【FA時評⑨】海外メーカー日本市場開拓の肝

40数年前、米国の大手制御機器メーカーが日本法人を設立したので取材に行ったことがある。当時、世界の自動制御機器市場規模の比率は、北米が2で、欧州と日本・アジアが1と言われており、日本の2倍の市場規模がある北米からの日本進出は『ついに黒船が来航した』と感じるような雰囲気であった。

 第2次世界大戦が終了した1945年当時の自動制御機器製品は欧米メーカーが先行しており、海外製品の輸入商社が国内のユーザーや国内商社、日本メーカーなどに供給する形が多く、海外メーカーと提携して製品を生産・販売する日本メーカーも目立った。その後、徐々に独自に製品開発する日本メーカーも出始め、「自動制御機器市場」が急速に形成されてきた。

 現在の自動制御機器の市場規模比率は当時からは多少変動しているものの、日本、及びアジアの占める位置は大きく変っておらず、依然世界的に重要な地域として見られている。

 インターネットなどの普及で情報化社会はますます進展し、国内外の情報も容易に収集できる時代であるが、世界に目を向けるとまだまだ知られていない企業や製品が数多く存在する。海外の展示会に行くと、『こんなメーカーがあるのか』とか、『この製品はまだ日本に輸入されていない』といった新たな発見に出会う。逆の立場で考えると、こうしたわれわれが知らない海外企業や製品にとって、日本やアジアは未開の市場であるとも言える。とくに日本は欧米に並ぶ市場規模を有する地域だけに非情に魅力を感じるのは当然かもしれない。そして未開の市場があるからそれの開拓に行くのも自然な行動であろう。その結果、海外メーカーの中には今まで日本の代理店経由での販売から、日本に子会社や支店を開設して直接日本市場の開拓に取り組むところが急速に増えてきた。こうした企業の中には、グローバルに広がる市場案件の情報収集とサポートのために拠点を開設するところもあったが、大半は日本市場でのさらなる売り上げ拡大を目指す取り組みと位置付け、販売代理店の開設やユーザーへ営業活動を開始している。まだ日本メーカーの品揃えが足りないこともあって、日本にない仕様の製品を納期がかかり価格が多少高くてもユーザーは求めていたのだ。

 現在も日本の「自動制御機器市場」の規模は世界トップクラスの地位にあるが、海外メーカーの影響力はさほど大きいとは言えない。世界でのトップクラスのシェアを有する制御機器メーカーでも、日本市場では営業力を発揮できず、国内メーカーに後れをとっている会社が多い。大きな市場が日本にあるから開拓しようと拠点を構えたものの、計画通りに行かず、低迷している会社も目立つ。

 ではその要因はどこのあるのだろうか。よく聞かれるのは『日本独自の商習慣の壁が厚い』という言葉だ。このことをまったく否定はしないが、これはどこの国でも起こりうることで、現地市場のニーズに合わせてとるべき戦略の範囲だ。現に、日本メーカーと同等か、それを上回る売り上げ実績を残している海外企業が増えている。こうした日本で実績を伸ばしているメーカーをよく見ると「商習慣」の壁を超えた戦略が見えてくる。それは日本市場をよく分析していることだ。海外で実績がある製品・ソリューションだから、日本でも必ず売れるはずだという安易な上から目線の戦略ではなく、日本のユーザーがどこに重点を置いて購買しているのかをきめ細かく頭に入れ、品質管理、納期、アフターフォローなどの体制を整備していることだ。製品の国際標準規格化の流れの中にあっても、日本独自に求められる仕様との整合化を図りながら販売努力をしている会社も目立つ。ネックになりがちな納期対応も、サプライチェーンを構築しながら最適地からの供給と、製品によっては国内での組み立て加工などで顧客満足度を高めている。

 自動制御機器は、徐々にハードウェアの比率が下がり、ソフトウェアやエンジニアリングの割合が高まりつつあることで、海外メーカーの日本市場進出が容易になってきているように感じる。保有する技術や製品の有効活用に向けて、海外メーカーと日本メーカーの協業する動きも目立ってきた。まだ日本市場に参入していない海外メーカーにとってはチャンスの時期が来ている。しっかりとした長期的な開拓プランを立ててのチャレンジに期待したい。

(ものづくり・Jp株式会社 オートメーション新聞 会長 藤井裕雄)

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