- コラム・論説
- 2022年4月20日
目は口ほどにものをいう
「目は口ほどにものを言う」言葉で表現するよりも目つきや眼差しで人の感情や本心が伝わるという意味のことわざだが、「あぁー、なるほど。まさにこういうことを言うんだな」と実感することが多い。例えば最近就任した高市早苗総理大臣。いつも目にやる気が漲っていて、微笑みながら丁寧な説明を加えて返していく姿を見ると、本当にこの人は相手を尊重し、日本のために全力を尽くそうとしているのだなという感じを受け、こちらもエネルギーをもらえる。やはり言葉よりも目、さらには体や態度から滲み出るものが重要なのだ。
11月7日にオムロンの2025年度2Q決算発表と一緒に中期経営計画の説明会「中期ロードマップSF 2nd Stage」が行われ、代表取締役CEOの辻永順太氏がその中身を説明した。私は最前列に陣取って話を聞いていたのだが、辻永氏の目はやる気や使命感に溢れていて、そして根底にある「楽しさ」がところどころから染み出してきていて、プレゼンの中身はそこそこに、ついつい引き込まれてしまった。計画の中身は後日まとめるが、制御機器事業はオムロンを支える最も大きな柱であり、そのなかでもデバイス・コンポーネンツ事業は、最も顧客が多く、最も販売代理店に支えられていて、最も安定的に収益を上げられるもので、最も土台として重要な事業であると再定義し、もう一度ここに力を入れていくという内容だった。正直なところ、それは目新しくもなく、当然の話であり、ニュース性の高いトピックスはほとんどなかった。しかし、そこに対してトップである辻永氏が、魂の入っていないようなありきたりの言葉や綺麗に着飾った言葉ではなく、ビシビシと本気度が伝わる形で、かつところどころに泥臭さを感じるような表現を交え、それでいて楽しんでやっている感が感じられたのが、いちばんの収穫でありニュースだった。
船は水に入れれば浮かび、水の流れや風、波の影響で自然と陸を離れていく。見かけ上は動いているが、実際は動いていない。ただ目的もなく漂っているだけだ。船が動くには、方向性を定め、舵をとる船頭が大事。まわりに何もない大海原、流れが早く、ゴツゴツとした岩が露出している河川。いずれにしても船頭がしっかりとしていなければ目的地には辿り着かない。単に海図を見て、指示をするならAIにでもまかせればいい。舳先に立ち、いくべき方向を示し、元気に船員を鼓舞して引っ張っていくことこそが船頭、トップの仕事なのだ。




