【制御盤DXと設計・製造の未来】EPLAN×三共電機 制御盤メーカーが儲かるための仕組みづくり多角化経営を支える“標準化”とEplan活用


愛知県稲沢市の盤メーカーの三共電機は、経済産業省の「DXセレクション2024」の優良事例表彰を受賞するなど、DXを地で行く先進的な盤メーカーだ。取り組み自体は最先端だが、根底にある考え方は、実に堅実かつシンプル。「ひとつの業界にとらわれず、さまざまな業界から一つでも多くの制御盤関連の受注を獲得して売り上げを増やし、社員の給料を上げる」。このために必要なデジタルと自動化に投資し、一歩ずつ効率化を進めている。
2024年には、制御盤の設計、製造のDXを実現する基盤としてEplanを採用。設計と製造、さらには営業活動にまでフル活用し、多くの案件を獲得し、利益に繋げている。
Eplanの導入効果とその活用について、三共電機の代表取締役の三橋 進 氏、取締役統括部長の三橋 徹 氏、製造部長の村木 涼太 氏、業務部長/設計部 設計課長の小川 恵 氏に話を聞いた。
■専門商社からスタートし、制御盤メーカーへ
― ―御社の事業概要について教えてください
もともとは1986年に父である先代社長が電気制御機器や自動制御機器の商社としてスタートし、次第にお客様から「制御盤も作ってほしい」という要望が増え、それに応える形で制御盤の受託製造を手掛けるようになりました。はじめは外部パートナーにお願いする形でしたが、自社工場を作って内製化し、その後に設計部門を作り、いまに至ります。制御盤の設計・製造をはじめて30年ほどになり、制御盤が事業の中心ではありますが、商社ビジネスは今も継続しています。
■陸・海・空・地 あらゆる環境の制御盤に対応
― ―特にどういった制御盤を手がけているのですか?
主に工作機械業界がメインのお客様で、私が入社した12年前頃は売上高の8割を工作機械向けが占めていました。
しかし2008年のリーマンショックの時、当時私は工作機械メーカーで働いていたのですが、市場が急激に落ち込んで私自身もこの会社もとても大変な思いをしました。その経験から「1つの業界に依存するのは危ない」と感じ、入社後は新たな分野の開拓に積極的に取り組みました。
先代が開拓した大手重電メーカーの巨大なデッキクレーンやトンネルを掘削するシールドマシン向けをはじめ、自動車とその部品製造メーカー向け、船舶向け、航空機向けといった形で、「陸・海・空・地下」とさまざまな環境のお客様の制御盤を製造してきました。さらに、大学など教育・研究機関の特殊な実験装置の制御盤なども手掛け、多角化しています。
おかげでコロナ禍の頃は工作機械向けの仕事は減りましたが、逆に多角化していたことで全体の仕事は増え、残業しなければ対応できないほどに多忙でした。
現在ではこうした様々な業界からの案件が増えたことで、工作機械向けの売上比率は3割程度になり、残りの7割を色々な業界で支える形になり、経営的には大きなリスクヘッジを実現しています。
■多角化ゆえの悩み 標準化とDXを解決の糸口に
― ―でも、業界はバラバラで、装置の大きさも大小さまざま、さらには一品物でハイスペックの教育機関向けまで手がけていると、業界ごとのルールや作法の違いに苦労しそうです
まさにそこが1番の課題でした。
私は「社員の給与を上げたい、年収700万円取れる会社にしたい」という目標を持っていました。そのためには工作機械以外からも案件を取ってこなければいけないと思い、お客様を増やしていきました。これにより会社としては売上増とリスクヘッジを実現できましたが、一方で、現場の作業負荷は大きくなっていました。
業界が違えば使う部品も、図面の書き方も、求められる仕様も違います。例えば設計部門の社員は、多様な案件が増えたことで、図面作成だけでなく、部品リスト作成、発注業務、在庫管理など、「属人的な作業」が膨大に増え、その対応に追われるようになっていたのです。
そうした姿を見て、新規案件を獲得して付加価値の高い仕事をして売上を上げつつ、社員が疲弊しない仕組みを作らなければならないと再認識しました。この多種多様な案件を効率よく回すには、デジタルによる標準化、つまりDXしか道はないと考えたのです。

■DX基盤としてEplanを導入 時間をかけて現場理解を醸成
― ―その基盤として選んだのがEplanだったわけですね
Eplanが電気設計から製造、さらには部品手配に至るまで、必要な情報を一つのデータベースで管理できるツールであることは以前から知っていました。属人化による現場の疲弊を解消しながら、多様化する案件の対応をするためには、情報を一元管理できるEplanのデータベース型プラットフォームが欠かせないピースだと考えていました。
― ―導入はスムーズにいきましたか?
いえ、実は社内への展開はかなり慎重にじっくりと時間をかけて進めました。
長年、別のCADを使っていた設計現場からすれば、「使い慣れたCADを変える」というのは大変なストレスです。トップダウンで「明日からこのCADを使え」と言っても絶対に失敗します。
そこで、設計部門と日ごろからEplanについて話をしたり、展示会に連れて行って「こういう機能があるんだ」と体験してもらったり、私が考えていることと、Eplanの導入メリットを理解し、肌で感じてもらう時間を十分に取りました。彼らへ最初にEplanを紹介してから導入決断までは約4年もの時間をかけました。
その間、私自身もEplanのトレーニングを受けて一通り使えるようになりました。設計者に指示を出すのに、私が中身を理解していないと説得力がないですから。
結果として、現場が「これなら業務が楽になるかも」「やってみたい」というマインドになってから導入に踏み切りました。
いまは、Eplanと従来のCADを併用して、お客様や案件に応じて使い分けています。新規のお客様はEplanで作ることが多くなっています。
■Eplanの導入効果は?現場の本音
― ―小川様は設計業務を担当されていて、実際にEplanを現場で使ってみた感想はいかがですか?
正直なところ、導入初期の「環境構築」は大変でした。従来のCADは線を引いて図面を描く感覚ですが、Eplanは「部品データ」や「ルール」を最初にしっかり定義する必要があり、その違いにはじめは戸惑いました。しかし、一度その仕組みができてしまえば効果はとても大きく、回路図を描けば自動的に部品リストができあがり、盤の3Dレイアウトや配線測長まで繋がります。これまで図面作成後に行っていた集計作業や検図の手間が劇的に減りました。体感としては、整った環境であれば作業工数は3〜4割削減できていると思います。
― ―Eplanユーザーからはミスやズレが減って精神的な辛さが減ったという話はよく聞きます
小川(設計): そこが一番大きいかもしれません。「部品の発注漏れがないか」「接点構成は合っているか」といったチェック作業や、製造部門からの問い合わせ対応は、見えないストレスでした。また、私自身が一介の作業者から、教えたり、チェックしたりする管理職の立場になると、Eplanはデータベースがしっかりしていればミスが構造的に起こり得ないので、検図の負担や手戻りが減る上、できる人とできない人の差が出にくく、作業標準化もしやすいので、精神的には非常に楽になりました。
― ―村木様の製造部門ではEplanの導入効果をどう感じていますか?
確かにEplanで作成された図面は、いままでの図面に比べて情報量が多いです。どの端子にどの線を入れるかまで指定されていますから。でも、製造部門としては、逆にその情報量の多さをありがたく感じています。
以前は図面に情報量が少なく、一言でいえば「曖昧」で、配線ルートや部材選定を製造部門の現場判断に委ねている部分がありました。それは現場の「職人技」とも言えますが、裏を返せば「人によって品質が変わる」「若手が育ちにくい」というリスクでもあります。
Eplan導入後は、図面通りに組めば誰でも均一な品質のものが作れるので、熟練者よりも新しく入った人や慣れていない人などには大いに助かっていると思います。平均年齢31歳という若い現場ですが、迷う時間が減り、設計部門への問い合わせも少なくなり、スムーズに組み立て・配線作業に取り組めるようになっています。
― ―指示通りにやるだけでは、現場で考える力が落ちてしまいませんか?
その懸念は確かにあります。ただ、もともと多種多様な業界から難易度の高い制御盤の仕事を請け負ってきているので、それに毎回対応するだけでも相当鍛えられるという前提があります。その上で、空いた時間で次のステップ、例えばより効率的な組み立て手順を考えたり、多能工化を進めたりと、別のベクトルでスキルを伸ばしていけると考えています。
■ 「3D」が武器になる 顧客へのインパクト
― ―三橋徹様の営業提案や案件を獲得する際にもEplanは役立っているのですか?
営業面での効果も非常に大きく、特に新規のお客様や異業種への提案の際には3Dがお客様を惹きつける大きな武器になります。
例えば、デッキクレーンの制御盤を3Dで見せた時、お客様は「制御盤も3Dでここまでできるのか!」と驚かれました。 メカ設計では3Dが当たり前ですが、電気はまだ2Dが主流です。その中で、干渉チェックまで済ませた3Dモデルを提案段階で提示できるのは、他社との圧倒的な差別化になります。

■データを繋ぎ、より効率化へ 制御盤を儲かる仕事に
― ―今後について、Eplanのさらなる活用、事業展望など教えてください
社内の設計と製造部門にEplanのメリットを浸透させる一方で、機械メーカーなどのお客様にも「Eplanでデータをもらえるとこんなに便利ですよ」「3Dで事前確認できますよ」と提案し、外堀からも埋めていく。こうすることでお客様からも社内からも「Eplanでやりたい、もっと使おう」という声が上がり、もっと広くEplanの設計データが流通することになってプロセス全体が効率的になっていくと考えています。
将来的には、Eplanを起点にすべてのデータを「鎖(チェーン)」のように繋がる世界を実現していきたいと考えています。Eplanの設計データがあれば、部品手配が自動化され、電線加工機が動き、将来的にはロボットによる配線自動化まで実現できるはずです。
人手が減るなかで技術力でそれをカバーし、効率的により多くの案件を手掛けられるようになると、社員の給料をさらに上げていけるようになると考えています。
私たちがやっていくのは、制御盤を儲かる仕事の仕方に変えていくこと。業界全体で時間単価を上げ、付加価値を上げていく。制御盤業界をそういう文化にしていきたいと思っています。



