【制御盤の未来と制御盤DX】進化を続ける制御盤メーカー 東洋電制製作所(富山県)設計データ連携と自動化を積極活用 顧客との共創によるプロセス改革にも着手

富山県新川郡上市町にある東洋電制製作所は、筐体の板金加工から制御盤の組み立てまで一貫した生産体制によって月産1200面もの制御盤の生産能力を持つ制御盤メーカー。量産品とカスタムの両方に対応するため、自動化やデジタルの技術を使って自社内の制御盤の設計・製造の効率化を進める一方、最近はエンドユーザー、機械メーカーといった発注者側が進めるDX、設計・製造工程の変革にも共創パートナーとして参画するなど活躍の場を広げています。単に下請け的に制御盤の製造を請け負うだけでなく、顧客と一緒になって最適な制御盤づくりができる、新たな形の制御盤メーカーへと進化しています。

月産1200面の生産能力を持つ大手制御盤メーカー

東洋電制製作所は1967年の創業で、国内に5カ所(本社工場、製缶塗装工場、稗田工場、糸魚川工場、大阪工場)と海外のベトナム工場の6カ所に工場を展開しています。制御盤の電気設計から組み立て、配線、検査、現地立ち上げはもちろん、筐体の構造設計から製缶、塗装工程も社内に持ち、社内一貫体制で制御盤の製造を行っています。

量産品で月産1100面、一品もので月100面の生産に対応でき、工作機械をはじめ産業機械、プラント機械、搬送装置、半導体製造装置など多種多様な制御盤や操作盤、中継箱等の製作を請け負っています。案件の中身は、「量産」と、カスタムの「一品一様」があり、そのカスタム品の中に、基本は同じでも毎回の注文ごとに少しずつ仕様が異なる「準リピート」のパターンもあり、カスタム品の全注文の6割を占める「準リピート」に対し、同社はデジタルと自動化の技術を積極的に採用し、より正確で効率的な製造に向けて生産性向上を進めています。

設計データの製造工程での利活用を推進 自社システムも開発

特に力を入れて取り組んでいるのが、設計データの連携と自動化。2017年に社内に生産技術部門を立ち上げ、それまで熟練者に依存していた制御盤の製造工程を、誰でも同じようにできるよう取り組みを開始しました。データ連携を進める上でプラットフォームとして採用したのが電気設計CADのEPLAN。レイアウト設計や配線ルート設計、各種帳票や指示書等の自動出力といった各種機能を使ってデータ活用を進めています。

例えば「設計データの製造工程での有効活用」。部品表や作業手順書など各種帳票を自動作成できるEPLANの機能をベースに、各作業の指示書と実績の入力、作業履歴と製造や検査実績の管理がタブレット上で行うことができる「TEC配線支援システム」を自社開発し、図面データから各種指示書や帳票を簡単に作成し、それを作業者がタブレットで見ながら各種作業ができる環境を整備しています。これにより熟練者のようなスキルや経験がなくても誰でも作業ができるようになり、作業スピードのアップやミス低減につながっています。作業実績も入力でき、リソースや工数の管理や品質管理にも有効活用しています。

電線加工を配線工程から分離 事前準備化で作業効率アップ

また「電線の事前準備の分業化と電線加工の自動化」についても、電気設計の3D図面データと、制御盤の外殻となる筐体の構造設計の3D図面データをEPLANでかけあわせ、必要な電線の種類と長さ、本数を正確に算出できるようにし、時間と手間のかかる電線加工を配線作業から切り離して分業化しています。電線加工を配線作業時のその場合わせで実行するのではなく、電線加工を専門に行う別部署で事前に準備し、配線作業に必要な電線をすべて用意して配線するだけの状態にしておくことで組み立て・配線作業の効率化を実現しています。

電線自動加工機、板金加工機の活用で自動化を促進

電線カッターや自動圧着機など、これまでも電線加工工程には自動機を積極的に導入してきましたが、2022年には電線のカットから圧着端子の取り付け、電線の仕分けまで、電線加工の全工程を1台で全自動で行えるライオンパワー製の全自動電線加工機を現場に導入。加工機にデータを投入するだけで圧着端子の装着など加工された電線が必要本数できあがり、電線加工工程を大幅に効率化でき、現在、本格稼働に向けた調整を進めています。

ほかにも、筐体の3D図面データは板金加工にも活用し、データを板金加工機へ投入することで効率的に板金加工ができるようになるなど自動化にも取り組んでいます。

社内の制御盤DXの成功パターンを顧客に展開 新たなビジネスへ

こうしたデジタルや自動化の取り組みによって自社内での制御盤の設計製造効率を高め、短納期化や装置立上げ期間の短縮で実績を増やす一方で、さらなる受注獲得のために展示会やオンラインイベント等にも参加し、これらの取り組みを切り口とした営業活動を展開。通常の制御盤の製造以外に、これまでとは異なる仕事が生まれてきています。

機械と一緒に進化する制御盤 メーカーと二人三脚で取り組む

工場のエンドユーザーや機械メーカーがDXに取り組むにあたり、制御盤は機械の頭脳・心臓部として機械の性能向上や機能強化、設計・製造プロセスの変革に密接に関係します。しかしながら発注者のなかで制御盤を自社製造している企業は少なく、制御盤メーカーにまかせているケースがほとんど。発注者側だけでは制御盤に関する知見や技術が不足していることから、そこに手をつけたいけど付けられないというケースが出てきています。

それに対し同社は、制御盤の専門家としてエンドユーザーや機械メーカーが取り組む制御盤まわりの困りごとや課題解決をサポートする受け皿となり、制御盤の設計・製造受託で得た知見・技術を活かした新たな事業をスタートしています。

産業機械メーカーとの設計データ利活用の共創事例

ある産業機械メーカーとのケースでは、電気設計の図面データの活用についてのプロジェクトに参画し、制御盤の設計・製造プロセスのDXを共同で推進しています。

その産業機械メーカーでは、設計部門が電気回路図面を作成していますが、設計部門では製造部門でどんなデータが必要かを知らず、設計のための設計図面になっていて、製造をはじめ他工程での活用はなされていませんでした。それに対し同社が製造工程で必要なデータやあると便利な情報、さらにはその活用法についてアドバイスをし、既存の情報に肉付けをして活用しやすいデータづくりをサポートしています。

例えば「配線作業における配線ルートの標準化」について、リピートの多い製品なのに毎回、製造部門が現場で配線の引き回しルートを決めていて作業効率が悪いという課題に対し、設計部門がEPLANの機能を使って基本となる配線ルートを作り、さらに配線のFrom To情報も作って設計図面データに入れ込むことを提案。配線ルートが標準化されたことと、From Toの情報でどこをつなげば良いのかが分かりやすくなり、さらに電線加工の下準備も事前に行う形にして作業効率の改善につながっています。さらに今は電線自動加工機にこれらのデータを送り、電線加工を自動化するところを目指しています。

また「筐体の板金データの活用」についても、これまでは内部の機器の干渉チェックは2次元の配置図で行い、筐体を作る際には配置図とは別に板金加工専用の製缶図面を作っていたのに対し、電気CADと機械CADを3Dデータで統一することで板金用の展開CADにも簡単に応用できるようになり、シームレスなデータ活用環境の構築に役立っています。

制御盤プロセスの見直しでコストダウンや脱炭素への効果も

これらはもともと自社で取り組んで実績が出ている取り組みであり、同社では実際のシステム構築や運用方法の策定にも携わる形で取り組んでいて顧客からの反応は上々。

「これまで配線作業は、現地の作業員がその場で配線ルートを決めて電線を加工していましたが、今回の取り組みによって事前に準備して必要本数を揃える形にしたことで、ムダな電線を減らし、工数も削減できてコストダウンにつながったと喜ばれています。また脱炭素や環境負荷低減への対応が必要となるなかで、電線を適切な量だけ使うようになってムダにすることもなくなり、その点でも高評価をいただいています」(常務取締役 新田武史氏)

データ連携の推進が制御盤業界を大きく変える

2017年から本格的に制御盤の設計・製造の変革、いわゆる制御盤DXの取り組みを開始し、そこからの5年間で環境を整えて社内で実績を積み上げてきました。さらには、自社の取り組みを顧客に提案・展開し、単に注文通りの制御盤を作るだけの存在ではなく、制御盤の専門家として最適なシステム提案や共創が行えるところまで成長し、新たな展開も見えてきました

今後に向けて新田氏は「これまでの取り組みのなかで、ものづくりのノウハウを駆使し、データ連携を行なっていけば生産性が上がり、収益率が上がるのは証明されています。そのためにも紙の図面を残すのではなく、データとして作って蓄積し、資産として活用していくことが重要です。それは自社だけではできることではなく、発注元のお客様や同業の制御盤メーカーも巻き込んで、データ連携を普及していきたいと思っています」と話しています。

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