油断大敵 現状を見誤るな

「いつまでも あると思うな 親と金」ということわざがある。親は自分より早く亡くなるのだから孝行せよ、お金も使えばなくなるものなのだから倹約に努めよという意味であり、その本質は「常に自分の身の回りには注意して、平和ボケするなよ」という注意、戒めだ。
「油断大敵」「好事魔多し」「勝って兜の緒を締めよ」「猿も木から落ちる」「一寸先は闇」など、ことわざには「油断をするな」とアドバイスするものが多い。成り立ちを考えれば当然だ。ことわざが生まれたのは、その多くが戦いが繰り返され、生きるのも大変な時代。例えば「好事魔多し」は、13〜14世紀頃、中国の元〜明の時代と言われる。「勝って兜の緒を締めよ」は、16世紀頃、日本の戦国時代に北条氏綱が言ったとされる。少しの油断やミスが死に直結する。だからこそ昔から人は油断や慢心を恐れ、警戒してきた。それが戒めとして、現代にも伝え続けられているのだ。人の世は、何が起こるか分からない。「油断をするな」というのは、時代は関係なく、万人に共通すること。今を生きる私たちも心に刻んでおかなければならない。
現代の日本は豊かで平和だ。しかし世界でもトップクラスの豊かさと勢いがあった頃とは違う。今は昔に作った資産で食い繋ぎ、かろうじて維持しているに過ぎない。今の生活が当たり前と思うのは、油断、平和ボケ以外の何物でもない。ある種、どう存続していくかの瀬戸際にあるのだ。人が減り、使えるお金も少なくなるなか、今の生活や社会の水準を維持したければハードワークするしかない。ただし、自分の健康、私生活を守ることも重要だ。ワークライフバランスが取り沙汰されているが、重要なのは「バランス」。忙しい時や頑張る時はワークに振り、そこで得た余裕をライフに充てる。どちらか一方ではなく、可変なのだ。ただ、いま日本の製造業は、厳しい競争のなかにあり、ここが踏ん張りどころ。油断をしない、現状を見誤らないことが重要だ。

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