HMSネットワークスは、産業用ネットワーク市場に関する年次分析レポートを発表し、2024年に設置された産業用ネットワークのノードのうち、産業用Ethernetが76%のシェアを占め、フィールドバスよりも高い成長率で市場を牽引し、シェアも拡大しているとした。規格別では、PROFINETが27%でトップでシェアを伸ばし、EtherNet/IPが23%、EtherCATが17%と続いた。
今後5年間は7.7%の成長率で拡大を予想
産業用ネットワーク市場全体の動向は、2024年は産業用Ethernetは前年比15%の成長を遂げ、5ポイントアップの76%のシェアを獲得。一方でフィールドバスはマイナス17%の衰退傾向となり、シェアは前年の22%から17%に縮小した。
産業用ネットワークは、2023年に急成長を遂げた後、2024年は市場の成長が鈍化し、新規設置されたノード数は前年比で10〜11％減少。特に経済環境が悪化し、生産能力が過剰気味のヨーロッパの低迷が大きく影響した。2023年は部材不足でシリアルベースのフィールドバスの需要が根強かったが、供給が回復した後は、コスト効率が高く、スケーラブルなEthernetベースの産業用Ethernetに関心が戻り、産業用Ethernetのシェア拡大に寄与し、フィールドバスは前年の反動で後退となった。
先の見通しについては、産業用ネットワーク市場は引き続き成長が見込まれ、2025年から2030年の今後5年間は7.7%の年平均成長率で成長すると予想。2025年は成長率は低めだが、2026年以降は回復を見込み、地政学上の問題やサイバーセキュリティ規制など不確実性があるにも関わらず、前向きな見通しを示している。
また、産業用Ethernetの普及で拡大したEthernetインフラは、ギガビット Ethernet、TSN、SPE、OT/IT 融合といった今後のイノベーションへの道も切り開くものとし、さらなる発展を予想している。
規格別では3強体制は変わらず
規格別では、PROFINETとEtherNet/IP、EtherCATの3強体制は継続。PROFINETは23%から27％に増加してトップシェアを強固にした。EtherNet/IPは若干PROFINETに離されたが、依然として成長路線にあり、21%から23％と拡大。EtherCATは1ポイントアップの17%で、いっときの急激な成長からは鈍化したが、堅調な成長を継続している。
その他は、Modbus TCPは 4％で横ばい。POWERLINK、CC-Link IE、その他の Ethernet ネットワークは、わずかな変動はあるものの、安定したシェアを維持している。
フィールドバスは、PROFIBUSが依然として最大のシェアを持つものの、7％から5％へと減少。DeviceNet、CC-Link、Modbus RTU はそれぞれ1ポイントずつ減少し、CAN/CANopen は2％で横ばいとなった。
無線は即時性を必要としない補完的な役割で活用
無線通信技術の動向について、無線は新規ノード設置の7％を占め、安定した水準を維持している。無線技術は、主にモビリティ、柔軟なネットワーキング、 AGV/AMR、移動式産業機器、既存システムの後付けなど、アクセスが困難な場所における用途で、リアルタイム性を必要としない通信の重要な補完手段として引き続き活用が進んでいる。
一方で、現在はモバイル通信分野で導入が進んでいる5G無線技術については、産業オートメーション分野での普及は依然として緩やか。インフラ管理の複雑さ、導入コストの高さ、セルラー通信チップにおけるリアルタイム性能を安価に実現する難しさなどハードルとなっているとしているが、特にアジアでは産業用途での初期導入がすでに進行し、将来的な産業通信の進化では大きな可能性を秘めているとした。
地域別ではAPLやSPEなど新技術の導入も進む
地域別の動向は、ヨーロッパはPROFINETとEtherCATの導入が強く、新たなインフラ技術への関心も向上。特にプロセスオートメーション用途での Ethernet 通信を可能にする APLや、センサーまでEthernet 通信を拡張するSPEに注目が集まっている。北米は依然としてEtherNet/IPが主要なプロトコルとなっているが、IO-Link、APL、SPE といったスマートデバイスに対応した技術の導入が明らかに進んでおり、今後数年間での市場拡大が期待されている。
アジアは、中国市場では PROFINETとEtherCAT がともに成長を続け、TSN機構を初めて取り入れた産業用プロトコルであるCC-Link IE が地域内で強い基盤を維持している。
調査は、産業用通信・ネットワーク向け半導体チップや機器などを展開するHMSインダストリアルネットワークスが毎年調査・分析し、FA分野で新規設置されたノードが、どの産業用ネットワークでつながれているかをまとめたものとなっている。
https://www.hms-networks.com/news/news-details/27-05-2025-hms-networks-report-industrial-trends-2025
