【産業用ロボットを巡る 光と影(46)】ロボットの導入に成功した企業 新光ステンレス研磨 無限に広がる金属アート研磨を日本から世界に発信

今回は、実際にロボットの導入に成功した会社として新光ステンレス研磨にインタビューした。

-新光ステンレス研磨の優れている点は?

 創業約60年のステンレス・アルミなどの意匠研磨等を主にした金属研磨加工専門業者であり、長年の研磨技術の蓄積によって確立された金属意匠パネル製品を製作している。近年は、より高付加価値製品を製作するため、塗装・印刷設備の導入や協力企業と共同技術開発により手垢防止コーティング「ピュアフェルテ」を開発している。それらの技術を複合的に組み合わせた独自の金属意匠パネルが多数あり、そのデザイン種類、ノウハウ、施工事例の豊富さから国内外のブランドメーカー店舗や高層ビル、駅等の公共施設の内外装に採用されている。町工場ではあるが、研究開発に強みを持っている。

-産業用ロボット導入の契機は?

職人が施している意匠をロボットに行わせたら、職人には出来ない今までにない面白い意匠ができ、新たな市場を開拓できるのではと常々考えていた。また、現行のラインナップの意匠の中でもロボットでも対応できそうなものもあり、生産性や品質の向上が見込めたため、ロボットシステムを導入した。 

-産業用ロボットを導入して良かった点は?

ロボットによる正確で規則的な動きから産まれる工業的意匠を同一品質で大量生産出来るようになった。その結果、研磨独特の光の反射を利用した木目調の金属パネル「メタルウッド」の製品化や協力会社数社と「空(そら)のカケラ」という時計ブランドを立ち上げる事が出来た(図)。現在このロボットシステムは特許申請中である。

図 時計ブランド「空(そら)のカケラ」で販売中のステンレス時計(画像はほんの一部)

-産業用ロボットで苦労したことは?

ハード面では金属パネルに意匠を施す上で、研磨痕の幅が均等になる事が重要である(ランダム性が必要なものは除く)。それを実現させる為、研磨ツールが金属パネルに均一接地するようにロボットと金属パネルを置く台座の平行を取る必要があるのだが、台座自体4m近くもあり、また台座自体高さを精密に微調整できる仕様ではなかった為、非常に苦戦した。

ソフト面では富士ロボットのティーチングソフトRobotWorksに出会う前はロボットのプログラムを全てティーチングペンダントで行っていた。金属パネルが長方形や正方形の場合、繰り返し構文などを使用して比較的簡単にプログラムを作成していたが、例えばパネルの中の一部分に意匠を施すケースで、その一部分の形が複雑な場合、一つ一つポイントを手作業でとっていく必要があったり、ポイント座標値を計算したりと時間も根気も必要となり苦労していた。上記2点は後述するが、RobotWorksで簡単に解決できた。

-富士ロボットの「RobotWorks」は具体的に何が良いか?

 オフラインティーチングソフトは、数社検討していた。実際にそれらの研修会に参加してソフトを触ってみたり、プレゼンテーションを受けてみたが、操作が難しかったり、非常に高額であったりといまいちピンとくるものがなかった。しかし、富士ロボットのRobotWorksは全く違うものであった。他社で見られなかった点や特に感銘を受けた点を記したい。

(1)他社ソフトと比べ操作が非常に簡単である。2日ほどの研修を受けただけで、簡単にロボットのプログラムを遊び感覚(RobotWorksのコマンドはアイコン化されており、目で見て何となくゲームのようにできてしまう)で作成する事が出来た。

また当社のノウハウになるので詳しくは言えないが、「徐々に位置と姿勢を変化させる機能」のおかげで、意匠のバリエーションが増えた事が大いなる収穫である。

(2)上述したとおり、ハード面でロボットと台座の平行を取るのが非常に困難であり、現状も完璧に合わせられている状態ではない。しかしながらRobotWorksのキャリブレーション機能を使うと簡単にポイントを台座の面に合わせて自動調整してくれるため、平行は特に気にする必要がなくなった。今後さらにロボットシステムを増やそうを考えているが、もし台座を精密に調整できるものにすると、ロボットシステムだけで非常に高額になってしまうが、そこを省くことできる(ロボットシステムの仕様をRobotWorks基準で考えることで、「重要な点」と「そこまで重要ではない点」が明確になったことも大きい)。

(3)以下RobotWorksの性能というより富士ロボットの話になるが、RobotWorksで日々プログラムを作成していると、「もっと効率化したい」「こんな風にできないか」と思うことが出てくる。そういう時にメールや電話で富士ロボットに相談すると即座に対応してもらえるだけでなく、当社でも理解しやすいように操作方法を動画にして送ってもらえる。中にはRobotWorksの質問というより、CADの質問になることも多々あるのだが、そういった質問にもしっかりと対応してもらえる。

(4)今までアナログ作業だけだったものが、技術ノウハウの含めデジタル化をすることができた。また、RobotWorksでしか出来なかった意匠も多数できただけでなく、時間もコストも大幅に削減する事になったので、富士ロボットには大変感謝している。 

◆山下夏樹(やましたなつき)

富士ロボット株式会社(http://www.fuji-robot.com/)代表取締役。

福井県のロボット導入促進や生産効率化を図る「ふくいロボットテクニカルセンター」顧問。1973年生まれ。サーボモータ6つを使って1からロボットを作成した経歴を持つ。多くの企業にて、自社のソフトで産業用ロボットのティーチング工数を1/10にするなどの生産効率UPや、コンサルタントでも現場の問題を解決してきた実績を持つ、産業用ロボットの導入のプロ。コンサルタントは「無償相談から」の窓口を設けている。

 

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