟している証拠である。
平成中期頃から制御営業も、商談テーマのエントリーや決着管理を業界別客や売り上げ重点管理客に焦点を当てるようになった。だが、苦労している割には成長期のような手ごたえは無いようだ。もしこの指摘が当てはまるのなら、制御営業の戦略も変更が必要だ。その一つが「販売員の情報の捉え方」である。情報を商談情報として捉えるのではなく、ネタとして捉えることへの大転換である。営業活動の方針や報告、評価制度を変えなければ、販売員が身に付けた情報のイメージは変わらない。

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